エイコサペンタエン酸炭素数とn-3系多価不飽和脂肪酸構造と機能

エイコサペンタエン酸の炭素数20とn-3系多価不飽和脂肪酸としての構造・機能を整理しつつ、魚油や飼料設計にどう生かせるか農業従事者目線で掘り下げてみませんか?

エイコサペンタエン酸炭素数の基礎知識

エイコサペンタエン酸炭素数の押さえどころ
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炭素数20と5つの二重結合

エイコサペンタエン酸(EPA)は炭素数20・二重結合5個のn-3系多価不飽和脂肪酸で、記号では20:5 n-3と表されます。

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魚油由来の代表的脂肪酸

EPAはイワシやサバなどの青魚や魚油に豊富で、DHAと並び「魚の脂の価値」を決める成分として利用されています。

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飼料設計と農業現場への応用

EPAの炭素数と構造を理解すると、魚粉・魚油や油脂原料の選び方、家畜や養殖魚の脂肪酸バランス設計に応用できます。

エイコサペンタエン酸炭素数とn-3系多価不飽和脂肪酸の構造

エイコサペンタエン酸(EPA)は、炭素鎖が20個つながった高級脂肪酸で、カルボキシル基を1つ持つ直鎖状のカルボン酸です。
脂肪酸の表記では、炭素数と二重結合数を組み合わせて20:5 n-3と書き、炭素が20個・二重結合が5個・メチル末端から3番目に最初の二重結合があることを示します。
EPAはn-3系(オメガ3系)の多価不飽和脂肪酸に分類され、同じ系列にはα-リノレン酸(18:3 n-3)やドコサヘキサエン酸DHA(22:6 n-3)も含まれます。

 

参考)不飽和脂肪酸

この系列の脂肪酸は、体内での合成能が限られているため「必須脂肪酸」として食餌からの摂取が重要になります。

 

参考)EPA|栄養素カレッジ|大塚製薬

EPAのような高級脂肪酸では、炭素数が増えるほど分子同士の引力が強くなり、飽和脂肪酸なら融点が上昇する傾向があります。

しかしEPAは二重結合が5個もある多価不飽和脂肪酸のため、同じ炭素数の飽和脂肪酸に比べて融点がかなり低く、常温で液状に近い性質を示します。

 

参考)高級脂肪酸(炭素数・覚え方・種類・一覧・構造式・分子量など)…

脂肪酸は「C20:5」や「C20:5 n-3」といった略記で表され、炭素数(Cの後の数字)と二重結合数、そしてn-3のような最初の二重結合位置を組み合わせて構造を簡潔に示します。

 

参考)日本脂質栄養学会 - 用語集・基礎知識

この略記を読めるようになると、EPAだけでなく他の脂肪酸の炭素数や性質も一覧表から素早く読み解けるようになり、飼料原料の比較にも役立ちます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脂肪酸名 略記 炭素数 二重結合数 系列
α-リノレン酸 18:3 n-3 18 3 n-3系
エイコサペンタエン酸(EPA) 20:5 n-3 20 5 n-3系
ドコサヘキサエン酸(DHA) 22:6 n-3 22 6 n-3系

脂肪酸の炭素数と二重結合の基礎解説として、農林水産省の脂肪酸のページは全体像をつかむのに便利です。

脂肪酸|農林水産省

エイコサペンタエン酸炭素数とα-リノレン酸・DHAとの変換経路

α-リノレン酸(18:3 n-3)は植物油に多いn-3系多価不飽和脂肪酸で、体内で炭素数を伸ばしながらEPAやDHAへと代謝されます。
具体的には、炭素数18のα-リノレン酸が酵素反応により炭素が2個ずつ伸びていき、途中でエイコサテトラエン酸(20:4 n-3)を経てEPA(20:5 n-3)に変換されます。
EPAからさらに炭素数が2つ増えると、22:5 n-3のドコサペンタエン酸(n-3DPA)となり、そこからもう一度不飽和化が進むとDHA(22:6 n-3)が生成されます。

 

参考)(2015年10月発行)n-3系多価不飽和脂肪酸結合脂質の構…

この一連の変換で、炭素数18→20→22と伸びていき、二重結合数も3→5→6と増加することが、n-3系脂肪酸系列の特徴です。

 

参考)エイコサペンタエン酸 - Wikipedia

  • 植物由来のα-リノレン酸は、アマニ油やえごま油などに多く、これを摂取することで体内でEPA・DHAへ変換されるルートが期待されます。

    参考)不飽和脂肪酸とは?分かりやすく解説!

  • ただし変換効率は高くなく、ヒトではα-リノレン酸からEPA・DHAへの変換割合は限定的だと報告されています。​
  • そのため、EPAやDHAを直接含む魚油や魚介類を摂取することが実務的な補給手段とされます。​

日本脂質栄養学会の用語集では、α-リノレン酸・EPA・DHAの炭素数と二重結合数が整理されており、炭素数の違いが系列内でどう位置づけられるかを確認できます。

用語集・基礎知識|日本脂質栄養学会
農業現場でこの変換を意識する場面としては、植物油主体の飼料か、魚油や魚粉を含む飼料かによって、家畜や養殖魚体内のEPA・DHA蓄積量が変わる点が挙げられます。

 

参考)エイコサペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸を含む魚油を給与した…

α-リノレン酸の炭素数18から出発してもEPAまでの経路が長いため、EPAやDHAを直接含む飼料原料を部分的に組み合わせる設計のほうが、脂肪酸組成をコントロールしやすくなります。

 

参考)https://www.fklab.fukui.fukui.jp/ts/seika/hukyu/tech004.sakana.pdf

エイコサペンタエン酸炭素数と高級脂肪酸としての物性・融点

高級脂肪酸全般では、炭素数が増えると分子量が大きくなり、分子間力が強くなるため融点が上がるという基本則があります。
一方、二重結合が増えると炭素鎖が折れ曲がりやすく密に並べなくなるため、同じ炭素数で比較した場合は「二重結合が多いほど融点が低い」という逆の傾向が現れます。
EPAは炭素数20で二重結合を5個持つため、対応する飽和脂肪酸(アラキジン酸20:0など)に比べて融点が大幅に低く、常温では油状の魚油中に溶け込んだ形で存在します。

同じ20炭素でもアラキドン酸(20:4 n-6)は二重結合4個なのでEPAほどには融点が下がらず、二重結合数の差が物性の差として現れます。

  • 飽和脂肪酸:炭素数が増えるにつれ融点が上がり、16~18炭素では室温で固体の脂(ラードや牛脂)になります。​
  • 多価不飽和脂肪酸:同じ炭素数でも二重結合が増えるほど融点が低く、EPAやDHAは魚油中で液体として存在します。​
  • 高級脂肪酸表を見ると、炭素数20のエイコサペンタエン酸の融点がマイナス温度帯にあることが確認でき、寒冷な海でも魚油が固まりにくい理由の一端がわかります。​

この物性は、飼料に油脂を配合する際の「扱いやすさ」にも影響します。

 

参考)フィッシュミールの用途

室温で固まりやすい飽和脂肪酸が多い油脂はペレットの強度確保には有利な反面、EPAのような高不飽和脂肪酸の割合が高い魚油は流動性は高いものの酸化しやすく、保存性や配合方法の工夫が必要になります。

福井県などの技術資料では、魚油に抗酸化剤を加えて酸化を抑えつつ、飼料タンク充填時に均一に混合する方法が紹介されており、EPAを含む不飽和脂肪酸の多い油脂を現場で扱う際の実践的なヒントになります。

魚油を利用したEPA、DHA含量の高い豚肉の生産|福井県

エイコサペンタエン酸炭素数と魚油・フィッシュミール飼料の活用

魚油やフィッシュミールにはEPAとDHAが豊富に含まれており、これらのn-3系多価不飽和脂肪酸が水産養殖や畜産での健康・品質向上素材として注目されています。
魚油中のEPAとDHAは、血中脂質の改善や炎症抑制などヒトの健康効果で知られていますが、家畜や養殖魚の脂肪酸組成にも反映され、肉質や脂質プロファイルの改善に利用できます。

  • フィッシュミールは水産養殖用の配合飼料だけでなく、ブタや家畜用飼料のタンパク・脂質源としても使われています。

    参考)水産事業/フィッシュミール部|株式会社 稲井|快適な暮らしと…

  • 魚油中の脂肪酸の約2割前後がEPA・DHAという報告もあり、炭素数20・22のn-3系脂肪酸を効率的に供給できる油脂資源とされています。​
  • 養豚試験では、肥育後期飼料へ魚油を添加することで背脂肪のEPA・DHA割合が増加し、脂肪酸組成が変化することが報告されています。​

EPAの炭素数20という情報は、飼料原料を比較する際に「どの脂肪酸をどれだけ供給したいか」を数値で考える入口になります。

例えば、魚油の配合量を増やしてEPA・DHA比率を上げるか、あるいは植物油由来のα-リノレン酸(炭素数18)に依存するかで、最終産物である家畜肉や魚のn-3系脂肪酸プロファイルが変わります。

 

参考)研究概要

石巻魚糧工業などの解説では、魚油が水産養殖用飼料や健康食品の原料として利用され、EPA・DHAの健康への有用性が強調されています。

同様に、EPAの炭素数や系列(20:5 n-3)を理解しておくと、飼料メーカーから提示される脂肪酸組成表の意味を現場レベルで読み解きやすくなり、原料選択の判断材料になります。

エイコサペンタエン酸炭素数を手がかりに飼料設計で脂肪酸バランスを読む独自視点

ここでは、一般的な栄養解説にはあまり書かれていない「炭素数を軸にした脂肪酸バランスの読み方」を、現場の飼料設計という観点から整理します。
EPAの炭素数20という数字を、単なる化学的特徴ではなく「飼料原料間の階段のどの段にいるか」を示すラベルとして捉えるイメージです。
脂肪酸系列を炭素数で並べると、C18(α-リノレン酸)、C20(EPA)、C22(DHA)という3つの段階が見えてきます。

この階段のどこまでを飼料で直接供給し、どこから先を動物自身の代謝に任せるかを決めるのが、実は飼料設計の重要な判断ポイントになります。

  • C18中心:植物油主体(アマニ油・えごま油など)で、コストや入手性に優れる一方、EPA・DHAへの変換は動物の代謝能力頼みになります。​
  • C20を含む:魚粉や魚油を一定割合入れてEPAを直接供給し、脂肪酸組成に「海産由来」の色をしっかり付ける設計です。​
  • C22まで含む:EPAに加えてDHAも多い原料を使い、神経系や視覚機能に関わる脂質まで意識した高付加価値設計が可能です。​

同じn-3系でも、炭素数18だけで組むのか、20や22まで含めるのかで、家畜肉や魚体の脂肪酸分析値(EPA/AA比やEPA+DHA含量など)の結果は大きく変わります。

 

参考)脂肪酸分画(24成分)

分析機関が報告するEPA・DHA量の背景には、「どの炭素数帯の脂肪酸をどれだけ与えてきたか」という過去の飼料設計の履歴が反映されていると考えると、結果の解釈も立体的になります。

大塚製薬のEPA解説ページなどを見ると、EPAがヒトの血管・炎症・循環器疾患予防に重要な脂肪酸として位置づけられていることがわかります。

同じEPAでも、農業側から見れば「炭素数20のn-3系多価不飽和脂肪酸を、どの家畜・どの魚種に、どの時期にどれだけ届けるか」を設計する素材だと捉えることで、より戦略的な飼料設計が可能になります。

EPA|栄養素カレッジ|大塚製薬