農機の燃料として使われる軽油は、ディーゼルエンジン用としてJISで種類が分かれており、季節で使い分ける前提があります。具体的には、夏期は1号または特1号、冬期は2号(寒冷地は3号、特3号)という運用が一般的で、低温になるほど“流動点・目詰まり点”対策の性格が強くなります。
また、低温時は軽油中のパラフィン分が析出し、燃料フィルター閉塞などのトラブルが起き得るため、「機械が悪い」の前に「号数が合っているか」を疑うのが近道です。
現場での確認ポイント(チェックリスト)
超低硫黄軽油(硫黄分が非常に低い軽油)に関連してよく誤解されるのが、「硫黄が少ない=機械に優しい」という短絡です。脱硫によって軽油の潤滑性が低下し、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置に影響を与えることが知られているため、噴射ポンプやノズルなど“燃料で自己潤滑する部位”ほど管理の重要度が上がります。
一方で、日本で流通する一般的な軽油には潤滑性向上剤が配合されている、という前提も押さえるべきポイントです。つまり「何でも添加剤で解決」ではなく、「正規ルートの燃料を、適切に保管して、汚さない」が基本戦略になります。
やりがちな失敗と回避策
対策:給油器具は燃料専用に固定し、ウエスで口元を拭いてから扱う(異物混入を減らす)。
参考)https://www.nikkenren.com/publication/fl.php?fi=1534amp;f=BDF_guideline_2025_07.pdf
対策:タンクを“使い切ってから”切り替える(混合は最小化)。
農機トラブルの原因として意外に多いのが、燃料タンク内の「遊離水」です。微生物(細菌・真菌)は“燃料(餌)と水”が揃うとタンク内で増殖し、燃料と水の境界にラグ層を形成して汚染を広げます。
この状態が進むと、酸の形成、錆・腐食、フィルター目詰まりが発生し、燃料がぬるぬるしたスラッジ状になって使用不能になることもあります。しかも、温暖な環境やバイオ燃料成分の存在が、このプロセスを加速する要因になり得ます。
現場でできる“水分起点”の対策(順番が重要)
目詰まりは「フィルターが悪い」ではなく、「フィルターが仕事をした結果」であることが少なくありません。微生物汚染が進むと、フィルターは“黒い斑点”のようなコロニーやスラッジで閉塞し、詰まりが出て初めて異常に気づくケースが多いとされています。
そのため、フィルター交換を“修理”で終わらせず、「なぜ詰まったか」を突き止める運用に変えると、翌シーズンのトラブルが減ります。特にバルク貯蔵タンクや、長期間アイドル状態の機器で発生しやすい点は、農繁期と農閑期がある農業現場と相性が悪い(=起きやすい)と考えるべきです。
目詰まり時の切り分け(簡易)
検索上位では「添加剤」や「規格」が前に出がちですが、農業現場で効くのは“機械の休ませ方(農閑期の燃料の持たせ方)”です。燃料が「よどむ」ほど微生物汚染のリスクが上がるという指摘があり、稼働が止まる時期ほど、燃料の水分管理と在庫管理が結果的にコストを下げます。
具体的には、①保管タンク内の遊離水を定期的に排出、②長期停止前後でフィルター状態を観察、③次シーズン前に“燃料の状態(臭い・沈殿・ヌメリ)”を確認、という手順が現実的です。微生物は水がないと増殖できないため、ここを押さえると対策がシンプルになります。
小さな工夫で差が出る運用例
規格(硫黄分・号数・低温特性・潤滑性)の基礎がまとまっている(規格と性状の確認に便利)
ENEOS 石油便覧「軽油」
微生物汚染が起きる条件(燃料+水)と、錆・腐食・目詰まりにつながる流れ、対策の考え方がまとまっている(スラッジ・水分対策の参考)
ドナルドソン「ディーゼル燃料中の微生物菌」