リバージェテーションと不耕起と被覆作物輪作

リバージェテーションを、土壌と被覆作物と輪作を軸に農業でどう実装するかを、手順と評価と失敗回避までまとめます。あなたの圃場ではどこから始めますか?

リバージェテーションと農業

リバージェテーションと農業:導入の要点
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狙いは「維持」より「再生」

土壌・水・生物の働きを回復させ、収量とコストの両方を中長期で安定させる考え方。

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手段は不耕起・被覆作物・輪作

一発逆転の技術ではなく、複数の手段を組み合わせて「土を壊さない」期間を増やす。

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評価は土壌・水・作業で見える化

土壌有機物、侵食、保水、作業時間、資材費など、現場で追える指標に落とし込む。

リバージェテーションの意味とリジェネラティブ

「リバージェテーション」は、現場では「荒れた状態を戻す」「土や植生を回復させる」という文脈で語られやすく、近年の農業トレンドである「リジェネラティブ(環境再生型)」と実務上ほぼ同じ方向を向きます。リジェネラティブは、単に環境負荷を減らして“これ以上悪化させない”のではなく、失われた機能を回復させ、より良い状態に押し上げるニュアンスが強いと整理されています。
農業でこれを言い換えると、「収量を守るために投入を増やす」から、「土壌の回復力を上げて投入の効き方を変える」へ重心を移すことです。土壌生態系(微生物や土壌動物)の働きが戻るほど、肥料や防除の“効かせ方”が変わり、同じ施肥設計でも効率が上がる場面が出ます。


注意点として、用語が一人歩きすると「無農薬」「無化学肥料」のように単一の条件だけが強調されがちです。しかし、再生型の中核は“結果として土が良くなる仕組み”であり、圃場の制約(病害虫、雑草、作型、気象、労働力)に合わせて段階的に組むのが現実的です。


参考:リジェネラティブの考え方(サステナブルとの違いの整理)
https://www.sustainablebrands.jp/news/1216950/

リバージェテーションの土壌と不耕起

土壌面でリバージェテーションを狙うとき、最も効きやすいレバーの一つが「不耕起(または省耕起)」です。耕さない期間が増えると、団粒構造が壊れにくくなり、表層が雨滴で叩かれて流れるリスク(侵食)や、乾燥の進み方が変わります。結果として、根が伸びる層が安定し、土壌中の炭素や水を保持する方向に寄せやすいと言われます。
ただし、不耕起は「耕うんをゼロにする」こと自体が目的ではありません。目的は、土が“毎回リセットされる状態”を減らし、微生物の住処と餌(有機物)が連続する環境をつくることです。特に日本のように降雨が多い地域では、耕うん直後の裸地期間が長いほど、雨で表土が動きやすくなるため、裸地時間の短縮が実利になりやすいです。


一方で、不耕起だけを先にやると、雑草管理が破綻して「結局、後追いで作業が増える」事故が起きます。導入初年度は、全面不耕起に振り切るより、圃場を区切って試す、または作期のどこか一部(例:秋冬の耕うん回数だけ減らす)から始め、作業時間・燃料・除草コストの差を記録する方が失敗しにくいです。


参考:不耕起・被覆作物・輪作など、再生型農業の代表要素
https://smartagri-jp.com/food/3028

リバージェテーションの被覆作物と輪作

被覆作物(カバークロップ)は、リバージェテーションの現場実装で“効きやすい”技術です。理由は単純で、土に根がある期間を増やし、地表を植物体で覆う時間を増やせるからです。裸地を減らすだけでも、雨で表土が跳ねる・流れる現象を抑えやすく、同時に根が土に有機物を供給し続けます。
輪作は、同じ圃場で同じ作物を続けることで起きる偏り(病害虫の連鎖、養分吸い方の偏り、根域の固定化)を崩すための設計です。輪作と被覆作物は相性が良く、たとえば「収穫後→被覆作物→次作」のように、作付けと作付けの隙間を“緑で埋める”と、土の回復速度が上がりやすいと言われます。


導入設計のコツは、被覆作物を「理想論の緑肥」ではなく「次作の作業を軽くする道具」として選ぶことです。具体的には、以下のように“困りごと起点”で決めると現場で続きます。


  • 雑草が強い圃場:地表被覆が早いタイプを選び、裸地期間を短縮する
  • 排水が悪い圃場:根が深く入るタイプを試し、表層の締まりを緩める方向を狙う
  • 肥料コストが課題:窒素固定系を組み込み、施肥設計の見直し余地をつくる
  • 乾燥が課題:被覆で地温・蒸発のブレを抑え、保水を助ける

また、輪作は「売れる作物」だけで組むと破綻しやすいので、収益作+土づくり作(あるいは被覆作物)をセットで考えると実装しやすいです。特に、作業ピークが重なる作型では、輪作の組み替えが“労働力の平準化”にも効き、経営面のメリットが出ます。


参考:不耕起・被覆作物・輪作を含む再生型農業の解説(日本の事例)
https://operationgreen.info/regenerative_agriculture_cases/

リバージェテーションの評価と指標

リバージェテーションは、理念だけだと続きません。農業従事者が継続できる形にするには、「どの数字が良くなれば成功か」を先に決め、現場で回る測り方に落とす必要があります。難しい分析機器がなくても、圃場で十分に追える指標があります。
おすすめは、土壌・水・作業の3系統で、短期と中長期を混ぜる方法です。短期指標がないと、再生の手応えが出る前に挫折しやすいからです。


  • 土壌(短期):降雨後のぬかるみ時間、作業機が入れるまでの日数、土の臭い(嫌気臭の有無)
  • 土壌(中長期):土壌有機物の推移、団粒の崩れ方、ミミズなど土壌動物の観察
  • 水(短期):強雨後の濁り水・流亡の有無、畦畔の崩れ、排水路への土の堆積
  • 水(中長期):保水の体感(乾きの速さ)、灌水回数の推移、表面クラストの発生頻度
  • 作業(短期):耕うん・除草・防除の作業時間、燃料、資材費
  • 作業(中長期):機械の稼働時間、外注費、ピーク作業の平準化

意外に効くのが「雨の翌日の圃場入り可否」を記録することです。土壌が良くなると“作業できる日が増える”ことがあり、これは収量や品質に直結します。数値化の例としては、「降雨量○mmの翌日にトラクタが入れた/入れない」「ハウス周辺の泥はねが減った」など、現場の意思決定に直結するメモが強いです。


さらに、再生の評価は「収量」だけで切らない方が安全です。初期は土が変わる過程で一時的に収量がブレる場合があり、そこで全否定すると、積み上げた改善がゼロになります。だからこそ、作業・コスト・圃場コンディションの指標を並走させ、経営として“勝てているか”を多面的に判断します。


リバージェテーションの独自視点:バイオレメディエーションと圃場

検索上位では、リバージェテーション=再生型農業(不耕起・被覆作物・輪作)として語られることが多い一方、現場で見落とされがちなのが「汚染・残留」という論点です。たとえば、油類やVOCなどの土壌汚染の浄化では、微生物の働きを使って分解を促進する“バイオレメディエーション”が技術として確立しています。これは農地の通常管理とは別文脈ですが、「土壌微生物を活かして土を回復させる」という発想は、再生型の延長線にあります。
ここから得られる実務的な示唆は、「微生物は勝手に増える」ではなく、「酸素・水分・栄養塩・温度など条件を整えると働きが変わる」という点です。バイオレメディエーションの施工法には、耕して処理するランドファーミング、盛土して通気を確保するバイオパイル、栄養剤を注入する方法などが整理されています。農業でも、土が嫌気に寄り過ぎる圃場では排水・通気を先に立て直す、分解が遅い圃場では炭素資材の入れ方(細かさ、混和の仕方)を変えるなど、「条件設計」を意識すると改善が速くなることがあります。


もちろん、農地で“浄化工法”をそのままやるわけではありません。独自視点として重要なのは、土づくりを「資材投入の量」ではなく「分解・循環が回る条件づくり」として捉えることです。被覆作物で根を入れる、輪作で餌の種類を変える、不耕起で住処を壊さない――これらはすべて、微生物の条件を整える行為でもあります。


参考:バイオレメディエーション(微生物や植物で土壌・地下水の汚染を修復する技術解説)
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=53
参考:バイオレメディエーション施工法(ランドファーミング、バイオパイル等の整理)
https://www.fudotetra-env.jp/soil-pollution-control/technology/oil/bioremediation.html