自動操舵 トラクター 価格相場と導入補助金メリット

自動操舵トラクターの価格相場や後付けシステム、補助金、中古・ランニングコストまで踏み込んで、失敗しない導入方法を整理するとどうなる?

自動操舵 トラクター 価格と導入の考え方

自動操舵トラクター価格の全体像
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新品・ロボットトラクター

ロボットトラクター本体はおおむね数百万円〜2,000万円超まで幅があり、サイズや自動化レベルで大きく価格が変わります。

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後付け自動操舵システム

既存トラクターに取り付ける自動操舵システムは概ね100万円前後から導入でき、構成機器や精度で200万円台まで広がります。

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補助金・中古・維持費

国や自治体の補助金で導入費の3〜5割が出るケースや、中古・オークションで安く自動操舵機を手に入れる選択肢もあり、RTK利用料などランニングコストも要チェックです。

自動操舵トラクター価格の目安と機能別相場

自動操舵トラクターの価格を考えるときは、「トラクター本体+自動操舵機能一体型」と「既存トラクターに後付け」の2パターンに分けると整理しやすくなります。
農林水産省が公表しているスマート農業技術カタログでは、自動操舵トラクターの価格目安を約200万〜2,500万円と幅広く示しており、主に馬力・自動化レベル・装備でレンジが変わることがわかります。
クボタのロボットトラクター「Agri Robo」は、メーカー希望小売価格がおよそ1,493万8,000円からとされており、ハイエンドの自動運転仕様は1,000万円台半ば以上の投資になるクラスです。

 

参考)ロボットトラクター(農機具)の価格と導入のメリットとは|アグ…

ヤンマーのYT4R/5Rシリーズも自動運転機能付き仕様で1,789万7,000円クラスからの価格帯が示されており、主要メーカーのフラッグシップ機では、1,500万〜2,000万円前後が一つの目安といえます。

一方、MAFFの資料には、ロボットトラクターだけでなく「A-B直進機能を持つ有人トラクター」など、オペレーターが乗りながら自動操舵を使うタイプも含めた価格帯が整理されており、こちらは比較的低馬力帯からラインナップされています。

 

参考)https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/products-342.pdf

同じ「自動操舵トラクター」という名前でも、完全無人ロボットと有人自動ステアリングでは価格も運用の前提も異なるため、まずどのレベルの自動化を狙うかをはっきりさせることが重要です。

 

参考)自動操舵トラクター:農林水産省

価格感をつかみやすくするために、代表的なタイプ別にざっくりとしたレンジを表にまとめると次のようになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイプ 自動化レベル 価格帯の目安 代表例
有人トラクター+直進アシスト オペレーター乗車・自動操舵で直進 約200万〜1,000万円台前半 自動操舵トラクター(A-B直進機能付き)
有人+高精度RTK自動操舵 高精度GNSSで自動操舵 既存機+システムで100万〜300万円台 FJD AT1/AT2、AgriBusパッケージ、GFXシリーズなど
無人ロボットトラクター 完全またはセミ無人自動運転 1,500万〜2,500万円前後 Agri Robo、YT4R/5R自動運転仕様など

スマート農業の実証では、北海道の畑作で自動操舵トラクターを導入した結果、作業時間削減や肥料のムラ低減による収量安定が報告されており、高額な機械でも数年スパンで見れば投資回収が見込めるケースが提示されています。

 

参考)https://www.semanticscholar.org/paper/a8360b4b12ef2bddaace3290b255d87a7eade746

単純な導入価格だけでなく、「作業時間短縮」「重労働の削減」「施肥・散布の精度向上によるコスト削減」まで含めて、1時間あたり・1ヘクタールあたりの採算で考えるのがポイントです。

この節の内容を詳しく整理した表やカタログは、農林水産省のスマート農業技術カタログが参考になります。

 

自動操舵トラクター | 農林水産省

自動操舵トラクター後付けシステムの価格と選定ポイント

既存のトラクターを活かしながら自動操舵化する「後付けシステム」は、初期投資を抑えつつスマート化したい農家にとって有力な選択肢です。
編集チームが各メーカーの自動操舵システムを調査した記事では、後付けシステム本体の価格帯が約93.5万〜250万円程度とまとめられており、取り付け費込みでも100万円台前半からの導入例があるとされています。
具体例として、中国メーカーFJDynamicsの「FJD AT1」は、本体価格が約90万円(税込99万円)前後に設定され、取付・サポート費用がおおむね10万円台からという構成です。

 

参考)https://sekido-rc.com/?pid=161647193

同社の新型「FJD AT2」は、トラクターや田植え機、コンバインなど多様な農機に後付け可能で、本体価格は税別90万円と案内されており、メーカー・サイズ・年式を問わず使える汎用性の高さが特徴です。

 

参考)農機に後付けできる自動操舵システム「FJD AT2」の国内販…

国内ベンチャーである農業情報設計社の「安価に後付けできるトラクター自動操舵パッケージ」は、GNSSデバイス「AgriBus-G2」とセットで約81万6,750円(税込)という価格が提示されており、専用機では300万円クラスのシステムと比較して約3分の1のコストで高精度自動操舵を目指していると説明されています。

 

参考)https://agri-info-design.com/agribus-autosteer-lp/

別の記事では、コントローラー(タッチパネル)、電動ステアリングハンドル、IMU(慣性計測装置)、RTK-GNSSアンテナがセットになって本体価格93万5,000円からという構成の例も紹介されており、どのパーツが含まれているかで見かけの価格が変わる点に注意が必要です。

 

参考)自動操舵システムの価格相場は?FJD自動操舵システムの魅力に…

また、地域系商社が扱う自動操舵システムでは、本体価格約90万円(税抜)+取付費用別途というシンプルな価格表示のものもあり、月々のRTK使用料やインターネット使用料が発生する一方、自前のRTK基地局を置けばランニングコストを抑えられるという説明がなされています。

 

参考)農機自動操舵システム

ハイエンド向けでは、ニコン・トリンブルの「GFXシリーズ」など、RTK対応の自動操舵キットが300万円前後の希望小売価格で案内されており、耐久性やサポート体制を重視したい大規模経営向きの選択肢です。

 

参考)農機自動操舵システム「GFXシリーズ」リニューアル |株式会…

後付け自動操舵システムを比較するときは、次のようなポイントでチェックすると失敗しにくくなります。

     

  • 対応機種:自分のトラクターのメーカー・型式・年式に正式対応しているか
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  • 測位方式:シングルGNSSか、RTK-GNSSか、基地局は自前か通信利用か
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  • セット内容:コントローラー・電動ハンドル・IMU・アンテナなどが一式かどうか
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  • サポート:取付後のチューニングやトラブル対応をどこまでやってくれるか
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  • ランニングコスト:RTK利用料、SIM通信料、ソフトウェア更新費用の有無

大手メーカーのクボタも、自社のトラクターに装着できる自動操舵キットをカタログで案内しており、「古いトラクタや田植機が自動操舵に早変わりする」といったコンセプトで、既存機を活用したスマート化を推奨しています。

 

参考)https://agriculture.kubota.co.jp/agriinfo/news/file/autopilot-book-202507.pdf

このように、同じ「自動操舵システム」でも価格帯や構成、サポート範囲がかなり違うため、「安さ」だけではなく、「ほ場条件や作物に合った精度」と「維持できるランニングコスト」のバランスで選ぶことが重要です。

後付けシステムの比較には、メーカーごとの価格や構成を一覧で整理しているメディア記事が役立ちます。

 

自動操舵システムの価格相場まとめ

自動操舵トラクター導入補助金・助成金の最新動向

自動操舵トラクターや後付け自動操舵システムは、国のスマート農業関連事業や地方自治体の補助金メニューで優先的に支援対象になっていることが多く、価格を語る上で補助金情報は欠かせません。
たとえば、国の「農地耕作条件改善事業」のスマート農業導入推進型では、トラクター用GNSS基地局や自動操舵システムなどの省力化技術の導入経費に対して、平地農地で経費の50%、中山間地域では55%を定額補助する枠が設けられています。
令和6年度の「農地利用効率化等支援交付金」の資料では、農業用機械に位置付けられる自動操舵システムなどについて、整備内容ごとにおおむね1/3の補助率(沖縄県や特定機械では1/2)が示されており、最大4,000万円の上限の中で複数機械を組み合わせて申請できることが明記されています。

 

参考)https://www.maff.go.jp/j/keiei/sien/R6_nouchiriyou/attach/pdf/index-3.pdf

実際の運用では、地域ごとの事業採択方針や優先テーマによって採択されやすい機械構成が異なるため、普及センターやJA、農業法人支援センター等と早い段階から相談しておくと安心です。

面白いポイントとして、農業機械の買い替え・設備投資向けの補助金解説では、「トラクター本体は対象外だが、それに後付けする自動操舵システムは対象」といったケースが具体例として紹介されています。

 

参考)【2025最新版】農業機械・設備投資で使える補助金・給付制度…

この場合、新車トラクターを自費で導入し、自動操舵システムだけ補助金で整備することで、総投資額を抑えつつスマート化の恩恵を得るという戦略が取り得るわけです。

地方自治体レベルでも、自動操舵トラクターや高性能コンバインを対象としたスマート農業補助金が広がっています。

 

参考)川北町スマート農業推進事業費補助金について

石川県川北町の制度では、自動操舵付きトラクターや直進アシスト付き高性能コンバインなどが対象機械として明記されており、地域の担い手を軸に導入を後押しする仕組みが採用されています。

滋賀県米原市のスマート農業技術導入支援事業でも、自動操舵付きトラクターやロボットトラクターが対象機器として挙げられ、認定農業者や認定新規就農者などを中心に補助金が交付される枠組みが示されています。

 

参考)令和7年度 米原市スマート農業技術導入支援事業補助金について…

国のメニューと自治体メニューを組み合わせることで、実質的な自己負担率をさらに下げられる場合もあり、導入を検討する際には「国+県+市町村」の三層で情報収集する価値があります。

補助金・助成金の制度概要や最新情報をまとめているサイトを一つ押さえておくと、制度改正のウォッチがしやすくなります。

 

2025年主要農業補助金・助成金の概要
参考)2025年主要農業補助金・助成金の概要

自動操舵トラクター中古・オークション相場とリセール戦略

自動操舵トラクターの価格を抑えたい場合、「中古トラクター+自動操舵付き」という選択肢も有効です。
中古農機専門サイトでは、「自動操舵システム付き」や「GNSS自動操舵対応」といった記載のあるトラクターが出品されており、馬力や年式によっては新車の半額以下で自動操舵機能付きの1台を確保できるケースもあります。
たとえば、中古農機具販売サイトUMMでは、イセキのNTAシリーズにCHCNAV社の自動操舵システムが搭載された中古トラクターが500万円台で出品されている例があり、本体価格とシステム価格をバラバラに導入するよりもトータルで割安になる可能性が示唆されます。

 

参考)中古amp;category=amp;number=amp;…

ヤンマーアグリジャパンのリセール情報ページでも、最新型のトラクターが活用済み機として500万円台などで販売されているケースがあり、今後自動操舵仕様の下取り・再販売が増えるにつれて、スマート農機の中古市場が一層厚みを増していくと考えられます。

 

参考)https://www.yanmar.com/jp/about/company/yaj_nishinihon/resale/resale/?nr=1

意外な情報として、オークションサイトでは「自動操舵システム単体」が取引されており、過去120日分の落札データから平均落札価格が約20万6,737円という集計結果が公開されています。

 

参考)Yahoo!オークション -「自動操舵」の落札相場・落札価格

これは、故障した本体からの取り外し品や、上位機種への買い替えに伴う放出品など、さまざまな由来のユニットが流通していることを示しており、目利きができれば大きくコストを抑えられる一方で、保証やサポート面のリスクも小さくありません。

中古・オークションを活用する際には、次のような点をチェックするとリスク低減につながります。

     

  • 適合確認:手持ちのトラクター型式で正式に動作実績があるか、販売店やメーカーに確認する
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  • 取付・調整:取付作業とキャリブレーションをどこに依頼するか、費用見積りを事前に取る
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  • ソフト更新:ファームウェア更新や地図ソフト連携が今後もサポートされるか
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  • 保証:中古でも販売店保証があるか、オークションの場合は保証ゼロ前提でリスク許容範囲を決める

将来のリセールを意識するなら、「自動操舵対応を前提にした人気馬力帯(30〜60PSクラス)」かつ「主要メーカー(クボタ・ヤンマー・イセキ)」のモデルを選び、メンテ履歴をしっかり残しておくことで、下取り時に有利に働きやすくなります。

クボタの資料でも「古いトラクタを自動操舵化する」ことが例示されており、今後は自動操舵ユニットだけを乗せ替えながらベース機を更新していく運用も一般化していくと見込まれます。

中古トラクターや自動操舵付き在庫を検索するには、中古農機専門サイトの検索機能が便利です。

 

中古農機具販売 UMM

自動操舵トラクター価格とRTKランニングコストの意外な落とし穴

自動操舵トラクターの価格で見落とされがちなポイントが、「RTKや通信に関わるランニングコスト」です。
カタログやLPでは本体価格や取付費が強調される一方で、「RTK使用料」「インターネット使用料」「基地局の設置費・保守費」といった継続コストは小さく書かれていることが少なくありません。
ある自動操舵システムの紹介では、本体価格90万円に対して「月々のRTK使用料とインターネット使用料が必要」と明記されており、別売りのRTK基地局を導入すると月々の利用料を抑えられると説明されています。

RTK基地局を自前で用意する場合は、導入コストと維持管理を自社で負担する代わりに、長期的に見るとランニングコストを圧縮できるというトレードオフが存在します。

一方、通信キャリアや民間サービスが提供するRTK補正情報をサブスクリプションで利用するモデルでは、月額料金と引き換えに、基地局の設置・保守を外部に丸ごと任せられるメリットがあります。

国のスマート農業支援事業では、このようなGNSS基地局設置や自動操舵システム導入に対して補助が出るため、「RTK利用モデル」と「自前基地局モデル」のどちらが事業計画に合うかを、補助金の枠組みも含めて検討するのが賢明です。

また、後付け自動操舵システムの中には、タブレットやターミナルモニタを利用してほ場マップを作成し、作業コースを登録するタイプが多く、これらの機器がOSアップデートやアプリのバージョンに依存している点も長期運用では無視できません。

 

参考)https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/self_driving/

端末の更新やアプリ課金が発生する場合、5〜10年スパンで見た総費用は、本体価格だけを見た場合と大きく違ってくる可能性があります。

最後に、自動操舵トラクター導入の採算を考えるときには、「導入価格+ランニングコスト −(作業時間削減+燃料・資材削減+品質向上)」という視点でシミュレーションすることが重要です。

北海道畑作の事例でも、可変施肥や高精度作業による省力化効果が示されており、適切な規模と作業内容で使いこなせば、自動操舵の価格は「コスト」ではなく「再現性の高い作業品質と時間を買う投資」として捉えられるようになります。

自動操舵の運用とランニングコストの考え方については、メーカーや行政の技術資料も参考になります。

 

クボタ 自動操舵技術資料(PDF)