ケトプロフェンは、家畜の治療現場では「炎症を抑えて痛みや発熱を下げる」目的で使われる、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類される成分です。
作用機序は、炎症反応に関わるCOX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害することで抗炎症効果を示す、と整理されています。
ここで重要なのは、ケトプロフェンは“原因そのもの”を退治する薬ではなく、発熱や疼痛などの症状を下げて動物の負担を軽くする「対症療法」の色が強い点です。
たとえば豚の細菌性肺炎では、熱が続くと採食量が落ち、脱水や増体不良につながりやすく、治療の立て直しが難しくなります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001166071.pdf
そのため、解熱によって呼吸器病のしんどさを緩和し、抗菌薬が効くまでの時間を稼ぐ、という“現場の段取り”に合う薬として位置づけると理解が早いです。
また、国内で「食用動物」に対して承認されているのは豚用の消炎剤である、という前提も押さえておくと、説明責任(監査・指導)に耐える運用にしやすくなります。
豚での効能・効果は「細菌性肺炎における解熱」とされており、呼吸器病の“熱”を下げる目的が中心です。
添付文書レベルでも「細菌性肺炎の対症療法であるため、診断を正確に行うと共に、適当な原因療法あるいは原疾患の治療を行うこと」と明記されています。
つまり、熱だけ下げて満足してしまうと、病勢そのものは進行していた…という事態が起こり得るため、獣医師の診断と抗菌薬の適正使用がセットになります。
実際、用法・用量の記載にも「本剤投与に際しては適切な抗菌薬を併用する」と入っており、単独で完結させない設計です。
農場の運用としては、「発熱=抗菌薬+解熱(必要なら補液)」の標準手順を作り、例外(軽症・経過観察・再発など)を獣医師とすり合わせておくと、現場判断のブレが減ります。
また、投与後に「増体率の低下が認められることがある」との注意もあるため、治療個体の出荷時期・群管理(飼槽の位置、給水の競合)まで含めて見直す視点が重要です。
豚の用法・用量は「1日1回、体重1kg当たりケトプロフェンとして3mgを1~3日間、筋肉内注射」とされています。
さらに「6週齢未満の豚には慎重に投与する」とされ、若齢個体では安全性・有効性の確立が十分でない前提で扱う必要があります。
現場でありがちなミスは、体重見積りが甘く“過量寄り”になったり、逆に“効かない量”で延々と引っ張ってしまうことなので、体重推定のルール(体重テープ、出荷台帳、週齢別の標準体重)を固定化すると事故が減ります。
また「要指示医薬品」であり、獣医師等の処方箋・指示で使用すること、定められた用法・用量を厳守すること、そして「使用基準」に従うことが明記されています。
ここは農場の“守り”の要で、投与記録に「日付・耳標(個体識別)・推定体重・投与量・投与者・出荷制限の解除予定日」を残すだけで、後日の確認が劇的に楽になります。
さらに開封後28日を過ぎたものは使用しない、といった保管上の注意も書かれているため、薬品庫の在庫回転(先入れ先出し)とラベル運用(開封日を油性ペンで記載)を“仕組み”にしておくのが堅いです。
食用動物では、休薬期間(使用禁止期間)の順守が最重要です。
豚では「食用に供するためにと殺する前6日間」が使用禁止期間として示されています。
この「6日」は“最後に打った日”からカウントする運用になるため、複数日投与(1~3日間)した場合は最終投与日を基準に出荷可否を判定するのが基本になります。
残留に関する行政側の整理として、ケトプロフェンは食品中の残留基準値が設定され、暴露評価の結果はADIの範囲内と報告されています。
参考)e-Gov 法令検索
同資料では、ADI(許容一日摂取量)が0.00065 mg/kg体重/dayとされ、牛・豚・乳などの基準値(ppm)が表で示されています。
農場としてここから得られる実務的な教訓は、「休薬期間を守ることが、結果的に“食品としての信用”と“取引継続”を守る最短ルート」という一点に尽きます。
参考:残留基準やADI、暴露評価の考え方(どの食品にどの基準値があるか)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001166071.pdf
副作用として、嘔吐、軟便、下痢、血便、胃炎(糜爛・潰瘍)、食欲低下がみられることがある、とされています。
さらに「消化管疾患、出血性素因、脱水あるいは循環量の減少した動物、心機能障害、肝機能障害及び腎機能障害のある動物には使用しないこと」と条件が具体的で、現場では“脱水の見落とし”が特に事故につながりやすい部分です。
独自視点として強調したいのは、薬そのものの知識以上に「投与日の水・暑熱・輸送・絶食」など、循環血液量を落とすイベントと同日に重なるとリスク管理が難しくなる点です。
併用注意も実務上の地雷です。
「非ステロイド系及びステロイド系抗炎症剤」との併用は避ける、またアミノグリコシド系抗生物質との併用も避ける、という記載があります。
さらに蛋白結合率が高い薬剤であり、利尿剤や抗凝固剤など蛋白結合率の高い薬剤との競合で有効性・安全性に影響するため併用しない、という注意もあります。
農場の具体策としては、次のように“運用で潰す”のが現実的です。
参考:豚の用法・用量、使用禁止期間(休薬期間)、副作用、併用禁忌・注意がまとまった添付文書
https://www.kyoritsuseiyaku.co.jp/products/detail/l7oaqs000000147c-att/20166_t.pdf