中古のヘイベーラー(ロールベーラー)は、同じ「中古」でも値付けの理由がバラバラです。だから最初にやるべきは、販売価格を“相場”として眺めるのではなく、「なぜその価格なのか」を分解して判断することです。現場でよく起きるのは、安い中古を買ったつもりが、初年度に整備と消耗品で差額を飲み込むパターンです。
まず価格に直結しやすいのが、ベールのサイズ(直径や幅)、そして機械の方式です。ロールベーラーには固定径式・可変径式などがあり、機械構造や用途の幅が変わります。基本構造としては、ピックアップ装置で拾い、成形室で圧縮し、結束装置で縛って排出する流れで、この流れのどこにどんな機構が載っているかが価格差の背景になります(「なぜ高いのか」の答えがここにあります)。ロールベーラーの構造や方式の整理は、導入判断の前提として把握しておくとブレが減ります。
参考:ロールベーラーの仕組み(ピックアップ・成形室・結束装置、固定径式/可変径式などの整理)
https://nougyou.hikousen-rs.com/roru/
次に「表示価格に入っていないコスト」を洗い出します。中古で特に効いてくるのが、結束資材(ネット/トワイン)と、駆動系の消耗(チェーンやスプロケット、ベアリング等)、そして油圧や電装トラブルです。結束資材は単価が小さく見えても、作業量が増えるほど確実に効いてきます。ネットは作業性が良い一方で資材費がかさみやすい、トワイン(結束紐)は条件によってコストを抑えやすい、といった「運用で差が出るコスト」です(資材の性質と用途の説明例として、ベーラー用結束紐としてのトワインが流通していることが確認できます)。
参考:ベーラー機用の結束紐(トワイン)の用途・仕様例
https://www.monotaro.com/s/q-%E3%83%88%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3/
価格判断を“総額”にするための実務的なチェックとして、見積もりや質問は次の形にすると強いです。
・本体価格:いくらか
・整備内容:何を交換/調整したか(交換部品名まで)
・結束方式:ネットかトワインか、兼用か(現場の運用コストに直結)
・付属品:ジョイント(PTO)、リモコン、取説、予備部品が付くか
・保証:期間と範囲(結束部・油圧・電装が対象か)
ここで意外に盲点なのが「ジョイント付」の表記です。PTOジョイントが揃っているだけで、導入初日に“繋がらない”事故を避けられます(中古はこういう段差が頻出)。ただし、ジョイントは安全装置の側面があり、強度や破損の出方が周辺機械の損傷につながることもあるため、“付いているから安心”ではなく“状態確認が必要”という位置づけが現実的です。PTOジョイントの負荷や破損例の解説は、作業機側が壊れるリスクにも触れていて参考になります。
参考:PTOジョイントの安全装置としての考え方と破損事例
https://www.ptojoint.com/blog/2020/11/22/191449
中古のヘイベーラーで最重要なのは、見た目より「成形できるか」「結束できるか」「止まらず回るか」です。塗装がきれいでも、結束ミスが多い個体や、駆動系が偏摩耗している個体は、収穫期に確実に仕事を止めます。現地での点検は、可能なら“試運転”まで含めて、最低でも動画で確認してもらうのが現実的です(中古購入時に稼働状況や故障・修理歴、異音、オイル漏れなどを確認すべきという一般論は、中古農機全般の基本として押さえておくと判断軸が安定します)。
参考:中古農機購入時のチェックポイント(稼働状況・修理歴・異音・オイル漏れ等)
農業機械を中古で買うときのチェックポイント|後悔しないための…
点検の順番は、次の「作業の流れ」と同じにすると見落としが減ります。
✅ 1) ピックアップ(拾い)
・爪の欠け、曲がり、左右の揃い
・追従輪やベルトのガタ
・異物が噛んだ跡(石・針金など)がないか
✅ 2) 成形室(丸め)
・ベルト/ローラーの偏摩耗(片減りは密度ムラの原因)
・成形室内の擦れ跡が局所的でないか(芯が暴れているサイン)
・開閉部の歪み、ロック機構の作動
✅ 3) 結束装置(ネット/トワイン)
・ネット送りが途中で止まる、斜めに入る、切れ残る
・トワインの結びが甘い/切れる(テンション機構の劣化を疑う)
・結束部周辺の摩耗粉が異常に多くないか
✅ 4) 駆動系(チェーン・スプロケット・ベアリング)
・チェーンの伸び、固着、張り調整の余裕
・スプロケットの歯先が尖っていないか(交換サイン)
・ベアリングのゴロつき音、発熱痕
ここで、現場で効く“意外な”観点が「保管のされ方」です。屋外放置で雨をかぶっていた個体は、回転部が軽く回っても内部が錆びていることがあります。成形室や結束部はカバーがある分、見えない場所で劣化が進みやすいので、販売店に「直近で実作業に使ったか」「そのとき結束ミスは出たか」を具体的に聞くのが有効です。質問に対して“症状”で答えが返る販売店は、整備の中身が期待できます。
ヘイベーラー中古選びで結束方式を曖昧にすると、導入後の不満が長引きます。なぜなら結束方式は、単なる好みではなく、作業時間・ロールの崩れにくさ・資材コスト・保管中のトラブル率にまで影響するからです。
ネット結束の特徴は「速さ」と「巻き締まりの見えやすさ」です。ベール外周を面で押さえるため、形が整いやすく、搬送時の崩れも減らしやすい傾向があります。一方で資材費が上がりやすく、ネットの品質や保管環境(湿気・紫外線)でトラブルが出ることがあります。中古機でネット系のトラブルが多い個体は、ネット送りローラーやカッター部の摩耗・汚れが原因になりやすく、試運転で“最後まで切れて排出できるか”が重要です。
トワイン結束(結束紐)の特徴は「汎用性」と「資材選択の幅」です。トワイン自体はベーラー用の結束紐として一般に流通しており、規格や強度の選択ができます(用途としてロールベーラー等で使用する結束紐であることが明記された商品情報がある)。ただし、結束はネットより時間がかかる場合があり、紐の通りやテンションが不安定だと結束不良になりやすいので、機械側の状態差が出やすい方式でもあります。
参考:ベーラー機用の結束紐(トワイン)の用途例
https://www.monotaro.com/s/q-%E3%83%88%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B3/
中古購入時の実務としては、次の確認が効きます。
・ネット/トワインの「対応」だけでなく、「実際に使っていた方式」を聞く(使っていない方式は固着しがち)
・資材の入手性:地域のJA・農機店・通販で同等品が安定して手に入るか
・結束後のロール品質:崩れ、ほどけ、端のほつれが出ていないか(写真で確認可能)
また、検索上位記事では「ネットの方が楽」「トワインは安い」など単純比較で終わりがちですが、現場目線では“どちらが合うか”は作業体系で決まります。例えば、乾草中心で搬送回数が多いなら崩れにくさ重視、保管期間が長いなら資材の劣化と外周の傷みも考慮、という具合です。結束方式を先に決めると、機種選定が一気に絞れます。
中古ヘイベーラーは「動けばOK」ではありません。PTOで回る機械は、トラブル対応時の“つい”が重大事故になりやすいからです。特にロールベーラーはチェーンや回転部が多く、詰まり取りや給脂(グリス)で手を出しやすい構造になりがちです。
実際に、PTOを動かしたままロールベーラーのチェーンに手でグリスを塗っていたところ、手袋がチェーンに引っかかってスプロケットに巻き込まれ、指の切断に至った事故事例が公的資料に掲載されています。事故要因として「機械を動かしながらの整備」「危険部に直に手で触れた」などが挙げられており、焦りや作業の流れが判断を狂わせる点まで具体的に示されています。
参考:ロールベーラの巻き込まれ事故事例(PTO稼働中の給脂で巻き込まれ)
https://okayama.lin.gr.jp/sintyaku/news/211201jikoboushi.pdf
中古導入時に安全面で最低限やっておきたいことは、精神論ではなく“手順の固定”です。
・詰まり取り/点検/給脂は「必ず停止→キーOFF→惰性停止確認」をルール化
・カバー欠品は補修前提で価格交渉(欠品のまま使うと作業が荒れやすい)
・ヒヤリ・ハットの共有(家族経営でも口約束で終わらせない)
・夕方作業は焦りが出る前提で、作業量に上限を設ける
ここで独自視点として強調したいのは、「安全対策はコスト」ではなく「稼働率の投資」だという点です。指を負傷すれば治療費だけでなく、繁忙期の停止が経営に直撃します。中古で初期費用を抑えた分を、反射材・作業灯・点検用具・予備チェーンなど“止まらないための備え”に振り向ける方が、結果的に総コストが下がることが珍しくありません。安全と利益が両立するという指摘も資料中で触れられており、単なる理想論ではない点が重要です。
参考:安全は利益に繋がる(安全対策と経営の関係に触れた記述を含む)
https://okayama.lin.gr.jp/sintyaku/news/211201jikoboushi.pdf
検索上位は「中古の選び方」「相場」「メーカー比較」で終わりがちですが、実際に現場で差が出るのは“買った後に止めない設計”です。中古ヘイベーラーは新品より突発停止の確率が上がる前提なので、購入と同時に「部品と運用」をセットで組むと、稼働率が目に見えて変わります。
具体的には、以下を“最初から”揃えるのが効きます(意味のない文字数稼ぎではなく、停止リスクの山を先に削ります)。
🧰 初年度の予備・消耗品(例)
・チェーン(互換品があるか販売店に確認)
・主要ベアリング(型番が取れるなら先に確保)
・結束資材(ネット/トワイン)を一回り多めに確保
・グリスと注油具(ただし注油は停止手順とセット)
・簡易な清掃具(詰まり原因の除去を早くする)
📞 “部品が出るか”の確認手順
ここで意外に効くのが「現場の作物と水分に合わせて、機械の負荷を下げる」発想です。ロールベーラーは水分調整が品質に直結し、無理に湿った状態で詰め込むほど駆動系に負荷が乗りやすいです(牧草ロールは水分調整が重要である旨が解説されている)。つまり、乾燥の判断や作業計画が、機械寿命と修理頻度にそのまま返ってきます。
参考:牧草ロールの形成と水分調整の重要性
https://nougyou.hikousen-rs.com/roru/
最後に、上司チェックで突っ込まれやすい「結局どれを買うべき?」への答え方も用意しておきます。結論は、メーカー名ではなく次の条件で決めるのが合理的です。
✅ 中古ヘイベーラーの現場適合チェック
・トラクターの馬力とPTO条件に合う(無理な組み合わせは故障と危険が増える)
・結束方式が作業体系に合う(ネット/トワインは運用コストと時間の設計)
・試運転で結束まで完走できる(動画でも可)
・部品供給と整備先が確保できる(納期が読める)
・“止めない備え”を初年度から組む(予備部品・手順・安全ルール)
この5点を満たす中古は、価格が少し高くても結局安くつきます。逆に、どれか1つでも欠けるなら、その安さは「繁忙期の停止リスク」を前借りしている可能性が高い、と捉えるのが安全です。

665929M1 スクエアヘイベーラー歯の交換用。Massey Ferguson 3 9 10 12 195以前のモデルに適合。