飛行機の「ロケットスタート」は、航空ファンがそう呼ぶ“体感的な呼び名”で、手順としては「停止したままエンジンを強くしてからブレーキを離し、一気に加速する」離陸が中心です。札幌丘珠のように滑走路が1500mと短い空港では、こうした離陸を日常的に体験しやすい、と紹介されています。
通常の長い滑走路では、最初はエンジン推力を途中までにして滑走を始め、回転数が安定してから離陸推力へ上げることが多いとされます。ところが短い滑走路では、停止状態でフルに近い推力まで立ち上げるため、音・振動が最大になった直後に急加速が来て「ロケット」みたいに感じやすいのです。
参考リンク(短い滑走路の丘珠で「停止→フルパワー→ブレーキ解除」の離陸が説明されている部分)
https://trafficnews.jp/post/125264
「なぜいつもロケットスタートにしないのか?」の答えは単純で、いつも最大推力(TOGA)にすると、燃料消費が増え、エンジンへの負担も増えて経済的ではないからです。国内線などで離陸重量が比較的軽いケースでは、TOGAを使うと離陸距離や加速停止距離が“短くなりすぎて”滑走路を持て余すことがあるため、必要な範囲に収まるよう推力を絞って離陸することが多い、とパイロット向け解説で説明されています。
一方で、フルパワー(TOGA)が選ばれやすい条件も明確に挙げられています。離陸重量が重い、雪氷滑走路、強い背風、ウインドシアが予想される状況などでは、大きな推力が必要になり、結果として「体感ロケットスタート」に近づきます。
参考リンク(推力を絞る理由、TOGAを使う条件がまとまっている部分)
https://www.kobeairport.jp/pilot/3981/
ロケットスタートが「派手に見える」裏には、離陸の安全設計がきっちり存在します。離陸滑走中にはV1(離陸決心速度)、VR(ローテーション速度)、V2(安全離陸速度)という重要な速度があり、トラブル時に離陸を中断できるか/継続すべきかの判断軸になります。V1は特に、離陸中断(RTO)しても滑走路内で安全に停止できるように設定される、と説明されています。
さらに、V1直前で故障が起きて停止する想定の距離を「加速停止距離」と呼び、これと「(片発不作動を含む)離陸距離」が滑走路長に収まるよう性能計算される、というのが考え方です。短い滑走路の運用ほど「加速の立ち上げを良くする」「早い段階で必要な推力を確保する」方向に寄りやすく、結果としてロケットスタート的な感覚になりやすい、という理解がつながります。
意外と見落とされがちですが、「離陸の迫力」は空港周辺の騒音配慮とも関係します。離陸後、いつまでも離陸推力のまま飛ぶわけではなく、ギアを上げて上昇姿勢に移った後に推力をもう一段階絞り、さらにフラップを格納して加速しながら上昇していく、と説明されています。
そしてこの“推力を絞るタイミング”や“加速を始めるタイミング”は、騒音軽減のために空港・滑走路ごとに定められている場合がある(騒音軽減運航方式)とも紹介されています。つまり、同じ機材でも、空港や運航方式の違いで「最初だけ強烈に感じる」「意外と早く静かになる」など体感差が出る余地がある、ということです。
農業従事者向けに腹落ちしやすく言い換えると、ロケットスタートは「畑の条件が厳しい日に、最初からトラクターの出力を高めに固定して一気に仕事に入る」感覚に近いです。畑が狭い(=滑走路が短い)・ぬかるみ(=雪氷滑走路)・風が強い(=背風やウインドシア懸念)といった“条件の悪さ”があるほど、立ち上がりの失敗が致命傷になるので、最初から余力を厚めに確保する判断になりやすい、と整理できます。
また「燃料や機械の寿命を考えて、普段は必要十分の出力に落とす」という点も、現場の機械管理に似ています。飛行機も同じで、必要な安全マージンを満たしつつ、燃料とエンジン負担を抑えるために、いつも同じ迫力の離陸にはしない、という運航の合理性が見えてきます。