稚蚕用自動飼育装置と稚蚕人工飼料育

稚蚕用自動飼育装置を導入すると、稚蚕人工飼料育の温湿度・気流・光線や防疫管理、給餌や眠期の取扱いがどこまで標準化できるのかを、現場の判断ポイントと落とし穴まで含めて整理しますが、何から着手すべきでしょうか?

稚蚕用自動飼育装置と稚蚕人工飼料育

稚蚕用自動飼育装置の要点
狙いは「環境」と「作業」のブレを消す

稚蚕期は温湿度・気流・光線と、給餌・眠期管理のズレがそのまま不揃いと減蚕に直結します。装置は“自動化”よりも“再現性”の確保が本命です。

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人工飼料育は防疫が設計仕様になる

高温多湿環境は微生物も増えやすく、入菌を減らす動線・清掃・消毒の徹底が前提条件です。

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気流は便利だが、強いと「蚕寄り」を誘発

空調・送風は均一化に有効な一方、蚕座面の風が強いと避け行動が出て密度ムラが起こり、結果的に作業が増えます。

稚蚕用自動飼育装置の温湿度と気流の管理方法

稚蚕人工飼料育では、飼育環境(温度・湿度・気流・光線)と飼育取扱い(掃立・給餌・眠起の取扱い・配蚕)の適否が、そのまま成否と飼育労力、ひいては飼育経費に直結します。
特に温度は「適温の幅が狭い」ことが重要で、稚蚕人工飼料育の飼育適温は1〜3齢を通じて28〜30℃が目安とされ、気流がある場合は高め、齢が進むほど低めを採るのがよいと整理されています。
湿度は「蚕のため」というより、人工飼料の乾燥を防いで食下量を安定させる目的が大きく、摂食中は85%程度、就眠後は65%程度まで下げて飼料を乾燥させる、という切替が基本動作になります。
ただし湿度だけを上げると逆効果になり得て、湿度95%で気流ゼロの条件は成育に不適当だった一方、湿度が90%を超えても秒速5〜10cm程度のわずかな気流があれば成育が良好になった、というデータが示されています。
装置導入時に見落とされがちなのが「気流の測る場所」で、空調の設定値が合っていても、蚕座面で毎秒10cm以上の流れがあると飼料が乾きやすくなり、蚕の偏り(蚕寄り)の原因になり得るため、風の道を事前に把握して障壁などで弱める工夫が推奨されています。
現場運用のコツとしては、次のように“装置設定”を“作業工程”に結び付けると安定します。


・「摂食期」:温度は28〜30℃帯、湿度は85%前後、気流は弱く均一(強風を当てない)。


参考)AgriKnowledgeシステム

・「就眠〜眠期」:拡座で乾燥を進め、就眠が揃ったタイミングで除湿を開始して目標65%へ落とす(遅すぎても早すぎても不揃い要因)。

・「設備側の落とし穴」:送風・除湿能力が強すぎると“餌が先に乾く”現象が起き、遅れ蚕が摂食不足→遅れが固定化しやすい。

稚蚕用自動飼育装置の防疫管理と消毒準備

人工飼料育は清浄環境の維持が前提で、作業従事者等による病原菌の持込みを防ぐ必要がある、と明確に書かれています。
さらに、飼育条件は高温多湿で微生物繁殖に好都合なため、飼育中の蚕体・蚕座の消毒を一般に行わない運用である以上、室内を汚染しない努力(動線・清掃・持込み管理)が本丸になります。
掃立前の準備では、空調機・給餌機などの点検整備(フィルター目づまり、噴霧口つまり等の清掃を含む)を行い、掃立前には完全に使用体制が取れる日程を組むべきだとされています。
また、掃立直前の消毒は臭気除去期間が取れずリスクになるため、消毒後に乾燥・臭気除去を確保し、少なくとも掃立2日前くらいまでに飼育可能な環境に整備する、という時間設計も具体的です。
自動装置化と相性がよい防疫の考え方は「汚染源の固定化」です。


  • 入口・前室・飼育室で、手足の消毒や着替えを分離し、外気侵入を最小化する(ドア開閉時間も管理対象)。​
  • 机・椅子・床などを毎日拭き、粉塵や飼料くずを“残さない”ことをルール化する(ホコリは微生物の巣窟になり得ると明記)。​
  • 給餌機は「高温多湿室に急に入れると結露する」ため、搬入タイミングと拭き取り・消毒の一連手順を装置運用マニュアルに固定する。​

意外に効くのが「結露対策」です。外温の低い時期に天井等に結露し、それが蚕座に落ちるとカビ等の発生源になり得るため、事前に保温してから加湿するなど順序が推奨されています。

自動飼育装置の価値は、温湿度の数値を保つだけでなく、結露が起きない運転シーケンス(例:加湿の前に壁面温度を上げる)まで含めて標準化できる点にあります。

参考:稚蚕人工飼料育の防疫管理・温湿度/気流/光線の具体基準(飼育所の清掃・消毒の手順、入室ルール、湿度切替など)
稚蚕人工飼料育(NAROアーカイブ)

稚蚕用自動飼育装置の給餌と飼育方法

給餌は“回数を減らして省力化できる”のが人工飼料育の大きな利点ですが、その分、給餌量・給餌時期・給餌むらの影響が強く出て、不揃いとコスト増につながると説明されています。
そのため、飼育標準表などに示された適正な給餌量と飼育密度を厳守することが大切で、装置側は「規定量を正確に・均一に」落とす設計と運用が必要です。
また、給餌作業は高温多湿の蚕室内で長時間になりやすく、防疫面から汗を蚕座に落とさない、蚕座上での無駄な会話を慎む、といった“人の行動”まで管理対象として書かれています。
自動給餌を導入する場合でも、給餌機の速度調整(蚕箔の移動速度に合わせて給餌速度を合わせる)など、運転条件の「合わせ込み」が必要で、ここが導入後の成否を分けます。
稚蚕用自動飼育装置に合わせた、作業の設計例(現場の負担が減りやすい順)です。


  • 装置の基本給餌:定量・均一給餌(給餌むらが出ると、結局むら直し・補給餌が発生して省力化が崩れる)。​
  • 機械の衛生ルーチン:給餌後すぐに残餌の片付け、洗浄(高圧洗浄が望ましい)、乾燥までを固定手順にする。​
  • 例外対応:カビが出た場合は周囲を含めて局所除去し、アルコール滴下で胞子飛散を抑える、といった具体処置が示されています。​

「あまり知られていないが効く視点」として、人工飼料育では“飼料の温度低下が蚕体温に影響する”点が挙げられ、同一室温でも人工飼料育蚕の体温が桑葉育より低く、気流があるとさらに低くなるため、室温を高くする必要がある、という説明があります。

つまり装置の温度制御は、室温センサーだけでなく、気流や飼料表面の乾燥・温度低下まで含めて実態に合わせるのがポイントで、単純なPID制御の“数値合わせ”だけではズレが残り得ます。

稚蚕用自動飼育装置の眠期と光線管理(独自視点:自動化で逆に増える作業)

眠期の取扱いは「蚕の揃い」を決める最重要局面で、残餌を乾燥させ切れないと早起き蚕が食べて進んで不揃いになり、逆に乾燥し過ぎると遅れ蚕が摂食不足で遅れが拡大する、と整理されています。
そのため、拡座で乾燥を進めつつ、眠蚕の発生状況を見ながら除湿を入れて飼料を完全乾燥させる、という“観察にもとづく切替”が必要です。
ここが自動化の盲点で、装置が優秀であるほど「乾燥の進みが速く」なりやすく、眠期の切替タイミングが固定化されると、季節・飼料形状・気流の違いで不揃いが出ることがあります。
つまり、稚蚕用自動飼育装置の運用では、ルーチンを機械に寄せるほど“例外検知(いつもと違う乾き方)”の重要度が上がる、と捉えるのが現場的に安全です。
光線管理も、装置導入で油断しやすい論点です。人工飼料育では光条件が桑葉育より強く影響し、光により蚕寄りが起きやすく、給餌前の蚕座手入れが増えたり、給餌回数が少ない体系では成育不揃いの原因になるため、現状では暗条件が無難とされています。

加えて、飼料の組成によっては光で飼料が変質し、200lux以上で飼料価値低下が早まるため、露光時間を短くし照度を200lux以下に制限するよう注意が促されています。

この2点は「装置のカバーや点検照明」をどう設計するかに直結し、例えば点検時だけ強照明を使い、その後は遮光する、といった運用ルールが有効になります。

装置導入時のチェックリスト(眠期・光線で作業が増えないため)

  • 就眠〜除湿開始の判断基準を、担当者の観察項目として文章化する(“時間”だけで固定しない)。​
  • 風が当たる棚・当たらない棚を事前に洗い出し、蚕寄りが出やすい段を把握する(気流の道を先に潰す)。​
  • 点検時の照明ルールを決め、200lux超の照明を常時当てない(飼料変質と蚕寄りの両面対策)。​

参考:大量飼育装置での空調制御や棚の回転など、工学的な均一化の考え方(装置の構成要素の理解に役立つ)
スマート養蚕システム(新菱冷熱)