ミルカー牛の搾乳手順と洗浄点検管理

ミルカー牛の搾乳手順・洗浄・点検管理を、乳房炎予防と乳質向上の観点で整理します。前搾りの時間、ライナー交換、洗浄温度など「効くポイント」を現場目線で確認しませんか?

ミルカー牛の搾乳

ミルカー牛の搾乳で外せない3要点
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装着タイミングを固定する

前搾り(乳頭刺激)から1分〜1分30秒で装着すると、射乳ホルモンの波に合わせやすく、空搾りや搾り残しを減らしやすいです。

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洗浄は温度・濃度・接触時間

アルカリと酸を役割で使い分け、60〜80℃など適正温度、殺菌は200ppm・3分以上など「条件」を守るほど再汚染を抑えやすくなります。

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ライナー劣化は乳頭と乳質に直撃

ライナーは唯一乳頭に接する消耗部品で、形状変化やクラックは細菌リスクと搾乳性の両方を悪化させるため、回数管理で交換計画を作ります。

ミルカー牛の搾乳手順と前搾り


搾乳の再現性は「誰がやっても同じ順序・同じ時間」で決まります。兵庫県の乳質改善マニュアルでは、前搾り(乳頭刺激)からミルカー装着までの時間が重要で、オキシトシン放出がピークに達するまで1〜2分かかる点を前提に、装着タイミングを一定にそろえることが示されています。
前搾りは乳頭1本につき4〜5回しっかり行い、ストリップカップでブツや血乳などの異常を確認し、牛床へ搾り捨てないことがポイントです。

乳頭清拭は「側面をねじるように拭く」「上下にしごかない」「乳頭口を丁寧に拭く」など、乳頭口の衛生に集中した手順が推奨されています。

装着が早すぎると、射乳が追いつかず流速がいったん落ちる“二度降ろし(バイモダリティ)”が起き、搾乳開始直後に空搾り状態が生じて乳頭へ負荷になりやすい、と整理されています。

逆に遅すぎると、オキシトシン放出が減ることで流速が落ち、乳量の減少や過搾乳の危険が増える、という考え方も示されています。

現場で迷いやすいのは「刺激の強さ」より「時間のブレ」です。目安として、前搾り開始→清拭→乳頭口清拭→1分〜1分30秒で装着、という“時計で測れる基準”に寄せると、教育と品質管理が一気に楽になります。

ミルカー牛の乳頭清拭と乳房炎

乳房炎は病原体だけでなく、搾乳時の乳頭へのストレス(空搾り、スリップ、過搾乳)でも起点が作られます。兵庫県のマニュアルでは、搾乳中のライナースリップに素早く対処すること、そして装着タイミングの均一化を重視しています。
また、牛が恐怖や痛みを感じるとアドレナリンが出て、オキシトシンの働きが抑制されるため、搾乳環境(大きな音、威嚇する声、叩くなど)が射乳の邪魔になる点も明記されています。

つまり「静かに、一定の手順で、乳頭に余計な負荷をかけない」が乳房炎予防の土台です。

チェックしやすい実務ポイントを、作業者用に短く落とすと定着します。


✅ 乳房炎・乳質を守るチェック(例)

  • 搾乳手袋を必ず着ける(手のしわの細菌は落ちにくい)。​
  • タオルは一頭一布以上、保管はフタ付き容器で増菌を避ける。​
  • 汚れが多い日はタオルを追加し、乳頭口だけは必ず丁寧に。​

「清拭はしているのに乳房炎が減らない」場合、清拭そのものよりも、装着が早い/遅い、スリップを放置している、離脱が遅い(過搾乳気味)など、“ミルカーのかけ方”側に原因が残っていることが多いです。

ミルカー牛の洗浄と生菌数

洗浄は「見た目がきれい」では不十分で、細菌の住みかを作らない条件設計が重要です。酪農総合研究所の技術資料では、洗浄不良を放置すると落ちにくい汚れが搾乳機器に付着し、細菌のすみかになって新鮮乳を汚染し、生菌数増加の一因になると述べています。
同資料では、バルク乳で生菌数1万/ml以上の場合、潜在性乳房炎牛が多い、または搾乳・洗浄システムのどこかに問題がある可能性がある、という目安も示されています。


参考)https://www.rakusouken.net/technology/pdf/371.pdf

さらに、ミルカーの自動洗浄の基本として、搾乳終了直後に残乳をエアで回収し、スポンジを使わない(細菌の巣になり得る)ことが挙げられています。

洗剤は「アルカリ=脂肪・蛋白」「酸=ミネラル」で、役割が違うため両方が必要、酸洗浄のときもアルカリ洗浄を実施する、という整理がされています。

洗浄条件として、洗浄温度は60〜80℃、殺菌は次亜塩素酸ソーダを200ppm(6%溶液なら300倍希釈)にし、接触時間は3分以上など、数値条件が具体的に示されています。

意外と盲点になりやすいのが「洗いにくい部位」です。同資料の拭き取り検査の例では、バケットミルカーならミルククロー部・運搬バケツ・チューブ、パイプラインならミルクタップやミルククロー部、さらにスポンジ等が汚れやすいとされ、洗浄しにくい・忘れやすい・汚れていても使用できる部位ほど要注意と説明されています。

現場での改善は、1回の大改革より「毎回の行程固定」と「分解手洗浄の曜日固定」が効きます。例えば、毎日:外側洗浄+循環洗浄、週1:ミルクタップ等の分解、集乳後:バルクの排出口コック分解、のように、資料の考え方に沿ってルール化すると見落としが減ります。

参考:洗浄温度・濃度・接触時間、洗浄不良になりやすい部位、スポンジ非推奨など(洗浄の基準づくり)
酪農総合研究所 技術資料「乳汁中の生菌数を増やさないために」

ミルカー牛のライナー交換と点検管理

ライナーはミルカーの中で唯一、牛の乳頭に直接触れる部品なので、劣化が乳頭ダメージと乳質に直結します。オリオン機械の解説では、毎日の搾乳で同じ動きを繰り返すうちにライナーの「つぶれ圧」が低下し、乳頭に影響するため、牛の健康維持のためにも定期交換が重要としています。
同ページでは、使用が進むとライナーが伸びて形状が楕円化し、古くなると内部にクラック(小さなひび割れ)が発生し、クラック内の汚れが細菌数増加につながる、と具体的に説明されています。


参考)ライナー交換の重要性とシリコーン製ライナーのメリット

「洗っているのに菌が増える」ケースで、実はライナー内部の微細クラックが温床になっていることは、現場だと見落とされがちなポイントです。

交換計画は、感覚ではなく「搾乳回数」で数式化できます。オリオン機械では、合成ゴム製の例として(1500回×ユニット台数)÷(搾乳頭数×搾乳回数/日)=交換日数、シリコーン製の例として(3000回×ユニット台数)÷(搾乳頭数×搾乳回数/日)=交換日数、という算出方法を提示しています。

さらに、シリコーン製ライナーは柔軟性が高く劣化しにくい特長から、合成ゴム製に比べて性能が長く持続する(当社比)こと、乳頭への追従性が高くダメージ軽減、ライナースリップが起こりにくく搾乳時間短縮やピーク流量増加が期待できる、といった実務メリットも整理されています。

搾乳性の改善を狙うなら、真空やパルセータ調整の前に「ライナーを新品基準に戻す」だけで波形が整うことがあり、投資効率が高い打ち手になり得ます。

参考:ライナーの劣化(つぶれ圧低下・クラック)と、回数による交換日数の算出式(交換計画の作り方)
オリオン機械「ライナー交換の重要性」

ミルカー牛の独自視点:作業者の標準化と教育

搾乳の改善は、機械の更新より先に「人のブレ」を潰すほうが成果が出やすい場面があります。兵庫県のマニュアルでも、誰が搾っても同じ手順かつ適正タイミングで装着できるようにすること、分業すると装着タイミングの適正化と均一化が図りにくいことがある、と注意点が書かれています。
この考え方を、牛舎の教育に落とす方法として「秒単位の標準」を作るのが有効です。例えば、前搾り開始から装着までの目標を“90秒”に固定し、遅れた理由を「清拭やり直し」「牛が暴れた」「ユニット移動が遠い」など作業要因に分解すると、機械のせいにせず改善点が見える化します。

さらに、洗浄も同じで「温度・濃度・接触時間」を紙に書いて貼るだけで、担当者が変わっても品質が落ちにくくなります。酪農総合研究所の資料は、洗浄温度60〜80℃、殺菌200ppm、接触3分以上など条件が具体的なので、現場掲示物の“数字の根拠”に使いやすいです。

✅ 教育・標準化の小ワザ(現場で続く形)

  • 砂時計やタイマーで「前搾り→装着」だけ測る(1分〜1分30秒を狙う)。​
  • ライナー交換は“日付”でなく“回数”で管理し、算出式で次回日を出す。​
  • 洗浄は「アルカリ→酸」の順序を固定し、温度と濃度を記録する。​

この3点を回し始めると、乳房炎が減る・生菌数が下がるだけでなく、「新人が入っても乳質が乱れにくい」という経営上の強さに変わっていきます。rakusouken+1​




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