新規就農給付金の審査が厳しいとされる最大の理由は、限られた予算枠の中で真に農業を継続できる人材を選抜する必要があるためです。自治体が確保できる認定枠が少ないため、やる気だけでは不十分で「この人物を落とせば農業界の損失になる」と思わせるだけの実力と計画性を示す必要があります。
給付金を受けるには、原則49歳以下であること、都道府県が認めた研修機関で概ね1年以上(1,200時間以上)研修を受けること、独立・自営就農を目指すこと、前年の世帯所得が600万円以下であることなど、複数の条件を同時に満たさなければなりません。これらの要件はそれぞれが独立して存在するのではなく、すべてを同時にクリアする必要があるため、申請のハードルが高くなっています。
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さらに、審査基準そのものが複雑で、多くの書類や証明が求められるケースが多く、申請者がこれらの情報を収集・整理する過程で行き違いが生じることも少なくありません。提出期限の逸失や適用除外という形で現れ、適切なサポート体制が整備されていないことも、給付金受給の難しさを増大させる要因となっています。
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新規就農給付金の申請には、青年等就農計画認定申請書の作成が必須となります。この計画書には、営農に関する目標や将来の構想、具体的な栽培内容などの項目を盛り込んだ経営指標を策定する必要があり、専門的な知識と綿密な計画が求められます。
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申請に必要な書類は多岐にわたり、青年等就農計画認定申請書、個人情報取り扱い同意書、本人の身分証明書は基本的な必須書類です。さらに、農地を所有または借りている場合は農地台帳、農業機械や施設を所有している場合は購入時の領収書や固定資産台帳、借りている場合は契約書の写しなど、就農状況を証明する様々な書類が必要になります。
参考)青年等就農計画制度(認定新規就農者)について/五條市
🔗 認定新規就農者制度の詳細について、農林水産省の公式サイトで申請様式や要件を確認できます。
農林水産省:認定新規就農者制度について
申請書類は作成前に必ず都道府県(普及指導センター)や認定主体の市町村等に相談することが推奨されており、これは申請プロセスの複雑さを物語っています。計画の作成から申請、審査、認定まで複数の段階を経る必要があり、各段階で関係機関からの助言を得ながら進める必要があるため、時間と労力がかかります。
新規就農給付金には厳格な返還規定が設けられており、一定の条件下では給付を受けた金額の全額返還を求められるケースがあります。特に注意すべきは、就農後5年以内に離農した場合は全額返還が求められる点です。この返還義務は、給付金が単なる支援ではなく、農業を継続する意志と能力を持つ者への投資である性質を反映しています。
参考)https://biei-agri-kikou.or.jp/kurasou/%E5%B0%B1%E8%BE%B2%E6%94%AF%E6%8F%B4%E7%AD%96.pdf
給付金の停止や返還を求められる具体的なケースとして、対象者の要件を満たさなくなった場合、農業経営を中止または休止した場合、研修を途中でやめた場合や研修状況報告をしなかった場合などがあります。また、親族から貸借した農地が主であり、給付期間中に当該農地の所有権を給付対象者に移転することを確約した場合で、実際に所有権の移転が行われなかったときも全額返還の対象となります。
参考)認定新規就農者になるデメリットトップ5
これらの返還リスクは、新規就農者にとって大きな心理的・経済的プレッシャーとなっており、給付金に頼りすぎることへの警鐘ともなっています。支援制度を活用すること自体は有益ですが、補助金や給付金に過度に依存することにはリスクがあり、給付期間には区切りがあることを念頭に置く必要があります。
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新規就農者が直面する最も大きな困難の一つが農地の確保です。「新規就農者の就農実態に関する調査結果」によれば、「農地の確保」に苦労したと回答した方の割合が72.8%と最も多く、次いで「資金の確保」が68.6%、「営農技術の習得」が57.7%の順となっています。
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農地確保が特に難しい理由として、貸す側からすると面識のない新規就農者に農地を貸し出すことへの抵抗感や、代々受け継いできた農地を手離すことへの心理的障壁があります。農地バンクやemaffナビの仕組みはあるものの、貸し主と新規就農者のマッチングが思うように進まないケースが多いのが現状です。
資金調達に関しても、給付金だけでは不十分であり、営農技術や栽培技術を持ち合わせているかどうか、青年等就農計画又は事業計画書の内容が資金獲得の判断基準となります。青年等就農資金は最大3,700万円まで無利子で借りられる融資制度ですが、この融資を受けるためには認定新規就農者であることが前提条件となっており、さいたま市役所から青年等就農計画認定書を受理してからでないと正式な手続きを開始できません。
参考)農業コンサルタントが教える 新規就農1年目のお金事情
🔗 新規就農時の資金調達方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事で融資制度や補助金の組み合わせ戦略を確認できます。
tochino:農業コンサルタントが教える 新規就農1年目のお金事情
給付金申請において、実務経験の有無は申請の成否に大きな影響を与えます。事業を遂行する上での経験がない場合、申請書類の作成や要件の解釈に誤りが生じやすくなり、過去に給付金や補助金の申請経験がある人とない人では、手続きへの慣れという点で大きな差が出ます。経験豊富な申請者は申請プロセスをスムーズに進行させることができるため成功する可能性が高まりますが、初心者は細部まで注意を払う必要があり、一筋縄ではいかないのが現実です。
また、給付金の受給において地域や作物ごとの差異も重要な要素となります。農業給付金の場合、特定の作物を栽培している地域の農家は有利であることが多く、その土地が有する気候や土壌の条件、作物の市場価値などが給付金の基準に組み込まれているためです。他の作物を栽培する農家や、条件の適合しない地域では給付金の受給が非常に困難になる場合があります。
土地・設備・研修状況の不備も審査で大きな減点要素になります。例えば「就農予定地の農地がまだ確保できていない」「研修実績が不十分」といった状況では、審査を通過することが難しくなります。これらの地域差や準備状況の差異をきちんと把握しておくことは、給付金の申請において不可欠といえるでしょう。
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補助金は「早いもの勝ち」の世界であり、いち早く情報をキャッチし、積極的に動かなければ採択されるのは難しいという現実もあります。限られた枠の中で、他の申請者との競争に勝つためには、事前の準備と戦略的なアプローチが求められます。
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