発芽試験は、根が出た数を一律7日で数える検査ではありません。播種前の自己チェックと販売種子の標準検定を区別し、作物に合う温度・光・日数で正常芽生えを数えます。未発芽をすべて死滅とせず、反復ごとの乾燥・過湿・温度を確認してから、播種量や種子更新を判断します。農研機構の検査原則
標準検定の例として、農研機構の2024年1月改正マニュアルは純潔種子分画から無作為に400粒を採り、100粒ずつの4反復で調べます。25粒・50粒への分割は、種子の大きさや配置に応じて反復を小区に分ける操作で、総数400粒を25粒へ減らす意味ではありません。依頼検査技術マニュアル1頁
家庭・農家の予備チェックで種子が少ない場合は、例えば25粒ずつ4容器、合計100粒という設計もできます。ただしこれは小規模チェックの提案であり、標準検定と同じ精度・証明力はありません。袋の上部から大粒だけを選ばず、同一ロットから偏らないよう採り、各容器の分母を固定します。腐敗・未発芽を後から分母から除かないでください。20粒なら1粒で5ポイント、100粒なら1粒で1ポイント変わるため、百分率と一緒に粒数も示します。
| 作物 | メーカーの播種条件・日数例 | 農研機構の標準検査例 |
|---|---|---|
| レタス | サカタのタネは15〜20℃、好光性、覆土はごく薄くと案内。25℃以上では休眠に入り発芽が低下。吸水後に冷蔵する芽出しまきの2〜4日は、処理を伴う別の目安 | 紙の上または紙の間、20℃。算定開始4日、締切7日 |
| ニンジン | サカタのタネは15〜25℃、好光性。ベーター536は発芽がそろうまで7〜10日ほど。吸水後の乾燥を避ける | 紙の上または紙の間、20℃または20↔30℃。算定開始7日、締切14日 |
| トマト | サカタのタネは20〜30℃、嫌光性と乾燥防止のため約5mmの覆土を案内。夜間低温・過灌水・過乾燥に注意 | 紙の上・紙の間・砂から選択、20↔30℃。算定開始5日、締切14日 |
メーカー条件はレタスFAQ、レタスの芽出しまき、ニンジンFAQ、ベーター536、トマトFAQ、検査条件は農研機構マニュアル第1表によります。メーカーの出芽日数は、標準検定の正常芽生え算定締切とは別です。20↔30℃は変温であり、その範囲内の好きな温度でよいという意味ではありません。恒温設備しかない家庭試験は実際に使った条件を明記し、変温の標準検定を再現したとは扱いません。
発芽率は、根が出た種子すべてではなく、定めた期間内に正常芽生えとなった種子の割合で評価します。根・胚軸・子葉など、その作物に必要な構造と発達を確認するため、根長5mmを全種子共通の合格基準にはしません。発芽勢は早期の発芽の揃いをみる指標で、最終発芽率とは別です。早期に少なくても後から追いつく場合があるため、早期算定日と最終算定日の両方を記録します。正常芽生えに基づく発芽率の定義、タキイ種苗による発芽勢と発芽率の区別
湿紙による家庭・農家の予備チェックでは、乾燥させないことと、水中に沈めないことを両立させます。ろ紙2枚に水3gのような固定量では、紙の寸法・厚さ・保水性が変わると同じ条件になりません。トマトでは過灌水による酸欠と灌水間の過乾燥の双方が発芽不良の原因として案内されています。サカタのタネ・発芽不良の原因
これは標準検定の「反復を設け、好適な水分条件で検査する」という原則を、小規模チェックへ具体化した手順です。農研機構も、カビ・細菌の蔓延、明白な条件・計数誤り、反復差が大きい場合などを再検査の理由としています。2回の平均を取れば誤差5%以内になるという保証はありません。再検査の条件
最終日に残った種子は、一括して死滅としません。標準検定では、吸水しない硬実、吸水しても発芽しない新鮮種子、死滅種子などを分けます。家庭で生死を判別できないものは「未発芽・生死未確認」と残します。腐敗は外観所見として記録しますが、カビがあるだけで種子伝染性病害やロット全体の死滅を断定しません。休眠が疑われる場合は、作物に合う温度・光を再確認し、必要な処理を別試験として記録します。レタスを高温に置いて発芽しなかった結果は、そのまま低活力の証拠にはできません。検査区分と休眠時の再検査、レタスの高温休眠
記録は、品種・ロット・採種年または購入年・保存条件・種子処理の有無・試験粒数・反復数・発芽床・加水・温度・光・各算定日の数を一組にします。標準検定と比較するには、正常芽生えだけでなく、異常芽生えと未発芽の内訳も必要です。記録すべき検査条件と区分
以下は計算方法を示す仮例で、実測結果ではありません。25粒×4容器の最終正常芽生えが20・21・19・20本なら、合計80本÷100粒=80%です。早期算定日に正常芽生えが合計60本だったなら、その条件での早期割合60%と最終80%を分けて残します。早期割合だけを最終発芽率とは呼びません。
必要な苗が1000本で、試験発芽率を80%、正常発芽後に定植可能苗まで残る割合を過去の育苗記録から90%と仮定するなら、必要播種数は1000÷0.80÷0.90=1388.9粒なので、少なくとも1389粒です。90%は説明用の仮定で、他の農家へ共通適用する係数ではありません。圃場の乾燥・土塊・深まき・食害などによる損失を、湿紙試験の発芽率だけで織り込むことはできません。
実際の培土・播種深・灌水で出芽するかも知りたい場合は、標準に近い発芽チェックと別に、使用予定のトレーや畑で小区の出芽確認を行い、分けて記録します。標準検査では土壌・培土が一次検査の発芽床に一般に適当でないとされるため、培土試験の値を標準検定値へ読み替えないでください。発芽床の扱い
家庭の発芽チェック、指定種苗の表示・品質管理、公的な品質証明は分けて考えます。農林水産省の指定種苗の生産等に関する基準は、正常芽生えを生じる種子の割合を発芽率とし、作物別の調整基準を定めています。全作物一律に「80%未満では販売認可が下りない」と定めたJAS制度ではありません。指定種苗の生産等に関する基準
農研機構種苗管理センターの検査報告書と国際種子検査証明書は、種子取引の公的な品質証明として利用されます。販売表示や取引の証明が必要なら、自己試験の結果だけで認定せず、必要な検査・試料採取方法を検査機関へ確認します。農作物の種苗検査
関連用語・資料:発芽率
画像記録を使う場合も、画像上で根が見えた数と正常芽生えの数は分けます。撮影日時、容器番号、粒数、温度・光条件を対応させ、同じ芽生えを重複して数えないようにします。標準検定が正常芽生・異常芽生・未発芽種子の区分を求めている以上、自動発根カウントだけを最終発芽率の判定へ置き換えることはできません。検査で必要な評価区分
関連用語・資料:農研機構 / 農研機構|発芽試験の技術マニュアル