平成26年4月1日付けで農業経営基盤強化促進法が改正され、青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法(青就法)が廃止されました。この改正により、就農支援資金のうち研修資金と準備資金が廃止され、就農施設等資金が拡充されて青年等就農資金として融資されることになりました。
参考)みやぎ農業振興公社
改正の背景には、農業の構造改革を推進するという政策目標がありました。従来の就農支援資金制度では、研修資金として月5万円から15万円、準備資金として最大200万円が無利子で貸し付けられていましたが、これらの資金は新しい支援体系に統合されることになったのです。
参考)e-Gov 法令検索
廃止後も経過措置として、旧制度で認定を受けた就農計画に基づき申請される就農支援資金貸付申請のみ新たな貸付を行うこととなり、償還等に係る業務は現行どおり継続されています。
青年等就農資金は、新たに農業経営を営もうとする青年等に対し、農業経営を開始するために必要な資金を長期・無利子で貸し付ける制度です。融資限度額は3,700万円(特別認定では最大1億円)で、償還期限は17年以内、据置期間は5年以内に設定されています。
参考)青年等就農資金(新規就農者向けの無利子資金制度)について:農…
この制度の対象となるのは、認定新規就農者として認定された者で、原則として18歳以上45歳未満の青年、または効率的かつ安定的な農業経営を営むために活用できる知識・技能を有する65歳未満の者が該当します。従来の就農支援資金が研修や準備段階を支援していたのに対し、青年等就農資金は農業経営開始後の施設・機械購入などに焦点を当てています。
参考)農業融資を無利子で借りられる!新規就農者は知っておきたい青年…
農林水産省の青年等就農資金ページ
青年等就農資金の申請手続きや要件の詳細について確認できます。
就農支援資金を借り受けた者が認定就農計画に基づく研修を中止した場合、研修終了後1年以内に就農しなかった場合、償還期間以内に離農した場合などには、就農支援資金を一時償還(一括返済)することとなります。移動時点が就農後5年以上経過し、償還を開始してから8年を経過していない場合には、移動時点における残額について繰上償還を求めるなど、厳格な運用がなされています。
参考)https://www.maff.go.jp/j/new_farmer/n_kasituke/syunou_shikin/pdf/s_sekoutuuchi.pdf
一方で、平成30年度をもって新規貸付が終了して償還事務のみとなったことから、貸付事業に必要な資金を確保する必要がなくなり、多くの自治体で就農支援資金貸付事業等特別会計条例を廃止する動きが見られました。滋賀県や広島県などでは、償還業務の継続は必要なものの、特別会計としての区分経理の必要性がなくなったため、条例廃止の措置が取られています。
参考)https://www.shigaken-gikai.jp/voices/GikaiDoc/attach/Nittei/Nt14251_01.pdf
償還免除については、やむを得ない事情として妥当と認められる場合にのみ適用され、その判断は交付主体である都道府県や市町村が行っています。
参考)https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/490871.pdf
就農支援資金の廃止と前後して、新たに就農準備資金と経営開始資金という制度が創設されました。これらは従来の融資制度と異なり、返済不要の交付金として支援を行うものです。
参考)就農準備資金・経営開始資金:農林水産省
就農準備資金は、都道府県が認める農業大学校や先進農家等の研修機関で研修を受ける就農希望者に対し、月12.5万円(年間最大150万円)を最長2年間交付する制度です。就農予定時の年齢が49歳以下であることなどが要件となっています。
参考)https://miyagi-syunoshien.com/pages/32/
経営開始資金は、就農直後の新規就農者に対し、経営が不安定な就農初期段階(3年以内)の所得を確保するため、年間最大150万円を交付する制度です。認定新規就農者として認定され、前年の世帯所得が600万円以下であることなどが要件です。
参考)農業次世代人材投資資金(経営開始資金) - 魚沼市ホームペー…
農林水産省の就農準備資金・経営開始資金ページ
最新の交付要件や申請方法について詳しく確認できます。
就農支援資金の研修資金・準備資金廃止により、新規就農希望者にとっては支援制度が複雑化し、どの制度を利用すべきか判断が難しくなりました。研修支援を行う現場からは、研修生に対する国の支援制度が頻繁に変更されるため、研修希望者への説明に苦慮しているという声も上がっています。
参考)https://www.be-farmer.jp/uploads/statistics/case_studies_of_regional_support_2024.pdf
一方で、制度転換により融資から交付金へと支援形態が変わったことで、新規就農者の経済的負担は軽減されました。従来の就農支援資金は無利子とはいえ返済義務があったのに対し、就農準備資金や経営開始資金は原則として返済不要です。ただし、交付を受けた期間と同じ期間農業経営を継続しなかった場合には返還が求められるため、安易に利用できるものではありません。
参考)【2025年最新版】農業で役立つ補助金・助成金まとめ!活用し…
また、青年等就農資金への移行により、農業経営開始時の機械・施設取得に対する支援が強化されました。最大3,700万円(特別認定では1億円)という融資限度額は、本格的な農業経営を目指す新規就農者にとって大きな支援となっています。
| 制度名 | 支援内容 | 支援額 | 返済義務 |
|---|---|---|---|
| 旧就農研修資金 | 研修期間中の生活費 | 月5万~15万円 | あり(無利子) |
| 旧就農準備資金 | 住居移転・資格取得等 | 最大200万円 | あり(無利子) |
| 就農準備資金(現行) | 研修期間中の生活費 | 年間150万円×最長2年 | 原則なし |
| 経営開始資金(現行) | 就農初期の所得確保 | 年間150万円×最長3年 | 原則なし |
| 青年等就農資金(現行) | 機械・施設購入 | 最大3,700万円 | あり(無利子) |
新規就農者にとって、現在の支援制度は就農準備から経営確立まで切れ目なく支援する体系となっており、従来の就農支援資金よりも手厚い内容となっています。
参考)【2025年最新版!】農業で活用できる補助金・助成金の紹介!…