東海農政局を目指すにあたって、最も気になるのが採用人数の実績とその推移ではないでしょうか。国家公務員一般職試験(大卒程度)の合格者の中から、東海農政局に採用される人数は決して多くはありません。しかし、近年の傾向を詳しく分析すると、行政職において採用枠がわずかながら拡大しているという興味深い事実が見えてきます。ここでは、行政職と技術系(農業土木・調査計画系)に分けて、具体的な数字をもとに現状を解説します。
ここ数年の東海農政局における採用人数は、行政区分において増加傾向にあります。例えば、令和5年度(2023年度)の行政職の採用予定者数は9名程度でしたが、令和6年度(2024年度)には14名程度と、採用枠が拡大されています。これは、組織の新陳代謝や若手職員の確保を積極的に進めている表れと言えるでしょう。
参考)募集要項:東海農政局
一方で、技術系(農業土木・調査計画系など)の採用は、東海農政局単独の数字として公表されることは少なく、「全国の地方農政局で若干名」や、東海・北陸ブロック単位での数字として出されることが一般的です。しかし、実態としてはコンスタントに採用が行われており、特に農業土木区分では、東海農政局管内の大規模な国営事業(かんがい排水事業など)を支える人材として、毎年一定数が確保されています。採用実績を見ると、東海北陸地域全体での技術系採用は安定しており、その中から東海農政局への配属が決まります。
参考)https://www.jinji.go.jp/content/000004449.pdf
このように、行政職は「狭き門」であることに変わりはありませんが、チャンスは広がっています。技術系に関しては、専門知識を持つ学生にとって、地域に根差したインフラ整備に関われる魅力的なフィールドが用意されています。
東海農政局の倍率を考える際、まず理解すべきは「国家公務員一般職試験の倍率」と「官庁訪問での競争率」は別物であるということです。国家公務員一般職(行政・東海北陸ブロック)の最終合格倍率は例年2.5倍~3倍程度ですが、これはあくまで「試験に受かる」までの数字です。
参考)【公務員】農林水産省の採用試験とは?試験概要や難易度・倍率や…
真の難関は、その後の「官庁訪問」にあります。東海農政局は、地域密着で働きたい受験生からの人気が非常に高く、特に愛知県や岐阜県、三重県出身者からの志望が集中します。採用人数が10名前後であるのに対し、訪問者はその数倍に上るため、実質的な競争倍率はさらに跳ね上がります。特に事務系区分では、面接での人物評価が極めて厳格に行われるため、筆記試験の順位が高くても油断はできません。
難易度が高い理由の一つに、採用担当者が「長く定着して働いてくれるか」を重視している点が挙げられます。単なる知識量ではなく、東海地方の農業に対する熱意や、組織への適性が深く問われるのです。
国家一般職試験に最終合格した後、東海農政局に採用されるためのフローは以下の通りです。
特に重要なのが官庁訪問です。東海農政局では、複数回の面接を通じて、受験者の人柄や適性をじっくりと見極めます。過去の体験談によると、初回の面接から最終的な内々定が出るまで、数日間にわたって面接が行われるケースもあります。また、内々定解禁日直後に「囲い込み」が行われることもあるため、第一志望であることを明確に伝える姿勢が不可欠です。
参考)農林水産省の面接体験談一覧(一次面接から最終面接の質問と回答…
参考リンク:人事院中部事務局主催の合同説明会スケジュール
東海農政局の採用を勝ち取るためには、面接対策がすべてと言っても過言ではありません。特に官庁訪問では、エントリーシート(ES)に書かれた内容を深掘りされるだけでなく、農政局特有の政策課題に対する意見を求められることがあります。ここでは、過去に実際に聞かれた質問や、評価されるポイントを解説します。
東海農政局の面接は、圧迫感の少ない「穏やかで温かい」雰囲気が特徴ですが、質問内容は鋭く、具体的です。単なる志望動機だけでなく、農業政策への理解度や、公務員としての適性を問う質問が多くなされます。
参考)https://www.maff.go.jp/tokai/somu/jinji/recruit/daisotsu/gyosei/attach/pdf/240531-1.pdf
特に「なぜ東海農政局なのか」という点は深く突っ込まれます。「食に関わりたい」というだけでは弱く、「東海地方の〇〇という課題に対し、農政局の立場からこうアプローチしたい」といった具体的なビジョンが必要です。
参考リンク:農林水産省・農政局の官庁訪問で聞かれる予想質問190選
志望動機を作成する際は、東海農政局が管轄するエリア(愛知、岐阜、三重)の農業特性を理解していることをアピールしましょう。以下のキーワードをうまく盛り込むことで、説得力が増します。
例えば、「大学で学んだ〇〇の知識を活かし、東海地方の特産品である『〇〇』の輸出促進に貢献したい。特に、農政局が推進するスマート農業の導入支援を通じて、高齢化が進む生産現場の負担軽減に取り組みたい」といった構成が有効です。
東海農政局の職員メッセージや採用パンフレットを見ると、「チームワーク」「現場主義」「コミュニケーション能力」といった言葉が頻繁に登場します。農政局の仕事は、農家やJA、市町村の担当者など、多くの関係者と調整を行う場面が多々あります。そのため、独りよがりな優秀さよりも、「周囲と協調しながら粘り強く課題解決に取り組める人物」が高く評価されます。
参考)https://www.maff.go.jp/tokai/somu/jinji/recruit/daisotsu/gijutsu/nnkogaku/attach/pdf/240208-9.pdf
また、若手職員の座談会などでは「風通しの良さ」や「相談しやすさ」が強調されています。面接官は「この学生と一緒に働きたいか」「職場の雰囲気に馴染めるか」を見ています。緊張しすぎず、自分の言葉で素直にコミュニケーションをとる姿勢が、最終的な合否を分けるポイントになります。
参考)https://www.maff.go.jp/tokai/somu/jinji/recruit/daisotsu/gyosei/attach/pdf/20250523-1.pdf
東海農政局には大きく分けて「行政職」と「技術職(農業土木・調査計画系)」の2つの採用区分があります。これらは入局後のキャリアパスや、日々の業務内容が大きく異なります。ミスマッチを防ぐためにも、それぞれの職種が具体的に何をしているのか、現場のリアルを知っておきましょう。
農業土木職の仕事は、まさに「地図に残る仕事」です。東海地方には、木曽川水系をはじめとする豊かな水源があり、それらを農業用水として利用するためのダム、頭首工、用水路などの巨大なインフラ整備を担当します。
具体的な業務は以下の通りです。
デスクワークだけでなく、作業着を着て現場に出向く機会が多いのが特徴です。農家の方々から「水が来て助かった」と直接感謝されることもあり、やりがいが目に見えやすい職種と言えます。また、近年では頻発する豪雨災害への対策(防災・減災)も重要なミッションとなっています。
一方、行政職は、農業政策の「企画・立案」と「運用」を担うスペシャリストです。本局(名古屋市中区)での勤務が中心となり、法律や予算に基づいた制度設計や、補助金の審査・交付事務などを行います。
参考)https://doda.jp/DodaFront/View/CompanyJobs/j_id__10014947702/
主な業務内容。
行政職は、幅広い部署を2~3年おきに異動しながら、ゼネラリストとしての経験を積んでいきます。「食料安全保障」や「みどりの食料システム戦略」といった国の大きな方針を、地域の実情に合わせて落とし込んでいく調整能力が求められます。
ここであまり知られていない、しかし非常に重要なキャリアの「転勤」に関する事実をお伝えします。東海農政局の採用であっても、キャリアの途中で必ずと言っていいほど、東京の農林水産省本省(霞が関)への出向の機会があります。
これは「若手育成」の一環として行われることが多く、採用から3年目~5年目くらいのタイミングで、2年間程度東京で勤務するケースが一般的です。
面接でも「東京への転勤は大丈夫?」と聞かれるのは、この本省出向があるためです。これを「成長のチャンス」と捉えられるかどうかが、採用担当者へのアピールポイントになります。地方採用だからといって、ずっと東海地方に留まるわけではない、という点は覚悟しておくべきでしょう。
東海農政局は、行政職で14名程度、技術系で10名程度と少数の精鋭を採用する狭き門ですが、その分、一人ひとりの職員が担う責任とやりがいは大きな組織です。官庁訪問では、単なる憧れではなく、「東海地方の農業をどう支えたいか」という具体的なビジョンと、本省出向も含めたキャリアへの意欲を見せることが合格への鍵となります。徹底したリサーチと自己分析で、内定を勝ち取ってください。