オーガニックランド陸前高田のワタミ農業復興モデルと体験施設

オーガニックランド陸前高田でのワタミによる農業復興モデルや循環型6次産業、ソーラーシェアリングなどの最新技術、そして体験型施設の全貌とは?農業従事者が注目すべきこの巨大プロジェクトの将来性と独自視点を徹底解説します。
オーガニックランド陸前高田の概要
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20年かけて育てる未来

東京ドーム5個分(約23ha)の広大な敷地で、20年という長期スパンで完成を目指す壮大な農業テーマパーク構想です。

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最新の営農モデル

根域制限栽培や大規模ソーラーシェアリングなど、被災地のハンデを克服し収益化する技術が集結しています。

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循環型6次産業化

生産から加工、販売、観光までを一貫して行う「ワタミモデル」で、地域資源を循環させる持続可能な農業を実現しています。

オーガニックランド陸前高田

オーガニックランド陸前高田のワタミ復興農業モデル

岩手県陸前高田市、かつて東日本大震災で甚大な被害を受けたこの地に、農業の新しい可能性を示す巨大な実験場が誕生しています。それが「ワタミオーガニックランド」です。外食大手ワタミグループが手掛けるこの施設は、単なる観光農園ではありません。
「命」をテーマにした循環型社会の縮図を作り上げるという、極めて野心的なプロジェクトです。農業従事者の皆様にとって、この場所は単なる企業の参入事例以上の意味を持ちます。それは、耕作放棄地や被災地といった「困難な土地」を、いかにして収益を生む農地に変え、さらに人を呼び込む観光資源へと昇華させるかという、現代日本の農業が抱える課題への一つの回答だからです。


敷地面積は約23ヘクタール、東京ドーム約5個分という広大さを誇ります 。しかし、驚くべきはその開発期間です。2021年4月のオープンはあくまで「始まり」に過ぎず、完成までには20年という長い歳月をかける計画が立てられています 。これは、短期的な利益回収を目的とした商業施設開発とは一線を画すアプローチです。土壌改良から植樹、施設の拡充に至るまで、自然の回復スピードに合わせて事業を進めるこの「時間軸の長さ」こそが、ワタミオーガニックランドの最大の特徴であり、持続可能な農業経営のヒントとなる部分です。


参考)ワタミオーガニックランド | ワタミオーガニック公式サイト

ここでは、農業を「第1次産業」として完結させるのではなく、地域全体を巻き込んだ復興のシンボルとして位置づけています。被災した土地を利用するということは、塩害や瓦礫の影響など、通常の農地開拓よりもはるかに高いハードルが存在します。それでもワタミがこの地を選んだのは、グループ創業者である渡邉美樹氏の「復興支援」への強い想いと、これからの農業には「物語(ストーリー)」が必要だという経営判断があるからです 。農業従事者の皆様も、自身の農産物にどのような物語を付加できるか、この大規模なモデルケースから学べる点は多いはずです。


参考)ワタミがオーガニックを目指した理由 | ワタミオーガニック公…

また、このプロジェクトは「SDGs未来都市」に選定されている陸前高田市の地域戦略とも深く結びついています 。一企業単独の利益追求ではなく、行政や地域住民と連携し、「農業を核としたまちづくり」を推進している点は見逃せません。雇用創出はもちろん、関係人口の増加を狙ったこのモデルは、過疎化に悩む全国の農村地域にとって、希望の光となる可能性を秘めています。


参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000676.000009215.html

ワタミオーガニックランド公式サイト:20年計画の全体像とコンセプト

オーガニックランド陸前高田の循環型6次産業施設

農業経営の安定化において、生産・加工・販売を一体化する「6次産業化」は重要なキーワードです。ワタミオーガニックランドは、この6次産業化を「ワタミモデル」として極めて高いレベルで具現化しています 。ここでは、畑で作物を育てるだけでなく、その場にある加工施設やレストラン、ショップが有機的に連携し、付加価値を最大化する仕組みが整えられています。


参考)ワタミオーガニックランド

具体的には、施設内の農場で収穫された有機野菜は、そのまま併設されたレストランやカフェでメニューとして提供されます。例えば、オーガニック野菜をふんだんに使ったハンバーガーや、とれたてのハーブティーなどは、来場者にとって「ここでしか味わえない体験」となり、農産物の価値を市場価格以上に引き上げることに成功しています 。さらに注目すべきは、レストランから出る調理残渣(生ごみ)を決して無駄にしない点です。これらは堆肥化され、再び農場の土づくりに活用されます 。


参考)陸前高田ワタミオーガニックランド (@rikuze…

この「地域内資源循環」の徹底こそが、ワタミオーガニックランドの真骨頂です。外部から肥料を購入するコストを削減しつつ、廃棄物処理のコストも抑える。そして、そのプロセス自体を「環境に優しい取り組み」としてブランディングし、消費者にアピールする。この経済合理性と環境配慮の両立は、肥料価格の高騰に苦しむ多くの農業経営者にとって、非常に参考になるモデルではないでしょうか。


また、施設内には手ぶらで楽しめるBBQ施設も完備されており、これも強力な収益源となっています。農産物を単体で売るのではなく、「食事をする空間と時間」を売ることで、客単価を大幅に向上させています。農業従事者が直売所経営などを行う際、単に野菜を並べるだけでなく、その場で調理して食べられる「体験」をセットにすることが、いかに収益性に貢献するか、この施設の盛況ぶりが証明しています。


さらに、加工品開発においても、ワタミグループの広範なネットワークが活かされています。規格外品も含めて加工品として商品化し、施設内のショップやECサイトで販売することで、フードロスを極限まで減らす努力がなされています。これは、生産ロスに悩む小規模農家にとっても、加工連携や販路拡大のヒントとなるでしょう。


ワタミグループ:循環型6次産業モデルの詳細解説

オーガニックランド陸前高田のぶどうとソーラーシェアリング

農業技術の視点からワタミオーガニックランドを見た際、最も注目すべき取り組みの一つが、「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」「根域制限栽培」を組み合わせたぶどう栽培です 。これは、被災地という厳しい環境条件を逆手に取った、極めて合理的な営農スタイルと言えます。


参考)農業

まず「根域制限栽培」についてですが、これは地面に直接植えるのではなく、防根シートなどで区切った限られた土量の中で作物を育てる技術です。陸前高田のこの地は、津波による塩害や土壌流出の影響を受けており、そのままでは果樹栽培に適さない可能性がありました。しかし、根域制限栽培を導入することで、土壌条件に左右されずに高品質なぶどうを栽培することが可能になります。また、水分や養分の管理がしやすいため、糖度の高い良質なぶどうを安定的に生産できるというメリットもあります。これは、耕作不適地を抱える農家にとって、非常に勇気づけられる技術事例です。


そして、そのぶどう棚の上部空間には、大規模な太陽光パネルが設置されています。これが「ソーラーシェアリング」です。ワタミオーガニックランドでは、農地の上で電気を作り、その売電収入を農業経営の安定化に充てています 。農業収入は天候や市場価格に左右されやすい不安定なものですが、売電収入という固定収入があることで、経営のリスクヘッジが可能になります。特に、ぶどうのような果樹は成木になるまで数年を要し、その間の収入確保が課題となりますが、ソーラーシェアリングはその「無収入期間」を支える強力な柱となり得ます。


参考)https://www.jpea.gr.jp/wp-content/uploads/solarweekaward2023_iwate_rikuzentakata.pdf

さらに、この施設では発電した電力を施設内で使用するだけでなく、災害時の非常用電源としても地域に提供する計画を持っています。これにより、地域社会にとっての「農業施設の価値」が飛躍的に高まります。単に作物を生産する場所から、エネルギー拠点、防災拠点へと役割を拡張しています。


また、ここでは「0(ゼロ)からワインをつくる会」というプロジェクトも進行しており、苗木のオーナー制度を導入しています 。消費者を「生産のプロセス」に巻き込むことで、収穫前の段階から資金とファンを獲得するこの手法は、果樹農家にとって模倣しやすいマーケティング手法と言えるでしょう。

ソーラーシェアリング事例紹介:設備容量と発電計画の詳細

オーガニックランド陸前高田の体験ツアーとイベント

現代の農業において、消費者を農地に呼び込む「アグリツーリズム」の重要性は高まる一方です。ワタミオーガニックランドは、この「体験」を商品化することに長けています。ここでは、単なる収穫体験にとどまらず、植樹祭や音楽イベント、ワークショップなど、年間を通じて多種多様なイベントが開催されています 。


参考)シャインマスカット植付けイベント

例えば、シャインマスカットの植え付けイベントでは、参加者が自分で苗を植え、名札を付けることができます。これにより、参加者は「自分の木がある場所」として、この地に愛着を持ち、リピーターとなる可能性が格段に高まります。一度きりの観光客を、継続的なファン(関係人口)に変える巧みな仕掛けです。農業従事者の皆様も、援農ボランティアを募集するだけでなく、こうした「オーナーシップ」を感じさせるイベントを企画することで、より深い顧客関係を築くことができるはずです。


また、野外音楽堂の設置計画や、各種フェスティバルの開催は、農業に興味のない層を引き寄せるフックとして機能しています 。普段は土に触れることのない都市部の若者や家族連れが、音楽や食イベントを目的に来場し、結果として農業の魅力に触れる。この「入り口の広さ」が、従来の観光農園との大きな違いです。「農業×音楽」「農業×アート」といった異分野との掛け合わせは、集客の幅を広げるための重要な戦略と言えます。

さらに、教育旅行や企業の研修受け入れにも力を入れています。SDGs学習プログラムとして、学生や企業人が農業体験や復興学習を行う場を提供しています 。これは、平日や農閑期の稼働率を上げるための有効な手段です。農業が持つ「教育的価値」や「チームビルディング効果」をサービスとして提供することで、農産物販売以外の収益源を確保しています。

施設内での「手ぶらBBQ」やキャンプ場の運営も、滞在時間を延ばし、消費額を増やすための重要な要素です 。農業従事者が六次産業化を考える際、どうしても「加工品の販売」に目が行きがちですが、ワタミオーガニックランドの事例は、「農村という空間そのもの」に価値を持たせ、時間消費型のビジネスモデルを構築することの有効性を教えてくれます。

イベント事例:シャインマスカット植え付け体験の実際

オーガニックランド陸前高田の命を巡る土づくりと独自視点

検索上位の記事ではあまり深く触れられていませんが、ワタミオーガニックランドの取り組みの中で、農業従事者として特に注目すべき独自視点は、その徹底した「土づくり」への哲学と、地域資源である「牡蠣殻」などの活用可能性、そして「アートと生物多様性」の融合です。


まず土づくりに関してですが、ワタミファームでは「土壌の団粒構造」を作ることを最重要視しています。有機物を投入し、微生物を多様化させることで、保水性と排水性を兼ね備えた「健康な土」を育てています 。特筆すべきは、陸前高田という土地柄を活かした資材の活用です。三陸海岸は牡蠣の養殖が盛んであり、地域からは大量の「牡蠣殻」が排出されます。ワタミオーガニックランドの掲げる「地域資源循環」の文脈において、この牡蠣殻(ミネラル豊富な石灰資材)や、地元の木質チップなどを堆肥やマルチング材として活用する試みは、地域課題(廃棄物処理)の解決と農業生産性の向上を同時に達成する、真のSDGsモデルと言えます。


参考)自然の”循環”が育む土 | ワタミオーガニック公式サイト

また、施設内には「種アート」や、害獣として駆除された鹿の皮を利用した「鹿革クラフト」など、命の循環をテーマにしたアート作品やワークショップが存在します 。これは一見、農業とは無関係に思えるかもしれません。しかし、農業とは本来、人間の都合で選別された作物だけでなく、雑草や虫、野生動物など、多様な命と向き合う営みです。ワタミオーガニックランドでは、駆除された鹿の命さえも無駄にせず、「革」として資源化し、それを学ぶコンテンツにしています。

この「命を無駄にしない」という哲学は、現場の農業従事者の心に深く響くものではないでしょうか。規格外野菜の廃棄、鳥獣被害による駆除など、農業の現場には「捨てられる命」が多く存在します。それらを「資源」や「アート」、「教育素材」として捉え直すことで、新たな価値を生み出すことができる。ワタミオーガニックランドの事例は、農業が単なる食料生産産業から、生命倫理や環境哲学を伝える「文化的産業」へと進化できる可能性を示唆しています。


さらに、20年後を見据えた植樹活動では、単に果樹を植えるだけでなく、防風林や景観形成としての樹木も植えられています。これにより、農地の中に多様な生態系(ビオトープ)が形成され、害虫の天敵となる益虫が増えるなどの生物的防除効果も期待できます。近代農業が失ってしまった「里山の機能」を、大規模な資本投下によって人工的に、しかし時間をかけて再生しようとしています。


結論として、オーガニックランド陸前高田は、ワタミという大企業のプロジェクトでありながら、その本質は「土への回帰」と「地域との共生」という、農業の原点にあります。ここで実践されている技術や経営手法、そして哲学は、規模の大小に関わらず、すべての農業従事者にとって、これからの時代を生き抜くための重要な指針となることでしょう。


ワタミの土づくり哲学:微生物と循環のメカニズム