ポリエチレンテレフタラート(PET)は、分子鎖が長い(分子量が大きい)ほど、一般に溶融粘度が高くなり、成形時の「腰(溶融強度)」や製品の強度・靭性に影響しやすい材料です。
逆に分子量が低下すると、同じ厚み・同じ形でも、割れやすい、白化しやすい、引裂が進みやすいなど、現場では「劣化が早い」方向に寄ることが多くなります。
農業用途でPETそのものを「外張りフィルム」として使うケースはPE/POほど多くありませんが、ポリエステル系フィルムやラミネート部材、包装材、結束・補修に回った再生材など、“PETが混ざる場面”は意外にあります。
このとき、分子量(と分子量分布)の違いが、同じ見た目でも「加工しやすさ」「耐久の出方」の差として表に出ます。
分子量の見方は「1つの数」だけでは不十分で、少なくとも次の3点をセットで押さえると判断ミスが減ります。
参考)https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/h_sehi_kizyun/attach/pdf/aki3-9.pdf
分子量と分子量分布の測定で代表的なのがGPC(SEC)で、ここからMw、Mn、多分散度(Mw/Mn)などが得られます。
GPCは「溶媒に溶けること」が前提で、PETも条件が合えば測定対象に含まれます。
現場の感覚としては、GPCは“材料の履歴(劣化・混合・再生)を数字で見分けたい”ときに強く、同じ銘柄でも乾燥条件や溶融履歴が悪いと分子量分布が変わり得る点を把握しやすい手法です。
一方で、GPCは設備・費用・納期が必要なので、日常管理では「固有粘度(IV)」「溶融粘度」など、もっと簡易な代替指標で回して、異常時にGPCで確定、という使い分けもよく行われます。
測定結果を見るときは、平均値(MwやMn)だけでなく、分布が“片側に崩れていないか”が重要です。
例えば、回収・リサイクル工程では加水分解などで鎖が切れ、低分子側が増えやすく、Mnが落ちて分布が変形する典型が起こります。
参考)回収PET/マレイン酸変性LDPEの溶融一軸伸長レオロジー
その結果、同じ条件で加工しても粘度が合わず、成形安定性が落ちたり、薄肉部で物性が出なかったりするトラブルに繋がります。
参考:分子量分布(GPC)でMw・Mn・Mw/Mnの定義と重要性(測定で何がわかるか)
https://www.cerij.or.jp/service/05_polymer/molecular_weight_distribution.html
PETは分子鎖中にエステル結合を持つため、水分が残った状態で高温溶融すると加水分解が進み、分子量が低下して強度などに影響する、と整理されています。
同様に、ボトル成形時やリサイクル過程で加水分解が起こり分子量が低下し、溶融物性に影響することが研究論文でも述べられています。
農業現場に置き換えると、「高温になりやすい場所に保管した再生材」「洗浄後の乾燥が不十分なフレーク」「薬剤・アルカリに触れる可能性がある部位」などは、分子量低下のリスク条件が重なりやすい点が注意ポイントです。
分子量が落ちると材料は“サラサラに流れやすくなる”方向へ寄り、成形は一見楽に見えても、最終物性が付いてこない(割れ・欠け・白化・耐久不足)という形で後から効いてきます。
加水分解は「水+熱」の組み合わせで加速しやすいので、加工・保管の両方で水分管理が最優先になります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000147342.pdf
特にペレットやフレークは見た目で水分が分かりにくく、“乾いているつもり”が一番危険です。
また酸・アルカリの存在下で分解が促進されることも指摘されており、アルカリ寄りの洗浄条件や薬剤付着がある場合は、材質選定や洗浄→乾燥→保管の設計で事故を減らせます。
参考)過酷な湿熱環境下でも樹脂の加水分解を抑制する液状シリコーンゴ…
参考:水分を含んだまま溶融すると加水分解が進み分子量が低下(乾燥の必要性)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000147342.pdf
回収PETはリサイクル工程で加水分解が起こりやすく、分子量低下が用途制約(主に繊維やシート分野に限定されがち)につながる、という趣旨の説明がされています。
この「分子量低下→溶融粘度低下→加工・物性の制約」という流れは、農業用の資材・副資材に再生材が入る場合でも同じ構造で起こります。
たとえば、再生材比率が上がるほど“ロット差”が増えやすく、同じ温度設定・同じ押出条件でも厚みが安定しない、端部が欠ける、曲げで白化が出る、といった不具合が出やすくなります。
ここで重要なのは「再生材=悪」ではなく、“どの程度分子量が落ちているか(または戻しているか)を把握して設計する”という考え方です。
意外に見落とされるのが、分子量の「平均値」よりも“低分子側の増え方”が、臭気・ブリード・表面のべたつき感・脆化のトリガーになりやすい点です。
農業資材は屋外で温度変化・湿度変化を受けやすく、材料の弱い部分から先に壊れるので、分子量分布の偏りは寿命の短さとして現れやすい領域です。
リサイクル材を使うなら、仕入れ時にIVや簡易指標で受入検査を行い、異常ロットだけでもGPCで確認する運用が現実的です。
参考:回収PETは加水分解で分子量が低下し溶融物性に影響(リサイクル時の課題)
回収PET/マレイン酸変性LDPEの溶融一軸伸長レオロジー
農業の現場で「分子量」を効かせる独自視点は、材料そのものよりも“運用条件(洗浄・乾燥・薬剤・熱)”を設計して、分子量低下を起こさない工程に寄せることです。
例えば、ハウス周りの補修・固定・結束・簡易カバーなどで「PETが混ざる可能性のある樹脂製品」を使う場合、保管場所が高温多湿になりやすいと、後工程の溶融・成形が無くても、微細な加水分解や物性低下の起点を作り得ます。
また、アルカリ性の洗浄や薬剤が絡む運用では、エステル結合を持つ材料は分解が促進される方向に働くため、“薬剤が触れる設計になっていないか”を先に点検するだけでも寿命が伸びるケースがあります。
樹脂の世界では「乾燥は段取りの一部」ですが、農業現場では「乾燥は天候任せ」になりやすいので、乾燥の置き場・通気・保管容器(密閉)までセットで決めておくと、分子量低下リスクを下げやすくなります。
実務で使えるチェック観点を、分子量の話に結び付けて整理します。
参考)https://injection-fuchu.com/column/1532/
「分子量は材料屋の話」と切り分けず、保管・洗浄・乾燥・薬剤・日射の条件を“分子量を落とさない管理”に寄せると、農業資材のトラブル予防として費用対効果が出やすい領域です。

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