精揉機は、荒茶づくりの終盤で茶葉を針のように細く伸ばし、形状と乾きの最終調整を担う機械です。精揉機の工程条件の一例として、時間50分・含水率14%D.B(12%W.B)・茶葉重量24kgといった目安が示されることがあり、ここでの「詰め」が外観と保管安定性に直結します。
現場で誤解が多いのは、精揉は「形を整えるだけ」の工程ではない点です。実際には、加重(おもり)と回転(循環)と揉盤の熱を組み合わせ、芯に残った水分(心水)を抜きつつ、表面の乾きとしとり(適度な湿り気)の両方を作る“乾燥設計”でもあります。
意外に効くのが「精揉の前工程でのムラ」です。揉捻で火不均(乾きムラ)を除き芯の水を絞り出す流れが整っているほど、精揉機の真価が出る、という古い記述があり、前工程の出来が精揉の難易度を決める考え方は今でも通用します。
回転数は「固定値で正解がある」というより、原料(みる芽/硬葉)と乾き具合で“前半は動かして水を逃がし、後半は締める”ように変えていくのが基本です。前後半2段階で設定する精揉機の例では、前半52回転・後半45回転程度が目安として紹介されています。
また、5段階で回転数を変えられる新しい精揉機では、茶が落ち着いたら一度落として、その後「遊び揉み」に向けて順に回転数を落としていく考え方が示されています。ここでの狙いは、必要以上に“上乾き”を作らず、針状の揃いと艶を残しながら締め切ることです。
回転数を決めるときの“意外な近道”は、数値よりも「葉の動きの変化点」を先に探すことです。みる芽は水分が出やすいので序盤は回転を早め、硬葉はしとりを保つため低めから入る、といった原料別の方向性が具体的に述べられています。
精揉は、おもりを引いて加重をかけ、水分を押し出しながら揉む工程なので、「おもり操作=品質操作」と言ってよい領域です。鹿児島県茶生産協会の資料では、操作の要領を“濡れタオルを絞る感覚の繰り返し”と表現し、圧力で水分を押し出し、表面が乾いたら再び圧力を加える、というリズムが重要だとしています。
終盤は「もっと加重したくなった時が回転数を変えるタイミング」という指摘があり、力任せに締め続けるより、回転数変更と戻し操作をセットで考えるほうが失敗しにくいです。茶葉が揃い出したら戻し始める、と明記されている点も、現場判断の基準になります。
さらに「遊び揉み」は、精揉の最後の15〜20分ほど、おもりを戻して回転数を落とし、揉盤温度を上げる操作として説明されています。上質を狙うほど分銅を小刻みに戻して“掛かり過ぎ”を避ける、とされており、ここは機械というより職人の微調整が品質差になりやすい部分です。
精揉で「どこまで乾かして出すか」は、次工程(乾燥機)での形崩れ・ムレ・色落ちに影響するため、現場の事故ポイントになりやすいです。まとめ資料では、精揉の取出し度を含水率(DB)12%程度とし、乾燥機に入れた時に形が曲がらず、ムレたり色が落ちたりしないよう、十分に心水を取ってから取出すべきだと述べています。
一方で、工程例として精揉機の含水率14%D.B(12%W.B)といった数値が示されるケースもあり、どの数値を採るかは設備・原料・次工程の乾燥条件で“許容幅”があると考えるのが実務的です。ここで大事なのは「数字の暗記」より、同じ工場内で“毎回同じ判断軸”を作ることです。
意外な盲点として、湿度が高い日ほど「表面が乾いたように見えて、芯が抜けない」状態が起きやすく、最後の数分の操作が外観よりも保管性に効きます。精揉工程は回転・循環による乾燥、揉盤の熱による加温としとり付与、と整理されているため、芯水が抜けたかの観察を最優先にするとブレが減ります。
茶工場は食品加工の現場なので、精揉機も「味の機械」である前に「衛生の機械」です。HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書では、使用後の清掃に加え、茶粉が多く清掃困難な箇所は掃除機の使用と清潔な布での拭き取りを念入りに行うこと、機械外面や駆動部の茶粉・ホコリ・汚れを除去することが具体的に示されています。
異臭リスクは「製茶の技術」より「工場の匂い移り」で起きることがあり、鹿児島県茶生産協会の生産対策資料でも、茶期開始前メンテナンスと製造期の清掃徹底、周囲環境への注意が挙げられています。精揉機まわりは茶粉が溜まりやすく、油脂やベルト粉、床面の匂いが移りやすいので、清掃と整理整頓を“品質管理の一部”として扱うのが安全です。
独自視点として提案したいのは、精揉機の清掃を「終業後の一括作業」ではなく、“においの原因を作らない運用”に変えることです。具体的には、(1) 茶粉が舞う工程の直後に周辺を軽く吸う、(2) 駆動部の周囲に茶粉が溜まり始める前に除去する、(3) 拭き上げに使う布の保管場所も茶の香りから隔離する、の3点をルール化すると、異臭と異物の両方を同時に減らせます。
精揉の回転数(例:前半52/後半45)・おもり操作(濡れタオルの絞り)・取出し含水率(DB12%程度)・清掃(掃除機+拭き取り)を“単独のテクニック”としてではなく、同じ目的(芯水を抜き、針状を揃え、香味を守る)に向けたセットとして運用すると、再現性が上がります。ochakaido+3
精揉工程の回転数と投入量の考え方(具体的な目安がまとまっている)
http://www.ochakaido.com/juku1/12-4nyu.htm
精揉の取出し度(含水率DB12%程度)と天候との関係(判断基準の言語化に便利)
http://www.ochakaido.com/juku1/12-5mat.htm
精揉の操作要領(濡れタオルを絞る感覚・回転数変更のタイミング)
https://kagoshima-cha.or.jp/skill/r2-1/
茶工場の衛生管理(茶粉が多い箇所の掃除機+拭き取り、駆動部の清掃などが具体的)
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000776146.pdf