飼料の「タンパク質」は20種類以上のアミノ酸からできていますが、家畜が体内で合成できない必須アミノ酸は飼料から供給する必要があります。
トレオニン(L-トレオニン)は、その必須アミノ酸の一つで、単体で添加することで飼料中のアミノ酸バランスを整える用途が一般的です。
ここで重要なのは「アミノ酸は総量よりバランス」という視点で、どれか1つでも不足すると、他のアミノ酸を多く入れても体タンパク合成に使われにくくなり、結果として飼料効率の伸びが止まります。
現場で起きがちな誤解は「大豆粕を増やせば全部解決」という発想です。
参考)L-トレオニン|飼料|製品・サービス|AHS 味の素ヘルシー…
しかし、原料ごとにアミノ酸の“利用されやすさ(消化率)”が違い、特にトレオニンは原料によって回腸末端での消化率が低めになりやすいデータが示されています。
つまり、配合表の含量だけ見て「足りているはず」と判断すると、実際には不足し、増体・肉質・飼料要求率のどれかでロスが出ることがあります。
・押さえたいキーワード
🧬 必須アミノ酸/⚖️ アミノ酸バランス/📉 不足(第一制限)
トレオニンを語るとき、リジンやメチオニン(+シスチン)など他の必須アミノ酸との関係を外すと設計を誤ります。
たとえば豚向けの説明資料では、最高の肉質を狙う場合に必要なリジン・トレオニン量が、最大増体や最小飼料要求率を狙う場合より高くなる、という示唆が示されています。
「増体だけ良いが枝肉が伸びない」「飼料要求率は良いが肉質の狙いに届かない」など、指標によって最適点がズレる点は、現場で見落とされやすいポイントです。
また、低タンパク設計では、単体アミノ酸(例:リジン塩酸塩、トリプトファン、トレオニン)を活用することで、飼料中のタンパク質レベルを下げられる可能性が示されています。
この考え方は「粗タンパクを上げて安全マージンを取る」方式とは逆で、必要な必須アミノ酸をピンポイントで満たして、余剰を減らす設計です。
結果として、飼料利用性の改善だけでなく、排泄側の負担(窒素ロス)を抑えやすい方向に働く、という文脈で語られることも増えています。
参考)畜産物生産を支えるアミノ酸|アミノ酸とサステナビリティ|アミ…
・現場チェックのコツ(簡易)
⚖️ 配合表の「含量」だけでなく、消化率を踏まえた設計を意識する。
🧪 「リジンだけ上げた」「メチオニンだけ上げた」後に成績が止まるなら、次はトレオニン不足を疑う。
暑熱期は、豚の飼料摂取量が落ち、発育が顕著に低下しやすいことが課題として整理されています。
この状況に対し、トウモロコシ・大豆粕主体の肥育後期豚用飼料で欠乏しやすい必須アミノ酸(リジン、トレオニン、メチオニン、トリプトファン)を添加し、要求量の150%とすることで飼養成績が改善する、という成果情報が示されています。
さらに、必須アミノ酸強化に加えて油脂を足し、飼料のエネルギー含量も高めると、日増体量のさらなる改善が期待できる、と整理されています。
ここが「意外な落とし穴」になりやすいのは、暑熱対策を“換気・ミスト・冷却”だけで完結させ、飼料設計側の補正を入れないケースです。
参考)4種の必須アミノ酸を強化した飼料による暑熱環境下の肥育後期豚…
暑熱の本質は「食い込みが落ち、必要量を食べられない」ことなので、飼料中濃度(アミノ酸密度)を上げて不足分を埋める発想は、設備対策とは別軸で効きます。
ただし、要求量の上乗せはやみくもに行うのではなく、「どのステージ」「どの制限アミノ酸」を狙って上げるかを決め、費用対効果で設計するのが現実的です。
・暑熱期の設計メモ
🌡️ 摂取量が落ちる=同じ配合でも摂取アミノ酸量は不足しやすい。
🧬 150%強化は“万能”ではなく、欠乏しやすい必須アミノ酸に絞るのがポイント。
単体アミノ酸を使うほど、現場では「何をどれだけ入れたか」を説明できる状態が重要になります。
飼料制度の文脈では、環境負荷低減型配合飼料の申請に関して、トレオニン、メチオニン、シスチン、リジン等の成分量を記載する扱いが示されています。
つまり、アミノ酸設計は“栄養設計”であると同時に、“表示・管理・説明(監査対応)”の対象にもなり得る、ということです。
実務面では、次の3点がトラブル予防になります。
参考:環境負荷低減型配合飼料の申請で、トレオニン等の成分量記載の扱いが示されています(表示・管理の考え方の参考)。
FAMIC 別紙新旧対照表(環境負荷低減型配合飼料の成分量記載)
検索上位で語られやすいのは「不足を補うと成績が上がる」という一直線の話ですが、現場で効くのは“セーフティーマージンの置き方”です。
資料では、飼料原料中のトレオニン消化率が低いことから、配合時に不足していることが多く、保険効果(セーフティーマージン)のためにL-トレオニン添加がポイント、という整理がされています。
この「保険」という言葉は軽く見られがちですが、実は次の2つの不確実性を吸収する実務テクニックです。
セーフティーマージンを置くときのコツは、「とりあえず全部多め」ではなく、第一制限になりやすいアミノ酸(典型的にはリジン、その次にトレオニン等)へ優先順位を付けることです。
また、肉質重視・繁殖重視・肥育回転重視など経営目標によって“ちょうど良い保険量”は変わるため、農場のKPI(増体、飼料要求率、枝肉、事故率)に合わせて最適化するのが安全です。
参考:L-トレオニン添加の位置づけ(必須アミノ酸、消化率、セーフティーマージン、低タンパク設計の考え方)がまとまっています。
味の素ヘルシーサプライ L-トレオニン(飼料用アミノ酸)
参考:暑熱環境下で必須アミノ酸(リジン、トレオニン等)を要求量の150%に強化した飼料で成績改善という整理があります(暑熱対策の設計根拠)。