アカリンダニ治療薬と予防法対策時期

アカリンダニによるミツバチの被害が深刻化しています。治療薬の選択や予防方法、適切な対策時期について知らないと群れ全滅のリスクが高まります。あなたの養蜂を守るための最新情報をご存知ですか?

アカリンダニ治療薬と予防の基本

メントール使用すると薬機法違反になります。


この記事の3つのポイント
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アカリンダニの正体と被害

ミツバチの気管に寄生する体長0.1~0.2mmの外来ダニで、群れ全滅の原因となる深刻な脅威です

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治療薬の選択と法律問題

チモバールが唯一の承認薬ですが、広く使われるメントールは未承認で法的リスクがあります

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効果的な予防時期と方法

7月中旬~9月中旬以外はダニが増殖しやすく、越冬前後の対策が群れの生存を左右します


アカリンダニの特徴と寄生メカニズム



アカリンダニは、ミツバチの気管に寄生する極めて小さなダニです。体長はわずか0.1~0.2mm程度で、肉眼では確認できません。


このダニは2010年に日本で初めて確認されました。欧米に分布していたことから外来種と考えられており、輸入された西洋ミツバチに付着して日本に侵入したという説が有力です。


ミツバチは体の側面にある「気門」から空気を取り込み、気管を通じて全身に酸素を届けています。アカリンダニはこの気管の中に入り込み、口吻を気管壁に刺して体液を吸います。気管内で卵を産みつけて繁殖するため、寄生が進むと気管が詰まってしまいます。


つまり呼吸困難ですね。


十数匹程度の寄生であればミツバチへの影響は軽微ですが、寄生率が高くなると深刻な症状が現れます。寄生されたミツバチは飛行能力が低下し、巣箱の周囲を徘徊するようになります。後翅が閉じずに横へ飛び出す「Kウイング」と呼ばれる症状も特徴的です。


興味深いのは、ニホンミツバチと西洋ミツバチでダニへの抵抗力に差があることです。国立環境研究所の研究によれば、ニホンミツバチは西洋ミツバチよりもアカリンダニを払い落とす能力が低いことが明らかになっています。このため、ニホンミツバチでは感染が深刻化しやすく、全国で被害が広がっています。


アカリンダニ治療薬の種類と効果

アカリンダニ対策として利用される物質には、いくつかの選択肢があります。


それぞれに特徴と制約があります。


チモバールは、チモールを主成分とするミツバチヘギイタダニ駆除剤です。2019年に承認され、2020年に「チモバール®」という商品名で発売されたオーガニック系の新薬です。これが日本で唯一、ダニ駆除薬として正式に承認されています。


本来はミツバチヘギイタダニという別の種類のダニを対象に開発されたものです。ただし海外ではアカリンダニ駆除にも効果があるといわれ使用されています。使い方は比較的簡単で、ウエハース状の小板を巣箱内に3~4週間設置し、これを2回繰り返します。外気温が15~30℃となる晩夏~秋口の使用が推奨されています。


メントールは、多くの養蜂家が実際に使用している物質です。ハッカなどの食品や食品添加物として利用されているため、危険性は低いと考えられています。巣箱内に結晶状のメントールを入れることで、揮発したガスがダニの嗅覚を乱し、寄生を抑制すると考えられています。


揮発温度は約16℃以上が必要です。7月中旬~9月中旬以外はダニが増殖しやすいので、この時期を除いて使用するのが基本です。ただし夏場は巣内温度が43℃以上になると瞬間的に気化し、蜂が死ぬリスクがあります。


しかし重大な問題があります。日本の法律では、メントールをアカリンダニ対策として用いることは厳密には違法です。問題になるのは「薬機法」で、畜産動物に対する薬剤の使用は原則として国から承認されたものに限られています。メントールは動物用医薬品として認可されておらず、登録薬剤でもありません。


食品添加物として認可されているメントールでも、「着香の目的以外に使用してはならない」という規定があります。アカリンダニ対策は着香目的ではないため、この規定に抵触します。獣医師の処方なしに使用すれば違法行為となる可能性があります。


ギ酸シュウ酸も、西洋ミツバチのミツバチヘギイタダニ駆除に使用されている物質です。事実、これらがダニに有効であることは確認されています。しかし本来は大型寄生ダニのミツバチヘギイタダニの駆除目的で使用している薬剤です。濃度65%の蟻酸を巣板1枚当たり約2ml、キッチンペーパーに染み込ませて4~7日間隔で5~6回処方する方法が海外で報告されています。


高濃度の酸を扱うため、作業する人への危険性があります。また重箱式や丸胴式の巣箱では投与が難しく、巣枠式の西洋ミツバチ飼育に適した方法といえます。


アリスタ ライフサイエンス株式会社のチモバール製品情報ページでは、使用方法や注意事項の詳細が確認できます。


アカリンダニ症状の見分け方と検査方法

アカリンダニ寄生を早期に発見することが、群れを守るためには重要です。


いくつかの症状と検査方法があります。


最も特徴的な症状は「徘徊」と「Kウイング」です。徘徊は、飛べなくなったミツバチが巣箱周辺を歩き回る現象です。アカリンダニ寄生率が高くなり重症化すると、巣箱の周囲半径数メートルを飛翔できずに徘徊する働き蜂が増加します。


Kウイングは、後翅が閉じずに横へ飛び出す異常です。通常ミツバチの羽は体に沿って閉じていますが、アカリンダニに寄生されると後翅が開いたままになり、アルファベットのKのように見えます。


唯一、寄生率が低い時にあらわれる症状です。


アカリンダニの寄生率とKウイングの出現率は相関します。Kウイング個体が増えたらアカリンダニ寄生が疑われます。ただしKウイング=アカリンダニではなく、他の原因でも同様の症状が出ることがあります。


寄生率が高くなると、多くの貯蜜を残したままコロニーが全滅する「越冬失敗」が起こります。ハチミツを大量に残したまま群れが全滅するのは、アカリンダニ症の典型的な特徴です。特に冬季に群れが消滅した場合は、アカリンダニ寄生を疑う必要があります。


確実に寄生を確認するには、顕微鏡検査が必要です。一定数の働き蜂を解剖し、気管の中のアカリンダニの卵や成虫の有無を確認します。OIE(国際獣疫事務局)のアカリンダニ症診断マニュアルに準じて、蜂の頭部および前脚を外し、胸部臓器を取り出します。


臓器をスライドガラスに乗せ、顕微鏡下で観察して気管へのアカリンダニ寄生の有無を確認します。栃木県の家畜保健衛生所では、光学顕微鏡経験がない場合でも気管摘出と確認ができる簡易法マニュアルを作成しています。


より高度な方法としてPCR検査があります。気管を含むミツバチの体ごとDNAを抽出し、アカリンダニ特異的なプライマーを用いてDNA断片を増幅します。増幅したDNA断片を電気泳動して、アカリンダニのDNAを確認する方法です。


検査は家畜保健衛生所に依頼できます。養蜂の届出をした家畜保健衛生所に相談すれば、検査方法について指導を受けられます。早期発見が群れの生存率を大きく左右するため、定期的な観察と検査が重要です。


アカリンダニ予防の適切な時期と年間対策

アカリンダニ対策は、時期によって方法を変える必要があります。


年間を通じた計画的な対策が効果的です。


ダニの増殖は温度に大きく影響されます。メントールは7月中旬~9月中旬以外はダニが増殖しやすいので必ず入れる、というのが基本方針です。この夏季期間は高温のため、メントールが急激に気化して蜂にダメージを与えるリスクがあります。


春季(3月~6月)は、越冬を終えた群れの回復期です。この時期はメントールを継続的に入れておきます。新分蜂群は少しずつメントールに慣らす必要があります。揮発しやすい時期は多く入れると子捨てが起こるため、量の調整が重要です。


雨入り直前までにダニの予防をしっかり行います。梅雨が明ける前にメントールの残量を確認し、少ない群れには追加します。絶対に巣箱内の温度が40度を超えぬ対策を行います。具体的には巣門を開放し、風通しを良くすることが必要です。


夏季(7月中旬~9月中旬)は、メントールを一時的に取り除くか、量を大幅に減らす期間です。最高気温が30度を下回るようになったら、再びメントール投与を開始します。9月に入ったらメントールの量を徐々に増やしていきます。


秋季(9月中旬~11月)は、越冬前の重要な対策期間です。この時期にダニ寄生率を下げておくことが、越冬成功の鍵となります。チモバールを使用する場合は、外気温が15~30℃となる晩夏~秋口が最適です。


冬季(12月~2月)は、特に注意が必要な時期です。


必ず巣門を狭く、重箱段数を減らします。


2月は送風器を使用するのがダニ感染を防ぐポイントです。メントールの揮発温度は約16℃以上が必要なため、冬から春先にかけての平均気温が低い時期は効果が限定的になります。


このため冬季には別の対策も併用します。巣箱の保温を適度に行いつつ、換気も確保するバランスが重要です。送風器による空気の循環は、ダニの移動を妨げる効果があります。


年間を通じた対策として、巣箱の構造も重要です。底板の隙間がミツバチによってふさがれると効果が得られません。定期的な清掃と、適切な換気構造の維持が必要です。


中部日本みつばちの会が公開している「最新アカリンダニ年間対応」PDFには、月別の詳細な対応方法が記載されています。


養蜂家が知っておくべきアカリンダニ対策の法的リスクと実践的選択

アカリンダニ対策には、法律と現実のミスマッチという難しい問題があります。


養蜂家は自己責任で判断する必要があります。


日本の養蜂業は、飼育方法や病害虫対策など、西洋ミツバチの飼育に基づいた法整備で行われています。しかしニホンミツバチは古来から生活していますが、趣味的な養蜂でしか長期的に生業として規格化、安定化した飼養ができていません。


現在の法律は、形状や容積が固定している巣枠式を前提としています。しかし丸胴式や重箱式がほとんどのニホンミツバチ飼育では、承認薬剤の投与方法が適用できない場合があります。自然群由来で逃去を簡単にするニホンミツバチに、西洋ミツバチと同じ処置方法や効果が期待できるのか、疑問が残ります。


蜂蜜を販売する場合は、特に注意が必要です。何らかの薬剤が処方された巣箱の蜂蜜は、食用にできないという保健所の見解があります。メントールの香りがする蜂蜜は「異臭がする」と解釈される可能性があります。


一方、自家消費する範囲においては、状況が異なります。自らの責任においてニホンミツバチを飼育すれば良い、という考え方もあります。野生動物に近いニホンミツバチに対し、畜産動物の法規制をそのまま適用することの妥当性については、議論があります。


販売目的の養蜂家は、HACCPやポジティブリストに基づいた管理が必要です。承認された薬剤のみを使用し、記録を残すことが求められます。無登録の物質を使用すれば、法的リスクを負うことになります。


しかし趣味的養蜂、自給自足、自己責任が基本のニホンミツバチ飼育では、状況が異なります。アカリンダニで群れが全滅するリスクと、未承認物質を使用する法的リスクを、各自が比較検討する必要があります。


獣医師が裁量で海外の医薬品を個人輸入し、診療現場で使用することは可能です。セイヨウミツバチでは、この制度によりギ酸やシュウ酸、ある種のチモール製剤の処方を受けることも可能です。ニホンミツバチに対しても診療結果次第で、チモール製剤が処方されることもあります。


ただしミツバチを扱う獣医師は大変希少で、現状では俵養蜂場などごく限られた選択肢しかありません。地方では獣医師の処方を受けることが現実的でない場合も多くあります。


法整備の遅れとアカリンダニ被害の深刻さとの板挟みという状況です。養蜂家は、ミツバチの健康を守るために何をすべきか、自分で判断せざるを得ません。正論だけを根拠にすると極論になり、現実的な対応ができなくなります。


重要なのは、リスクを理解した上で行動することです。販売する蜂蜜には未承認物質を使わない、使用記録を残す、可能な限り承認薬剤を選択する、などの配慮が必要です。同時に、法整備の改善を働きかけることも重要です。


ニホンミツバチに対するアカリンダニ対策の法整備は、ほとんど手を付けられていません。このままではニホンミツバチが絶滅するリスクもあります。養蜂家、研究者、行政が協力して、実情に合った法整備を進める必要があります。




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