共通テストの化学において、理論化学は全体の得点の大きな割合を占めるだけでなく、無機化学や有機化学の土台となる極めて重要な分野です。多くの受験生が「計算が合わない」「時間が足りない」と悩みますが、適切な参考書を選び、正しいアプローチで学習すれば、最も安定して高得点を稼げる分野でもあります 。
しかし、書店には数多くの参考書が並び、「どれを選べばいいのか分からない」という声も少なくありません。基礎を固めるべき時期に難問集に手を出してしまったり、逆に実戦演習が必要な時期に講義系の本ばかり読んでしまったりするミスマッチが、成績の伸び悩みを招く最大の原因です 。ここでは、共通テストを見据えた理論化学の参考書の選び方から、具体的な活用法、そして得点力を飛躍させるためのテクニックまでを深掘りしていきます。
理論化学の参考書を選ぶ際、最も重要なのは「現在の自分の偏差値」と「参考書の役割」を正確にマッチさせることです。参考書は大きく分けて、現象や定義を丁寧に解説する「講義系(インプット)」と、問題を解く力を養う「演習系(アウトプット)」の2種類があります。これらを混同せず、段階に応じて使い分けることが成功の鍵です 。
化学に苦手意識がある、あるいは授業についていけない場合は、図解やイラストが豊富な「講義系」の参考書が必要です。この段階では、計算式の暗記よりも「なぜそうなるのか」という現象のイメージを掴むことが最優先です。
基礎知識はある程度入っているが、模試の点数が安定しない層です。ここでは、講義系参考書で得た知識を、実際の入試問題で使える形に整理し直す必要があります。要点がコンパクトにまとまった参考書や、標準レベルの問題集が適しています。
共通テストで9割以上、あるいは二次試験でも化学を得点源にしたい場合は、網羅性の高い辞書的な参考書や、思考力を問うハイレベルな問題集が必要です。
共通テストの化学では、理論化学は大問1と大問2で主に出題され、全体の配点の40〜50%程度を占める最重要パートです。さらに、大問5の総合問題でも理論化学の計算が絡むことが多く、実質的な比重は半分以上と言っても過言ではありません 。
共通テストの理論化学で最も基礎となり、かつ差がつくのが「モル(mol)」の扱いです。近年の傾向として、単なる計算問題ではなく、グラフや表からデータを読み取り、それを物質量の計算に落とし込む「思考力」を問う問題が増加しています 。特に、反応の量的関係(過不足のある反応)や、濃度の変換(%濃度からモル濃度へ)は、毎年形を変えて出題される超頻出テーマです。
多くの受験生が苦手とするのが酸化還元反応と電気化学の分野です。共通テストでは、教科書に載っていないような新型電池や、実験操作を伴う滴定の問題が出題される傾向があります。しかし、問われている本質は「電子(e-)の授受」という一点に尽きます。
これらの基本原理を、初見の実験設定に当てはめる力が求められます。
気体の状態方程式や固体の溶解度、反応速度と化学平衡の分野では、グラフを用いた出題が非常に多いです。例えば、温度や圧力を変化させたときに平衡がどちらに移動するか、その結果グラフがどう変化するかを選ぶ問題です。これらは計算だけでなく、「ル・シャトリエの原理」などの理論的背景を深く理解していないと正解できません 。
逆転合格.com - 共通テスト化学の勉強法とおすすめ参考書! ※共通テストの化学の大問構成や配点、グラフ問題への具体的な対策アプローチが詳細に記されています。予備校に通わず、独学で理論化学を攻略するためには、参考書を「梯子(はしご)」のように順序よく登っていく「ルート」の設計が不可欠です。いきなり過去問を解くのではなく、以下の3ステップを意識して計画を立てましょう 。
まずは計算を一旦置いておき、用語の定義と現象のイメージを固めます。「molとは何か?」「なぜ中和するのか?」といった根本的な問いに答えられるようにします。この段階では、講義系の参考書を読み込み、章末の簡単な確認問題を解くことで、「わかったつもり」を防ぎます。期間の目安は1〜2ヶ月です。
次に、典型的な問題を解けるようにします。ここで重要なのは「問題を解いて答え合わせをする」だけでなく、「なぜその公式を使うのか」「なぜその立式になるのか」を言語化することです。『基礎問題精講』や『重要問題集(A問題)』などの網羅的な問題集を使い、同じ問題を数値が変わっても解けるレベルまで繰り返します。この反復練習が、共通テスト特有の制限時間の厳しさに打ち勝つスピードを養います 。
典型問題が解けるようになったら、共通テスト形式の演習に入ります。共通テストは、誘導に乗って解答する形式や、複数の選択肢から正しい組み合わせを選ぶ形式など、独特の癖があります。『共通テスト総合問題集』や過去問、予想問題パックを使い、本番形式に慣れていきます 。ここで間違えた問題は、必ずStep 1やStep 2の参考書に戻って復習することが重要です。この「戻り学習」ができるかどうかが、独学の成功を左右します。
これは多くの参考書であまり強調されていませんが、理論化学の計算問題で最も強力な武器となるのが「単位(次元)解析」です。共通テストの計算問題でミスをする原因の多くは、公式の丸暗記による適用ミスです。これを防ぐために、常に単位を書いて計算する習慣をつけましょう。
例えば、モル濃度(mol/L)と体積(L)を掛ければ、物質量(mol)が出てくることは単位を見れば自明です。
mol/L × L = mol
密度(g/cm³)と体積(cm³)を掛ければ質量(g)になり、それをモル質量(g/mol)で割れば物質量(mol)になります。
(g/cm³ × cm³) ÷ (g/mol) = mol
このように、参考書の解説を読む際も、数字だけでなく「単位の操作」を追うようにすると、理論化学の計算プロセスが驚くほどクリアに見えてきます。特に、気体の計算やファラデーの法則などの複雑な計算では、単位をパズルのように組み合わせるだけで立式できるケースが多々あります。
計算の最後に、求めたい答えの単位と、計算結果の単位が一致しているかを確認するだけで、ケアレスミスの大部分を防げます。もし、求めているのが「質量(g)」なのに、計算結果の単位が「g/mol」になっていれば、どこかで割り算と掛け算を間違えていることに気づけます。参考書で演習する際、解説の式の横に自分で単位を書き込む練習をしてみてください。これは、どんな難解な参考書にも載っていない、しかし最強の実戦テクニックです。
共通テスト直前期(12月〜1月)になると、新しい参考書に手を出すのは厳禁です。この時期にやるべきは、これまで使い込んできた参考書を「最強の復習ツール」として活用することです 。
使い慣れた問題集や参考書で、過去に間違えた問題や、解説を読んでも即座に理解できなかった部分に付箋を貼っていきます。直前期は、この付箋がついた箇所「だけ」を徹底的に解き直します。解けたら付箋を剥がす、という作業を繰り返し、試験当日までに付箋をゼロにすることを目指します。これにより、できる問題を重複して解く無駄を省き、自分の弱点だけに時間を集中させることができます。
参考書の目次ページを見て、その単元の重要公式やキーワード、典型的な問題の解法が頭に浮かぶかチェックします。例えば「気体の溶解度(ヘンリーの法則)」という文字を見て、「温度が高いと溶解度は下がる」「圧力に比例する」「計算式はこれ」といった情報がスラスラ出てくればOKです。出てこない場合は、そのページだけを開いて確認します。これは短時間で全範囲を総復習できる非常に効率的な方法で、理論化学のような範囲の広い分野で特に有効です。
松濤舎 - 『宇宙一わかりやすい高校化学』の使い方とレベル ※具体的な到達レベルや、問題演習と並行した復習のタイミングなど、直前期にも通じる学習管理の視点が学べます。