SDGs目標2は「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」ことを掲げています。2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やしながら、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象に対する適応能力を向上させる強靭な農業の実践が求められています。
参考)目標2
農業業界は世界的な飢餓問題の解決において中心的な役割を担っています。世界では依然として8億人以上が飢餓に苦しんでおり、安定的な食料供給を実現するためには、小規模食料生産者の農業生産性と所得を倍増させることが重要なターゲットとなっています。
参考)農業とSDGsの関係性とは?持続可能な農業の取り組み事例を紹…
日本の農業従事者にとっても、SDGs達成は他人事ではありません。労働力不足や地球温暖化、将来的な食料不足などの課題解決のため、持続可能な農業への転換が必須となっています。気候変動への適応能力向上や土地と土壌の質の改善など、環境と生産性を両立させる取組が求められています。
参考)農業の持続性を求めて変わる世界の食料生産システム SDGs~…
環境保全型農業は、農業生産による環境への負荷をできる限り低減し、自然環境との調和を重視する農法です。具体的には、化学肥料や化学農薬の使用を減らし、遺伝子組み換え技術を利用しない生産方法を採用します。
参考)SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みについて
有機農業の取組では、単収は慣行栽培時に比べて約9割となる一方、販売価格は約1.6倍、収入は約1.4倍となる実績が報告されています。これは消費者の環境意識の高まりにより、有機農産物の市場価値が向上していることを示しています。環境保全型農業直接支払交付金などの支援制度も整備され、化学農薬を使用しない総合防除等の推進が進められています。
参考)第3節 農業生産活動における環境負荷低減の促進:農…
意外なことに、有機農業は単なる環境保護だけでなく、生物多様性の保全にも大きく貢献しています。化学肥料や農薬を使用しない農法は、土壌中の微生物や昆虫など多様な生きものとの調和を実現し、農地の生態系を豊かにします。これにより、長期的には土壌の質が向上し、持続可能な生産基盤を構築できるのです。
農林水産省の環境保全型農業直接支払交付金の詳細についてはこちら
スマート農業とは、AI・ロボット・ドローンなど最新のテクノロジーを活用して農作業を効率的に進める方法です。この技術革新は、農作業の省力化、身体的負担の軽減、経営管理の合理化といった効果をもたらすだけでなく、化学肥料や化学農薬の使用低減など環境負荷の軽減にも貢献します。
参考)特集3 スマート農業技術の活用と今後の展望:農林水…
具体的な活用例として、作物の形状や色から成長度合いを解析し、収穫時期を予測・判断するプログラムが実用化されています。また、過去数十年の気候情報や圃場の情報を組み合わせることで、どのような土地でも最適な栽培を行えるシステムも開発されています。ドローンやセンサー技術を用いた土壌水分動態の解析により、経験や勘に委ねられていた農業のノウハウが理論化され、データに基づく精密な農業管理が可能になっています。
参考)【SDGs NewsLetter】データやAIを活用した持続…
農林水産省では「戦略的スマート農業技術の実証・実装」事業を通じて、海外依存度の高い農業資材や労働力の削減、自給率の低い作物の生産性向上に必要なスマート農業技術の導入を支援しています。これらの技術は、日本国内だけでなく、世界の食料問題を解決する可能性を秘めた重要な取組です。
参考)戦略的スマート農業技術の実証・実装
気候変動は農業生産性に深刻な影響を及ぼしており、過去50年間で世界全体の農業生産性の伸び率が鈍化しています。干ばつや洪水などの極端な気象現象が増加する中、農業従事者には気候変動への適応能力を高めることが求められています。
参考)https://www.env.go.jp/content/000167604.pdf
品種改良による気候変動対応が効果を上げています。例えば、干ばつ耐性を持ったトウモロコシはアフリカの干ばつ環境下でも20~30%の増収が見込まれています。また、収穫量が高く、気候変動に強い品種への改良や、水を節約する技術・品種の開発も進められています。
興味深いことに、品種改良がされた米は1961年以降、収穫量が2倍以上に向上しています。これは単なる生産量の増加だけでなく、農地拡大を抑えることで森林と生物多様性を守る効果も生んでいます。栄養価が高く、安全性の高い品種や生産法の開発も並行して進められており、量と質の両面から食料安全保障に貢献しています。
環境省の気候変動適応に関する情報はこちらから確認できます
SDGs達成に向けた農業の取組として、地域の資源を活かした循環型農業システムの構築が注目されています。これは、単に環境負荷を減らすだけでなく、地域経済の活性化や雇用創出にもつながる革新的なアプローチです。
具体的な事例として、ソーラーシェアリングを活用した取組があります。農地に支柱を立てて上部で太陽光発電を行い、下部で農作物を生産するこの仕組みでは、発電した電気をハウス内の暖房に使用することで、年間約600万円の電気代削減に成功した事例が報告されています。これはエネルギーの地産地消を実現し、SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」にも貢献する取組です。
参考)農業におけるSDGsの事例!取り組み方も紹介|ESG・SDG…
さらに注目すべきは、農福連携による新たな価値創造です。障害者などの雇用を生み出すことで、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」や目標10「人や国の不平等をなくそう」の達成にも寄与しています。社会福祉法人と連携した農業生産の事例では、地域の課題を次々と解決しながら事業を拡大し、農業を通じた社会包摂を実現しています。
参考)【事例紹介】農福連携で事業を拡大し、地域に新たな価値を! 地…
食品ロスの軽減も重要な取組です。規格外農産物の有効活用や、収穫後の適切な管理により、SDGs目標12「つくる責任つかう責任」の実現に貢献できます。このように、農業従事者は環境、経済、社会の三側面から地域に新たな価値を生み出す重要な役割を担っています。
JAグループのSDGs取組事例一覧では全国の先進的な取組が紹介されています