ジャン=バティスト・ラマルクは、1809年の『動物哲学』で進化の考え方を体系的に提示した人物として位置づけられます。
ここで大事なのは、「種は不変ではない」という主張を、当時の常識(種は作られて固定)に正面からぶつける形で理論化した点です。
またラマルクは、自然史博物館の教授として無脊椎動物研究に取り組み、「無脊椎動物」や「生物学」といった語にも関わったとされます。
農業従事者向けに言い換えるなら、品種や害虫の“見え方”が固定ではなく、環境・管理・時間の積み重ねで集団の性質が動く、という発想を広げた先駆けです。
もちろん、現代の遺伝学・進化学と同一ではありませんが、「変化を前提に現象を読む」という姿勢は、病害虫の長期管理や栽培体系の改善を考える時に今でも効きます。
有用な参考(ラマルクの生涯、主要著作『動物哲学』、無脊椎動物研究、「生物学」などの語に関する解説)
https://kotobank.jp/word/%E3%82%89%E3%81%BE%E3%82%8B%E3%81%8F-3174781
ラマルクは、環境の影響や器官の使用・不使用によって個体が変化し、それが次世代へ受け継がれる、という説明を組み込みました。
この部分が一般に「用不用説」「獲得形質の遺伝」として知られ、ラマルキズムの中核として語られることが多いです。
ただしラマルクの全体像は「それだけ」ではなく、自然界に“発達する力”が内在し単純から複雑へ向かう、という前進的発達の見取り図も含んでいました。
農業の現場でありがちな誤読は、「環境に慣らせば作物(や害虫)が狙い通りに遺伝的に変わる」という短絡です。
実際には、同じ圃場でも個体差(ばらつき)があり、残る個体が次世代をつくる、という集団としての変化が重要で、ここは現代の自然選択の説明と接続しやすい部分です。
ラマルクを読むコツは、「個体の努力で変わる」という道徳話に落とさず、環境と生物の関係を“モデル化しようとした試み”として扱うことです。
参考)人類に知的革命を起こした名著『種の起源』を理解するために必要…
ラマルクの大きな業績の一つは、無脊椎動物を研究し、当初5綱からのちに10綱へと分類を発展させ、分類体系を現在の形へ近づけた点です。
無脊椎動物を、神経系の発達段階のような基準で低次から高次へ並べる「自然の階段」という発想で整理しようとしたことも解説されています。
つまり、ラマルクは“進化論の人”である以前に、膨大な観察・記載・整理の人でもありました。
農業に寄せて言うと、害虫・天敵・土壌動物など、無脊椎動物を「まとめて虫」として扱うか、「どう分類し、どう特徴を押さえるか」で対策の精度が変わります。
たとえば同じ“食害”でも、口器のタイプ、生活環、発生場所が違えば、有効な防除のタイミングも資材も変わります(分類は実務のショートカットになります)。
ラマルクが積み上げた分類の考え方は、現場では「名前を知る=対策の選択肢が増える」という実利に変換できます。
農業従事者がもっとも実感しやすい進化の例として、害虫が薬剤耐性を獲得し、同じ殺虫剤が効かなくなる“いたちごっこ”が挙げられています。
ある農薬が効いていたのに効かなくなるのは、現代進化学では「耐性をもつ個体が生き残り、次世代で割合が増える」という自然選択として理解されます。
同じ資料の中でも、進化は「良くなること」ではなく、その環境で“残りやすい”方向に集団が寄る現象だ、と説明されています。
ここでラマルクを農業に役立てるなら、「環境(管理)を変えると、生物側の見え方も長期で変わる」という警戒線を張ることです。
具体的には、単剤連用を避けるローテーション、発生源の管理、物理的抑制(例:環境条件の調整)など、選抜圧を一方向に固定しない工夫が重要になります。
「ラマルク=間違い」で終わらせず、環境と生物の相互作用に注目する視点だけを“現代仕様”に置き換えると、現場の意思決定が説明しやすくなります。
有用な参考(農業従事者が体験する進化=害虫の耐性、自然選択の説明)
https://ocw.hokudai.ac.jp/wp-content/uploads/2016/01/ScienceLiteracy2-2009-Text-26.pdf
独自視点として押さえたいのは、ラマルクの議論が“正誤”だけで片づきにくい、という点です。
たとえばラマルクは、分類(無脊椎動物の整理)を進める中で、生物の複雑さの段階を強く意識し、それが進化を説明する枠組みへつながった、という見取り図で理解できます。
つまり、観察→整理→理論、という順序があり、理論の一部(用不用説)だけが切り出されて独り歩きした結果、人物像が単純化されやすいのです。
農業の情報収集でも同じ罠が起きます。
「この資材は効く」「この栽培法は増収」など“結論だけ”が流通し、前提条件(圃場環境、品種、気象、作業精度)が抜け落ちると、再現性が崩れます。
ラマルクを題材にすると、上司や同僚に対しても「結論だけでなく、観察条件と分類(整理)を揃えてから判断する」という、事故が起きにくい説明の型を共有できます。
ここで、現場で使えるチェックリストを置きます。
こうした「観察→分類→仮説→検証」の回し方は、ラマルクの時代の科学観とは違いながらも、彼が“自然を体系化しようとした姿勢”から学び取れる実務スキルです。