水産加工で議論される「特定技能」は、現場実務としては「飲食料品製造業分野」の枠組みで理解するのが近道です。
この分野の特定技能1号が従事する業務は、飲食料品(酒類を除く)の製造・加工と、安全衛生の確保が軸になります。
水産加工の工場でいえば、原料受入れから前処理、加工、包装、検品、衛生管理まで、工程全体の“製造側”が射程に入ります。
一方で、注意点は「分野が同じでも、任せられることは何でもOKではない」ことです。
参考)特定技能「漁業・養殖業」を徹底解説|業務内容・要件・水産加工…
制度上、雇用形態は直接雇用に限るため、日々の指揮命令系統が曖昧になる形(現場の丸投げ的な外部常駐など)は避ける設計が必要です。
また、特定技能2号では製造・加工・安全衛生に加えて「管理業務」も対象となり、熟練人材として現場を回す役割が想定されています。
水産加工(飲食料品製造業分野)で特定技能を受け入れる企業には、「食品産業特定技能協議会」の構成員になることが条件として明記されています。
加えて、協議会への必要な協力や、農林水産省(または委託先)が行う調査への協力も求められ、受入れ後も“関与が続く制度”だと捉えるべきです。
登録支援機関へ支援計画の実施を委託する場合も、協議会の構成員で、協力義務を果たす登録支援機関に委託することが条件になります。
見落とされがちですが、運用方針には「キャリアアッププランのイメージをあらかじめ設定し、雇用契約締結前に書面交付して説明すること」まで条件として書かれています。
つまり、単に人手不足を埋める採用ではなく、「どの工程を覚えて、どこまで任せるか」を最初から言語化することが、申請・定着の両面で効いてきます。
さらに、特定技能2号の実務経験に関係して、本人から求めがあれば実務経験を証明する書面の交付が必要なので、日報・教育記録・配置記録の運用設計が後で効いてきます。
参考:運用方針(受入れ条件、協議会、業務区分、直接雇用、キャリアアッププランの根拠)
出入国在留管理庁PDF:飲食料品製造業分野の運用方針(条件・業務・協議会)
飲食料品製造業分野の特定技能1号は、技能水準として「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」、日本語は「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験N4以上」が基準とされています。
技能実習2号を良好に修了している場合、必要な技能水準・日本語能力水準を満たすものとして取り扱う(いわゆる移行ルートがある)点も、採用計画の分岐点です。
特定技能2号は「飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験」に加え、複数の従業員を指導しながら作業に従事し工程を管理する者としての実務経験が要件になります。
水産加工の現場目線で言い換えると、1号は「工程で手を動かして品質・衛生を守れる人材」、2号は「ラインや持ち場を回し、教育・工程管理も担う人材」です。
そのため、採用前に“どの層が足りないか”を整理すると、試験ルート(即戦力を外から採る)と、技能実習→特定技能(社内で段階的に育てる)の使い分けがしやすくなります。
また、日本語要件は最低ラインが示されているだけなので、現場のヒヤリハットや衛生指示の精度を考えると、専門用語を含むOJT用語集や指差し確認の型を先に用意しておく方が安全です。
運用方針では、特定技能外国人の雇用形態は「直接雇用に限る」と明記されています。
現場では、派遣に慣れている企業ほど、契約形態や指揮命令の線引きをうっかり従来運用のままにしがちなので、採用前に労務・現場の両方で“直接雇用の運用”を再点検するのが安全です。
また、登録支援機関に支援計画の実施を委託する場合、委託先にも協議会構成員であること等の条件が付くため、「とりあえず紹介会社に丸投げ」は制度上の地雷になり得ます。
さらに重要なのが、キャリアアッププランの書面説明です。
水産加工は工程が細かく、技能差が品質事故に直結しやすいので、プランは“抽象的な将来像”ではなく、工程単位(例:原料判別→洗浄→下処理→加工→包装→金属検出→記録)で段階表にすると、教育にも監査にも強くなります。
そして、特定技能2号の実務経験の証明に備えて、教育記録・指導記録・配置表・工程責任範囲を残す運用を作ると、本人のモチベーション(可視化された昇格)にもつながります。
検索上位の記事では「要件・試験・協議会」が中心になりがちですが、現場で差が出るのは“証明できる運用”を先に作れるかどうかです。
運用方針上、企業は調査等への協力や、本人から求めがあれば実務経験証明の書面交付が求められるため、口頭指導だけの現場は後から詰みやすい構造です。
そこで、HACCPの「記録」を、外国人材の育成ログ(どの工程を単独で担当できるか、どの基準で合格とするか)と兼用する設計にすると、衛生強化と人材育成が一本化できます。
意外と効く工夫は、現場の“日本語の壁”を語学ではなく設計で潰すことです。
例えば、重要管理点(CCP)や逸脱時対応を、文章ではなく「工程名+温度+時間+確認者」の定型フォーマットに落とし込み、数字とチェック欄中心にすると、N4レベルでも事故リスクを下げやすくなります。
また、2号を目指す人材には「複数の従業員を指導しながら工程管理」という要件があるため、早い段階から“教える役”を小さく任せ、指導記録を残すと、要件と育成が自然に接続します。