振動収穫機は、枝や幹など対象物を「把持」し、加振して果実を落下させる目的で使われる方式が代表的です。果実を落とすには、対象とする枝をつかむ部分(把持部)と、伸縮できる腕、そして振動を発生させる機構が要点になります。
研究例では、振動発生にスライダ・クランク機構を採用するなど、回転運動を往復運動へ変換して振動を作る考え方が示されています(果実用振動収穫機の開発研究)。
果実用振動収穫機の開発研究(1):振動発生機構(スライダ・クランク等)の考え方が確認できる
また、公的資料でも「枝に振動を与えて果実を落下させる」用途として振動収穫機が挙げられており、枝を加振するという基本原理自体は一貫しています。
収穫機技術の概要(国立国会図書館デジタル):枝へ振動を与えて落下させる説明部分の確認
現場で見落としがちなのは「強い振動=能率向上」ではない点です。枝・果柄・果実の状態が合わないと、落ちない果が残ったり、逆に過度に落ちて選別負担が増えたりします。そこで、振動は“作る強さ”より“狙って伝える条件”を詰めるほど、結果が安定します。
振動収穫は、成熟果が落ちやすい作物ほど省力化が進みますが、「青果向け」と「加工向け」で最適解が変わります。ブルーベリーの省力化資料では、ネット上に振い落として集める方法で収穫時間を削減できる一方、未熟果を含みやすく、選果(出荷調整)時間が増える点が明確に注意されています。
ブルーベリーの収穫作業省力化技術:振動収穫の時間削減と、未熟果混入・選果負担の留意点
同資料では、垣根仕立のようにネット設置がしやすい樹形が有効で、適する品種として ‘ティフブルー’ と ‘ボールドウィン’ が示されています。つまり「機械(手段)」だけでなく「樹形(前提条件)」を合わせると、振動収穫が現実的になります。
意外と効く現場のコツは、“1回の収穫量”を増やす運用設計です。資料でも「1回の収穫量が多いほど削減効果が大きい」傾向が示されており、収穫頻度・収穫タイミングの組み方が、省力化の効き目を左右します。作物によっては、収穫後の出荷調整の工程設計(洗浄・選別・異物除去)まで含めて、加工仕向け中心にする方が収支が合いやすいケースもあります。
振動収穫は「落下」させた後の回収が弱いと、結局人手が詰まり、期待した省力化が出ません。ブルーベリーの例では、ネット上に落とした果実を手桶で拾い集める工程まで含めて作業時間を評価しており、「落とした後の回収設計」が成果の中核になっています。
ブルーベリーの収穫作業省力化技術:ネット設置〜振い落とし〜拾い集めまでの作業時間評価
また、同資料は“加工向けで適する”という留意事項を明確にしています。理由は、振動収穫では裂果や虫害果、果汁滲出が混入し、正常果が汚染される場合があり、青果には不利になり得るためです(洗浄で加工仕向けは可能)。
ブルーベリーの収穫作業省力化技術:汚染・混入リスクと加工仕向けの扱い
ここでの実務ポイントは、品質を守るための「衝撃の逃がし方」です。例えば、落下先(ネット・シート)のたるみ量、目合い(4mm目など)、搬送・回収の動線で、果実同士の擦れや潰れが増減します。振動を弱めるより、落下後の“受け”を作り込む方が、品質と能率が同時に改善することがあります。
さらに、振動収穫は「葉・小枝・ゴミ」も一緒に落ちやすく、回収後に異物を除く工程がボトルネック化しがちです。選別工程を人手に寄せるのか、風選・ふるい等の簡易装置を入れるのかで、トータルの省力化が決まります。
振動収穫機は、作業者が振動にさらされる点で「振動障害」対策が重要です。振動工具(刈払機など)向けの安全衛生情報では、防振手袋の使用、身体を冷やさないこと、整備点検(ネジ類の緩み等)を徹底すること、そして振動ばく露時間を管理することが具体的に示されています。
振動障害の予防措置(刈払機):防振手袋・保温・点検・ばく露時間管理の具体策
振動収穫機でも同じ発想で、「防振(保護具)×時間(休憩)×点検(異常振動の芽を摘む)」の3点セットが基本になります。特に点検は、作業者の負担だけでなく、異常振動が作物や枝へ与えるダメージにも直結するため、結果として翌年以降の樹勢にも影響します。
現場での実装例としては、次のような運用が安全と能率を両立しやすいです。
「防振手袋はあるが使わない」「寒いが我慢する」「今日は忙しいから点検を飛ばす」——この3つが重なると、障害や事故が起きやすくなります。安全はコストではなく、作業継続のための“生産設備”だと捉える方が、結果的に得をします。
検索上位の説明は機械構造や省力効果に寄りがちですが、実務で差が出るのは「工程設計」です。ブルーベリー省力化資料が示す通り、垣根仕立のような樹形はネット設置を容易にし、振動収穫(振い落とし)と回収を成立させる前提条件になります。
ブルーベリーの収穫作業省力化技術:垣根仕立+ネット設置が振動収穫を成立させる点
この考え方を一般化すると、振動収穫機の導入検討は「機械選定」より先に、次の設計が要ります。
意外な盲点は、振動収穫の“弱点”を消そうとして機械側を盛りすぎることです。例えば「未熟果も落ちる」問題は、加振を弱めれば改善する場合もありますが、弱めると今度は残果が増え、結局手収穫を足して二度手間になることがあります。そこで、加工仕向けを混ぜる、洗浄工程を用意する、収穫間隔を調整するなど、工程側で吸収する方が、投資が小さく安定します(資料でも加工仕向けが適する旨が明示)。
ブルーベリーの収穫作業省力化技術:未熟果混入・汚染の留意と加工仕向けの適性
振動収穫機は単体で魔法の道具にはなりませんが、「樹形」「回収」「出荷調整」「安全管理」をセットで組むと、手作業中心の収穫から“工程としての収穫”へ移行できます。ここまで組み上がると、収穫期の人手不足にも、数字で対策を当てられるようになります。