抗がん剤治療にかかる費用は薬剤の種類によって大きく異なります。従来型の細胞障害性抗がん剤では、プラチナ併用療法が3~4週間で約3~20万円の医療費となり、3割負担の場合は約1~6万円の自己負担となります。一方、分子標的治療薬を使用する場合は4週間で約8~75万円の医療費がかかり、自己負担額は約2~23万円にのぼります。
参考)抗がん剤治療の費用はいくら?保険適用される?自己負担額を軽減…
免疫チェックポイント阻害薬は最も高額な治療法の一つで、1回の投与あたり約31~56万円の医療費が発生し、3割負担でも約9~17万円の自己負担が必要です。日本の研究によると、抗がん剤治療全体の平均費用は月額約30万8,363円と報告されています。
参考)抗がん剤治療にかかる費用を教えてください。 |大腸がん
大腸がんの治療を例にとると、初回の抗がん剤治療で窓口支払いが7万円を超えることも珍しくありません。特に「エルプラット」と呼ばれる薬剤は100ミリグラムあたり約7万円で、通常使用される120ミリグラムでは8万4,000円ほどかかります。
抗がん剤治療は近年、外来(通院)での治療が中心になってきています。副作用を抑える薬の開発が進んだことで、入院せずに治療を受けられるケースが増えました。外来での治療費は1ヵ月あたり2~6万円程度が目安となります。
参考)https://hoken.kakaku.com/gca/article/1612a.html
入院が必要な場合の費用は、3割負担で約20万~30万円程度となります。厚生労働省の調査によると、がんの入院1件あたりの医療費は部位によって異なりますが、平均的には約60万~180万円(保険適用前)となり、3割負担で約19万~23万円の自己負担が発生します。
参考)がんの治療費は平均自己負担額はいくら?頼れる公的制度はある?…
入院と外来では診療報酬に10倍以上の差が生じているという指摘もあります。外来治療の場合、薬剤費用のほかに診察料、採血検査費用、通院交通費なども必要になります。副作用の倦怠感が強くなるとタクシーを使用する必要があり、交通費の負担も増加します。
参考)https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=78728
農業従事者を含む国民健康保険加入者は、高額療養費制度を利用して医療費の自己負担を大幅に抑えることができます。この制度は、同一月内に医療機関や薬局の窓口で支払った額が自己負担限度額を超えた場合、超過分が後から支給されるものです。
参考)https://crowdloan.jp/guide/medicalloan035/
69歳以下の方の自己負担限度額は所得区分によって異なります。年収約370万円以下の方(国民健康保険加入者で保険料算定の所得額210万円以下)は月額57,600円が上限となります。年収約370~770万円の方は「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」、年収約770~1,160万円の方は「167,400円+(総医療費-558,000円)×1%」が自己負担限度額です。
参考)がん患者さんに対する医療費助成・支援について|血液がんサポー…
同一世帯で同じ月に21,000円以上の自己負担が複数ある場合は、世帯合算して自己負担限度額を超えた額が支給されます。また、過去12ヶ月の間に3回以上高額療養費制度を利用した場合、4ヶ月目からは自己負担限度額がさらに下がる「多数回該当」の仕組みもあります。
参考)医療費が高額になったとき|こんなとき、どうする?|静岡県農業…
厚生労働省の高額療養費制度の詳細ガイド(所得区分別の自己負担限度額一覧表あり)
抗がん剤治療は半年から1年程度続くことが一般的で、さらに転移や再発があれば追加の治療が必要になります。治療期間が半年から1年程度を想定すると、費用の総額は50~100万円程度となります。
術後薬物療法(抗がん剤単独)の場合、1年間で約18~23万円の医療費がかかり、3割負担で約5~7万円の自己負担となります。プラチナ・分子標的薬併用療法は3週間で約40~45万円の医療費、自己負担額は約12~14万円です。
免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブ(オプジーボ)を使用する場合、薬価改定により現在は年間で約1,090万円程度の医療費となっていますが、高額療養費制度を利用することで多くの患者は年間50~100万円程度の負担に抑えることができます。
参考)免疫チェックポイント阻害剤の費用
長期治療になると、医療費だけでなく生活費の確保も重要な課題となります。治療のために仕事を休まざるを得ず収入が減るケースも少なくなく、経済的な負担を抱える可能性があります。
参考)https://www.aflac.co.jp/gan/yokuwakaru/extnl/article/page40.html
農業や自営業を営む方は国民健康保険に加入しており、会社員と比べて収入の変動が大きいという特徴があります。がん治療によって働けなくなった場合、会社員であれば傷病手当金で生活を支えることができますが、国民健康保険にはこの制度がありません。
参考)https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/fukuoka/kenpoiinn/20190601/kogi3-ouyou.pdf
そのため、農業従事者は医療費だけでなく、治療中の生活費や収入減少に対する備えが特に重要です。がん保険への加入を検討する際は、治療費以外のさまざまな費用にも対応できる「がん診断給付金(一時金)」が含まれているタイプが推奨されます。
参考)農家にがん保険は必要?3つの落とし穴についてFPが解説!
JAのがん共済など農業従事者向けの保障制度も選択肢の一つです。診断給付金は100万円から500万円まで自分で金額を設定でき、使途が制限されない自由度の高い給付金として活用できます。
参考)FPが解説!JAのがん共済ってどうなの?必要性などを徹底解説…
保険診療が適用されない先進医療による治療費用や差額ベッド代については全額自己負担となるため、先進医療特約をつけておくことも検討すべきです。先進医療の技術料は全額自己負担となり、重粒子線治療や陽子線治療では約300万円ほどかかることもあります。
参考)https://www.sbisonpo.co.jp/gan/column/column25.html
農林水産省の健康保険制度に関する資料(農業従事者向けの医療費負担についての解説)