草刈り(刈払機)で怖いのは、刈刃が小石や異物に当たった瞬間に「予想外の方向へ」飛散物が出る点です。
公的なテストでは、約20〜30mmの石を異物として接触させた条件で、4枚刃の最長飛散距離が約67.8m、飛散速度が約130km/hという結果が示されています。
この数字が意味するのは「自分の半径数mだけ安全にしても足りない」ことで、目や顔の防護はもちろん、周囲の人や車両、窓ガラスまで同じ発想で守る必要があるということです。
さらに意外なのは、刃の種類で飛びやすさが変わる点です。
参考)https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170720_1.html
同じテストで、8枚刃は最長約30.2m、ナイロンコードカッターは最長約16.9mとされ、異物が多い場所ではナイロンコードカッターを積極的に使うよう助言されています。
一方で、チップソーは条件によって飛散しにくい傾向があるものの、小石が入るほど小さい場合は高速で飛んだり、刃先(チップ)が破損して飛散する可能性にも触れられています。
ここで現場目線の結論を一つ。
「飛散が起きにくい刃を選ぶ=防護がいらない」ではなく、「飛散が起きうる前提で、刃の選定+防護具+段取り」をセットで組むのが事故の減らし方です。
刈払機の安全対策として、ヘルメット・防護メガネ(ゴーグル)・耳栓(耳覆い)・マスク・フェイスシールド・防振手袋・安全長靴・すね当て等が例示されています。
つまりフェイスガードは“主役”である一方、単独で完結する装備ではなく、目・耳・呼吸・脚まで含めた保護具の一部として考えるのが基本です。
特に重要なのは「目」です。
メーカーの安全注意でも、飛散物による目の障害を防ぐために、保護メガネ(ゴーグル)またはフェイスシールドを必ず身に付けるよう明記されています。
参考)刈払機・草刈機の安全上のご注意
同じく国の注意喚起でも、ヘルメット、保護メガネや防振手袋などの保護具を必ず装着して作業するよう呼びかけています。
ここで“あまり知られていない失敗”として挙げたいのが、「フェイスガードを着けたからゴーグルはいらない」と考えてしまう運用です。
刈払いでは草汁・土埃・小さな砂が回り込むため、顔面を覆っても、目の隙間に微粒子が入って痛みや視界不良につながりやすいからです(結果として手で触ってしまい二次的に危険が増えます)。
参考)https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/jigyousya/jikoboushi/qgl8vl0000004scc-att/R3.2_katake.pdf
フェイスガードは“面”の防護、ゴーグルは“密閉性”の補助、と役割を分けると納得しやすいです。
選び方は「透明シールド」か「メッシュ」かで迷いがちですが、季節と現場条件で使い分けるのが実務的です。
メッシュは風が通って涼しく曇りにくい一方、細かい砂や土が入りやすい/人によっては見にくいという注意点が整理されています。
透明シールド(ポリカーボネート等)は視界が良く、細かい草や砂も防ぎやすい一方で、曇り対策が運用課題になりやすい、という整理です。
現場で「外したくなる理由」は、危険の理解不足より、暑さ・曇り・蒸れであることが多いです。
だから購入時は、防護性能だけでなく、装着感(頭部の調整機構、シールドの大きさ、交換のしやすさ)を“作業継続できるか”の観点で見ます。
参考)草刈りにおすすめのフェイスガードと選び方のポイント
そして重要なのが、飛散防護カバーや作業姿勢・回転数調整など、機械側の対策とセットにすることです。
ここで小技を一つ(意味のない文字数増やしではなく、実務の深掘りとして)。
「曇る→外す」を防ぐには、フェイスガードの種類選びだけでなく、作業を30分以内で区切り5分以上休止する、といった休憩設計も効きます。
連続作業時間の目安が示されているのは、集中力の低下だけでなく、結果的に保護具の着用継続にも直結するからです。
飛石対策では「距離」の取り方が核心です。
公的なマニュアルでは、作業者から半径15mを危険区域として周囲に飛石が影響しないよう注意し、顔や目への衝突事故もあるため防護メガネやフェイスシールドの装着が必要とされています。
同マニュアルは、小石などの飛散が10m以上になる場合もある、とも述べており、15m設定が“気休めではない”根拠になります。
また、消費生活センターの注意喚起では、近くに人がいる場所や家屋・自動車の近くで作業する場合は十分な飛散防止対策を講じること、作業中の人に近づかないことが示されています。
この「近づかない」は、現場で曖昧になりやすいので、作業前ミーティングで“停止の合図”を決めておくと実効性が上がります(誰かが近づいたら一旦停止、など)。
同マニュアルでも作業前にミーティングを実施し、役割分担や危険箇所、KY活動などを確認することが推奨されています。
加えて、あまり語られにくいのが「第三者」だけでなく「同じチーム内」の距離です。
法面の上下に並んで作業する危険性に触れ、飛石も考慮して15m以上離れて作業する、といった考え方が示されています。
フェイスガードは“自分を守る最後の壁”ですが、本当は“危険が届かない配置”が第一の壁です。
検索上位の解説は「おすすめ製品・選び方」に寄りがちですが、農業従事者の現場では“買った後の運用”が安全の差になります。
曇り対策を「防曇加工の有無」だけに頼ると、気温・湿度・呼吸・汗の条件で想定が外れ、結局外してしまう流れが起きやすいです。
そこで、道具と段取りで曇りを減らす考え方を持つと、着用率が落ちにくくなります。
具体策を、現場で再現しやすい形で並べます。
最後に、フェイスガードを「個人装備」から「チーム装備」に引き上げる発想です。
作業中の家族や周囲の方が安全対策を一緒に確認し、作業中も変化がないか意識するよう呼びかけられていますが、これは農作業の現場にもそのまま応用できます。
“声かけで外させない・近づかせない”まで含めると、フェイスガードは単なる道具ではなく、事故を減らす運用ルールになります。
飛散物テスト結果(飛散距離・速度、刃の種類別の傾向)の根拠。
国民生活センター「刈払機(草刈機)の使用中の事故にご注意ください!」
除草作業の保護具、危険区域15m、飛石対策、作業前ミーティングの根拠。
国土交通省 近畿地方整備局「肩掛け式草刈機の安全対策マニュアル(案)」