充填剤の種類とシーリング材の選び方、補修用途を解説

農業施設の補修に欠かせない充填剤。その種類やシーリング材との違い、正しい選び方をご存知ですか?本記事では、基本からプロの技まで徹底解説。あなたの悩みを解決する最適な一本が見つかるかもしれません。

充填剤の種類と適切な選び方

この記事でわかること
充填剤の基本

シーリング材やコーキング材、パテとの明確な違いを理解できます。

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成分別の特徴

シリコン、変成シリコンなど、主要な種類ごとの長所・短所がわかります。

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実践的な使い方

農業施設での具体的な補修方法や、耐久性を高めるプロの技を学べます。

充填剤の基本!シーリング材とコーキング材、パテとの違い

 


農業を営む上で、施設の維持管理は欠かせない重要な作業です。ビニールハウスの隙間、倉庫の壁のひび割れ、農業機械の部品の固定など、様々な場面で「何かを埋める」作業が発生します。その際に使われるのが「充填剤」ですが、ホームセンターに行くと「シーリング材」「コーキング材」「パテ」といった類似品が並んでおり、どれを選べば良いか迷った経験はないでしょうか。これらの材料は、実はそれぞれに異なる定義と役割があります。

まず、これらすべてを包括する言葉が「充填剤(じゅうてんざい)」です。これは文字通り、隙間や穴を「充填する(埋める)」材料の総称を指します。その中でも、特に建材の目地や隙間を埋め、防水性や気密性を確保する目的で使われるペースト状の材料が「シーリング材」です。

では、「コーキング材」とは何でしょうか。実は、現在のJIS(日本産業規格)では「コーキング材」という分類は存在せず、「シーリング材」に統一されています。しかし、慣習的に、古くからある油性のコーキング材や、硬化後も弾性を持たない、あるいは弾性が少ない材料を指して「コーキング材」と呼ぶことがあります。一般的に、シーリング材は硬化後もゴムのような弾性を保ち、建物の動きに追従する能力(ムーブメント追従性)が高いのが特徴です。

一方、「パテ」は主に下地処理に使われる材料です。壁の穴やへこみ、段差を埋めて平滑にすることが主な目的で、硬化後は硬くなるものが多く、弾性は期待できません。そのため、動きのある目地には不向きですが、硬化後に研磨したり塗装したりする作業に適しています。

まとめると、以下のようになります。

     

  • 充填剤: 隙間を埋める材料の総称。
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  • シーリング材: 弾性を持ち、防水・気密目的で目地や隙間に使う。建物の動きに追従する。
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  • コーキング材: シーリング材の俗称。特に油性で弾性が少ないものを指すことがある。
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  • パテ: 主に下地処理用。硬く固まり、平滑な面を作るのに使う。弾性はない。

このように、それぞれの特性を理解することが、適切な材料選びの第一歩となります。

シーリング材の規格や歴史について、より専門的な情報が記載されています。
日本シーリング材工業会 - シーリング材の歴史

充填剤の主要な種類と成分別特徴(シリコン・変成シリコン・ウレタン)


充填剤、特にシーリング材は、主成分によって様々な種類に分けられ、それぞれに得意なこと、不得意なことがあります。農業施設の補修という観点から、代表的な3つの種類「シリコン系」「変成シリコン系」「ポリウレタン系」の特徴を詳しく見ていきましょう。

シリコン系シーリング材


最も身近で安価なシーリング材です。耐水性、耐熱性、耐候性に非常に優れており、特にガラス周りや水回りの補修で絶大な信頼性を誇ります。農業場面では、ビニールハウスのガラス部分や、洗い場のシンク周りの防水処理などに適しています。

     

  • 長所: ✅ 耐久性が高い、✅ 耐水・耐熱・耐候性に優れる、✅ 価格が安い
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  • 短所: ❌ 塗装ができない(塗料を弾く)、❌ 周囲を汚染(シリコンオイルが染み出す)することがある、❌ 多くのプラスチックには接着しにくい

注意点として、シリコン系を使った部分に後から塗装をすることは基本的に不可能です。もし塗装を考えている場所であれば、シリコン系の使用は避けるべきです。

変成シリコン系シーリング材


「万能タイプ」として近年主流になっているのが、この変成シリコン系です。シリコン系の耐久性と、後述するウレタン系の塗装性を併せ持つ、いわば「良いとこ取り」のシーリング材です。

     

  • 長所: ✅ 多くの素材(金属、プラスチック、モルタル等)によく接着する、✅ 塗装が可能、✅ 耐候性が良好
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  • 短所: ❌ シリコン系に比べると価格がやや高い、❌ プライマー(下塗り材)が必要な場合がある

農業倉庫のトタン屋根や外壁のひび割れ、異種材料(例えば金属とコンクリート)が接する部分の補修など、幅広い用途に対応できます。ただし、最高の性能を発揮するためには、接着する面に応じた「プライマー」と呼ばれる下塗り材の塗布が推奨されることが多いです。

ポリウレタン系シーリング材


主にコンクリートの目地に使われるシーリング材で、弾力性と密着性に優れています。硬化するとゴムのような強い弾性を持ち、コンクリートの膨張や収縮によく追従します。

     

  • 長所: ✅ 弾力性が高く、密着性に優れる、✅ 塗装が可能、✅ 硬化が比較的速い
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  • 短所: ❌ 紫外線に弱い(塗装で保護する必要がある)、❌ シリコン系に比べ耐水性が劣る

農業倉庫の床や、コンクリート製の用水路の亀裂補修などに適しています。ただし、紫外線に当たると劣化しやすいため、屋外で使用する場合は必ず上から塗装して保護する必要があります。このひと手間を惜しまないことが、長持ちさせる秘訣です。

以下の表に、これらの特徴をまとめました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

種類 主な長所 主な短所 塗装の可否 主な用途
シリコン系 高耐久、高耐水、安価 塗装不可、汚染性 ❌ 不可 ガラス周り、水回り
変成シリコン系 万能、広範な接着性 比較的高価 ✅ 可能 外壁、屋根、金属
ポリウレタン系 高弾性、高密着性 紫外線に弱い ✅ 可能(推奨) コンクリート目地

充填剤の用途に合わせた選び方と塗装の可否


充填剤(シーリング材)の性能を最大限に引き出すには、その場所の「用途」と「環境」を正確に把握し、最適な種類を選ぶことが何よりも重要です。特に、後から塗装するかどうかは、材料選定における大きな分岐点となります。

塗装が不要な場所


ガラス周りや浴室、キッチンのシンク周りなど、塗装を前提としない場所には、耐水性と耐久性に優れたシリコン系が最適です。クリア(透明)や白色だけでなく、アイボリー、グレー、黒などカラーバリエーションも豊富なので、補修箇所の見た目に合わせて選ぶことができます。ただし、前述の通り、シリコンオイルが染み出して周囲を汚染する「オイルブリード」という現象を起こす可能性があるため、汚したくない石材や外壁には使用を避けるのが賢明です。

塗装が必要な場所


外壁のひび割れ(クラック)補修や、サイディングの目地など、後から壁全体と一緒に塗装する可能性がある場所には、塗装が可能な変成シリコン系またはポリウレタン系を選びます。

     

  • 変成シリコン系: 紫外線に強く、上塗り塗料との相性も比較的問わないため、非常に使いやすいです。金属製の屋根や外壁、様々な素材が混在する場所の補修にも向いています。まさに「迷ったらコレ」と言える選択肢ですが、価格が少し高い点がデメリットです。
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  • ポリウレタン系: コンクリートとの密着性が非常に良いため、コンクリートやモルタルの補修に最適です。ただし、紫外線に弱いため、屋外で使用する場合は塗装による保護が必須です。塗装をしないと、数年で劣化し、ひび割れたり剥がれたりする原因となります。

意外な落とし穴:アクリル系


ホームセンターで安価に手に入るものに「アクリル系」のコーキング材があります。これは水性で扱いやすく、塗装も可能ですが、硬化後の肉やせ(体積が減少すること)が大きく、耐久性や耐水性も他の成分に比べて劣ります。ALC(軽量気泡コンクリート)の目地など、室内側の動きの少ない場所での使用に限定するのが良いでしょう。雨水に当たる場所や、動きの大きい場所には適していません。

シーリング材と塗装の関係について、専門的な化学的知見から解説されています。
関西ペイント 技術報告 - シーリング材汚染とその対策

充填剤を使った農業用施設の補修テクニックと注意点


農業現場では、多種多様な施設の補修に充填剤が活躍します。ここでは、具体的な施設や設備ごとに、適切な充填剤の選び方と施工のコツを紹介します。

ビニールハウスの補修


ビニールハウスのフィルム(POフィルムや塩ビフィルム)が破れた場合、充填剤で直接埋めるのは得策ではありません。フィルム自体が動き、温度変化で伸縮するため、充填剤では追従しきれずに剥がれてしまう可能性が高いです。このような場合は、専用の補修テープを使用するのが最も確実です。

充填剤の出番は、ハウスの基礎部分です。コンクリート基礎に生じた小さなひび割れであれば、ポリウレタン系変成シリコン系が有効です。特に動きのある目地には、弾力性の高いポリウレタン系が適しています。また、パイプと基礎の取り合い部分など、異種材料が接する箇所の隙間を埋めるには、接着範囲の広い変成シリコン系が活躍します。

農業倉庫・作業場の補修

     

  • 屋根・外壁(トタン・ガルバリウム鋼板): 金属屋根の継ぎ目や釘穴からの雨漏りには、金属への密着性が良く、耐候性にも優れた変成シリコン系が第一選択です。補修箇所はワイヤーブラシなどでサビや古い塗膜をしっかり落としてから施工しましょう。
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  • コンクリート床のひび割れ: 荷物の運搬などで負荷がかかる床のひび割れには、硬化後に強度が出るエポキシ樹脂系の充填剤やパテが適しています。幅の広いひび割れの場合は、U字にカットして溝を広げ、奥までしっかり充填するのが長持ちさせるコツです。
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  • 窓枠周り: 倉庫の窓枠と壁の隙間からの雨水の侵入は、建物の寿命を縮める原因になります。外壁がモルタルやサイディングなら変成シリコン系、もし塗装の予定が全くないアルミサッシ周りならシリコン系も使用可能です。

農業機械の応急処置


トラクターやコンバインのキャビンの窓ガラスとゴムパッキンの隙間から雨漏りする場合、応急処置としてシリコン系シーリング材(ガラス用)を少量充填することがあります。ただし、これはあくまで一時的な対策です。また、エンジン周りなど高温になる部分には、通常のシリコン系ではなく、耐熱シリコン(液体ガスケット)を使用する必要があります。間違った使い方をすると、重大な故障につながるため、機械の補修は専門家の指示を仰ぐのが原則です。

どのような場所を補修するにしても、最も重要なのは「下地処理」です。補修箇所の汚れ、油分、水分、古い充填剤などを徹底的に除去することが、充填剤の密着性を高め、本来の性能を発揮させるための鍵となります。

充填剤の耐久性を高める意外な下処理と保管方法


せっかく高価な充填剤を使っても、数年で劣化してしまっては意味がありません。充填剤の寿命は、実は施工前の「下準備」と、使い切れなかった材料の「保管方法」に大きく左右されます。プロが実践している、耐久性を格段に向上させるための、あまり知られていないコツを紹介します。

① 3面接着を避ける「ボンドブレーカー」


シーリング材を充填する目地には、理想的な動きがあります。それは、左右の2つの面が伸び縮みすることです。しかし、目地の底にもシーリング材が接着してしまう「3面接着」の状態になると、動きが拘束されてしまい、左右の面から剥がれたり、シーリング材自体が破断したりする原因になります。これを防ぐために、目地の底に貼るのが「ボンドブレーカー」と呼ばれるテープです。これにより、意図的に底面を接着させず、シーリング材が自由に伸縮できる「2面接着」の状態を作り出すことができます。これは、特に動きの大きいサイディングの目地などで非常に重要な工程です。

② プライマーは「ケチらず、塗りすぎず」


プライマーは、充填剤と被着体(接着される側)との密着性を高めるための「接着剤の接着剤」のようなものです。「変成シリコンならプライマー不要」と書かれていることもありますが、それは理想的な条件下での話。特にコンクリートや木材など、水分を吸い込みやすい素材や、経年劣化した素材には、プライマーの使用が強く推奨されます。薄く均一に塗り、指で触れてもベタつかない程度に乾燥させてから充填するのがポイントです。塗りすぎはかえって密着性を阻害することがあるため注意が必要です。

③ マスキングテープを剥がす「黄金のタイミング」


綺麗な仕上げのためにマスキングテープは必須ですが、剥がすタイミングが早すぎると充填剤が糸を引いて乱れ、遅すぎると充填剤の表面にできた膜と一緒に剥がれてしまい、エッジがガタガタになります。最適なタイミングは、「充填剤をヘラで均し終えた直後」です。すぐに剥がすことで、硬化前の滑らかな状態のまま、シャープなラインを出すことができます。

④ 開封後の充填剤の「延命措置」


一度開封した充填剤は、空気中の湿気と反応して硬化が始まります。使い切るのが理想ですが、余ってしまった場合は、以下の方法で保管すると、次に使える可能性が高まります。

     

  • ラップと輪ゴム: 最も手軽な方法。ノズルの先端にラップを何重にも巻き付け、輪ゴムで根本をきつく縛ります。
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  • グリスやオイルを塗る: ノズルの先端に、硬化した充填剤を少し絞り出し、その上からグリスや油を少量塗っておくと、空気との接触をより効果的に遮断できます。
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  • 専用キャップを使用する: ホームセンターなどでは、シーリングカートリッジ専用の保存用キャップも販売されています。密閉性が高く、最も確実な方法の一つです。

これらの少しの手間をかけるだけで、補修箇所の耐久性は見違えるほど向上します。ぜひ、次回の補修作業から取り入れてみてください。

 

 


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