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  • アセフェート毒性とメタミドホス変化の農薬残留基準
    アセフェート毒性のポイント ⚠️ メタミドホスへの変化 アセフェートは植物や昆虫の体内で、より毒性の強いメタミドホスに代謝されます。 📉 残留基準の厳格化 ARfD(急性参照用量)の導入により、トマトやナスなどの使用基準が厳しくなりました。 🛡️ 適切な防護対策 有機リン系特有の中毒症状を防ぐため、散布時の保護具着用と洗浄が不可欠です。 アセフェートの毒性と農薬農業生産の現場において、アブラムシやヨトウムシなどの害虫防除に欠かせない薬剤として長年親しまれてきたのが、アセフェートを有効成分とする殺虫剤です。特に「オルトラン」の商品名で知られるこの薬剤は、浸透移行性という優れた特性を持ち、作物の隅々まで効果が行き渡るため、多くの農家にとって信頼の置ける資材となっています。しかし、その利便性の裏には、必ず理解しておかなければならない「毒性」のリスクが潜んでいます。アセフェート自体は、日本の毒物及び劇物取締法において「普通物」に分類されており、劇物や毒物に比べれば取り扱いが容易であると認識されがちです。しかし、この「普通物」という分類が、時として現場の油断を招く原因となることがあります。アセフェートの毒性を深く理解するためには、単に薬剤そのものの有害性を見るだけでは不十分です。なぜなら、この物質は環境中や生物の体内で化学変化を起こし、別の物質へと姿を変える性質を持っているからです。農業従事者が知るべき真のリスクは、散布したアセフェートがどのように変化し、それが作物や人体、そして環境にどのような影響を及ぼすかというプロセスの中にあります。近年、食品安全に対する消費者の意識が高まり、国際的な残留農薬基準の調和が進む中で、アセフェートに対する評価も大きく変わりつつあります。かつては安全だと考えられていた使用方法が、最新の科学的知見に基づくとリスクが高いと判断されるケースも出てきています。本記事では、アセフェートという化学物質が持つ本来の性質から、代謝物であるメタミドホスの危険性、そして近年の法改正に伴う残留基準の変更点までを徹底的に掘り下げます。農薬取締法や食品衛生法の改正は、日々の農作業に直結する重大なトピックです。「今まで大丈夫だったから」という経験則だけで使い続けることは、出荷停止や回収命令といった経営リスクに直結するだけでなく、生産者自身の健康を損なう可能性すらあります。正しい知識を身につけ、科学的根拠に基づいた適正使用を実践することこそが、持続可能な農業経営への第一歩となります。ここでは、表面的な安全性情報にとどまらず、プロフェッショナルな農家として押さえておくべき毒性学的なメカニズムと、現場で即座に役立つ安全管理の知識を詳細に解説していきます。食品安全委員会によるアセフェートのハザード概要と応急処置についてはこちらハザード概要シート(案)(アセフェート)参考)https://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/noyaku_22.pdf​オルトラン農薬に含まれるアセフェート毒性の基礎アセフェート(Acephate)は、有機リン系に属する殺虫剤の一種であり、その化学構造にはリン原子が含まれています。農業現場で最も頻繁に目にするのは「オルトラン粒剤」や「オルトラン水和剤」といった製品でしょう。これらの薬剤が支持される最大の理由は、優れた浸透移行性にあります。根や葉から吸収された成分が植物体の導管を通じて全体に行き渡るため、薬剤がかかりにくい葉の裏や新芽に潜む吸汁性害虫に対しても高い防除効果を発揮します。しかし、この「成分が植物体内に留まる」という性質こそが、毒性と残留の問題を考える上で非常に重要なポイントとなります。アセフェートの毒性メカニズムは、他の有機リン系殺虫剤と同様に、神経伝達物質であるアセチルコリンの分解酵素「アセチルコリンエステラーゼ(AChE)」の働きを阻害することにあります。昆虫やヒトの神経系では、アセチルコリンが情報の伝達役を担っていますが、役目を終えたアセチルコリンは速やかに分解されなければなりません。アセフェートが体内に入ると、この分解酵素と結合してその機能を奪ってしまいます。その結果、分解されないアセチルコリンが神経の接合部に異常に蓄積し、神経が興奮し続ける状態を引き起こします。これが、害虫が痙攣して死に至る理由であり、同時にヒトが中毒を起こすメカニズムでもあります。「普通物」であるアセフェートは、経口毒性(口から入った場合の毒性)や経皮毒性(皮膚から吸収された場合の毒性)の数値だけを見れば、パラチオンなどの猛毒な有機リン剤と比較して低い値を示します。マウスやラットを用いた実験データにおいても、致死量は比較的多く設定されています。しかし、これはあくまで「急性毒性」の指標に過ぎません。慢性的な暴露や、長期的な摂取による影響については、より慎重な評価が必要です。特に、粒剤を使用する場合、手軽に散布できる反面、粉塵を吸い込んだり、素手で触れてしまったりするリスクが見過ごされがちです。成分がゆっくりと溶け出し、長期間効果が持続するということは、それだけ環境中や作物中に化学物質が存在し続ける期間が長いことを意味します。また、製剤ごとの濃度の違いにも注意が必要です。一般家庭向けの園芸用オルトランと、プロ農家向けの業務用製剤では、アセフェートの含有量が異なります。当然、濃度が高ければ高いほど、取り扱い時のリスクは増大します。水和剤の調製時に粉末が舞い上がり、それを吸入してしまう事故や、濃厚な調製液が皮膚に付着して吸収される事故は、繁忙期の焦りの中で発生しやすくなります。アセフェートは水溶性が高いため、皮膚についた汗や水分とともに体内に吸収されやすい性質を持っています。この「水に溶けやすい」という特性は、植物への吸収を助ける一方で、人体への浸透も容易にしてしまうという諸刃の剣であることを、我々は常に意識しなければなりません。農薬の毒性分類やアセフェートの基本的な性質に関する解説はこちらオルトランの使い方と特徴|GFとDX粒剤・水和剤と液剤の違い参考)オルトランの使い方と特徴|GFとDX粒剤・水和剤と液剤の違い…​代謝物メタミドホスが引き起こす毒性のメカニズムアセフェートの毒性を語る上で、絶対に避けて通れないのが「メタミドホス(Methamidophos)」の存在です。実は、アセフェートそのものの殺虫活性はそれほど強くありません。アセフェートが昆虫の体内に取り込まれると、代謝酵素によって加水分解され、分子構造の一部が変化してメタミドホスという物質に変わります。このメタミドホスこそが、極めて強力なアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を持ち、アセフェートの本来の殺虫力を発揮させる正体なのです。これを「代謝活性化」と呼びます。問題は、この代謝変化が昆虫の体内だけでなく、哺乳類であるヒトの体内や、植物の組織内でも同様に起こるという点です。メタミドホスは、かつて中国製冷凍餃子中毒事件で検出された原因物質として広く一般にその名を知られることとなりました。あの事件が示した通り、メタミドホスはアセフェートに比べて遥かに高い神経毒性を持ちます。アセフェート自体は毒性が低くても、体内で毒性の高い物質に変わる(バイオアクティベーション)という特性が、この農薬のリスク評価を複雑にしています。植物体内でアセフェートがメタミドホスに変化する割合は、作物の種類や気温、経過日数によって異なります。一般に、アセフェートを散布した後、植物体内で徐々にメタミドホスが生成され、一定期間残留します。つまり、収穫された野菜には、散布したアセフェートだけでなく、そこから生成されたメタミドホスも同時に含まれている可能性があるのです。このため、残留農薬検査においては、アセフェート単体の濃度だけでなく、メタミドホスの濃度も合算して評価する必要があります。毒性の強いメタミドホスが微量でも検出されれば、それは食品としての安全性を脅かす要因となり得ます。毒性の強さを比較すると、メタミドホスのアセチルコリンエステラーゼ阻害能力はアセフェートの数十倍から百倍以上とも言われています。これは、同じ量を摂取した場合、メタミドホスの方が圧倒的に深刻な中毒症状を引き起こすことを意味します。さらに、メタミドホスは神経毒性遅発性(OPIDN)と呼ばれる、暴露から数週間後に現れる手足の麻痺などの後遺症を引き起こすリスクも指摘されています。アセフェートを使用するということは、間接的にこの強力な毒性物質を扱っているのと同義であることを、農薬散布者は強く認識する必要があります。現在の日本の農薬登録制度では、メタミドホスそのものを有効成分とする農薬は登録されていません。しかし、アセフェート剤を使用することで、結果的に環境中や作物上にメタミドホスを生成させてしまうリスクは残ります。この「見えない毒性変化」こそが、アセフェート製剤を使用する際に最も警戒すべき点であり、後述する残留基準の厳格化の主たる要因ともなっています。アセフェートの代謝とメタミドホスの毒性に関する詳細な研究情報はこちらDegradation of Acephate and Its Intermediate Methamidophos参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7461891/​残留基準値の改正とARfD評価による使用制限近年、日本国内におけるアセフェートの使用基準は大きく変化しました。その背景にあるのが「ARfD(急性参照用量)」という新しい安全性評価指標の導入です。従来の農薬評価では、主に「ADI(一日摂取許容量)」が重視されてきました。これは、人間が一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康に影響が出ない量を定めたもので、慢性毒性の防止に主眼を置いています。しかし、一度に大量の残留農薬を摂取した場合の急性毒性のリスクについては、ADIだけでは十分に評価しきれないという課題がありました。そこで導入されたのがARfDです。ARfDは「24時間またはそれより短い時間の間に摂取しても、健康に悪影響を示さない量」と定義されています。つまり、たった一回の食事で、基準値ギリギリの残留農薬を含む野菜を大量に食べたとしても安全かどうかを判断するための指標です。アセフェートおよびその代謝物であるメタミドホスは、急性毒性が比較的強い物質であるため、このARfDによる評価を行うと、従来よりも遥かに厳しい管理が必要であることが判明しました。この評価見直しの結果、2010年代後半以降、特定の作物におけるアセフェートの残留基準値が大幅に引き下げられました。特に影響を受けたのが、トマト、ナス、ピーマン、キュウリなどの果菜類や、小松菜などの葉菜類です。例えば、以前は使用可能だった収穫前日数の散布が、新しい基準では残留量がARfDを超過する恐れがあるとして禁止されたり、使用回数が制限されたりといった変更が相次ぎました。かつての「収穫前日まで使える便利な薬剤」という認識のまま使用を続けると、現在では残留基準値違反(ポジティブリスト違反)となり、出荷停止や回収騒ぎに発展する可能性が極めて高いのです。具体的には、厚生労働省が定める残留基準値において、アセフェートとメタミドホスの合計値が規制の対象となります。メタミドホスは毒性が強いため、アセフェートよりもさらに低い濃度での検出しか許容されません。現場の農家にとって厄介なのは、同じアセフェート剤を使用していても、作物の種類によって代謝のスピードや残留の仕方が異なる点です。ある作物では分解が早くても、別の作物では高濃度のメタミドホスとして長く留まることがあります。このため、登録変更情報は常に最新のものを確認しなければなりません。農協や普及センターから配布される防除暦が最新の基準に対応しているか、自身が持っている古い在庫の農薬ラベルが現在の法律に適合しているかを確認することは、経営を守るための必須事項です。また、海外への輸出を考えている生産者にとっては、さらに複雑な問題が生じます。国によってARfDの設定値や残留基準値が異なるため、日本国内の基準を満たしていても、輸出先国の基準では違反となるケースがあるからです。アセフェートは世界的に規制強化のトレンドにある農薬の一つであり、欧州などでは既に使用が禁止されている国もあります。グローバルな視点で見ても、アセフェートの使用は「より慎重に、より限定的に」なっていく傾向にあることは間違いありません。残留基準の変更とそれに伴う使用上の注意点についての解説はこちら有機リン剤アセフェートの残留基準が改正、使えなくなる作物も参考)有機リン剤アセフェートの残留基準が改正、使えなくなる作物も …​作業時に現れる急性中毒症状と緊急時の対処法農薬散布作業において、最も避けなければならないのが作業者自身の被曝による急性中毒です。アセフェートを含む有機リン系殺虫剤による中毒症状は、特徴的かつ急速に進行するため、初期症状を見逃さないことが生死を分ける鍵となります。体内に吸収されたアセフェート(および代謝されたメタミドホス)が神経系を阻害し始めると、まず現れるのが「縮瞳(しゅくどう)」と呼ばれる症状です。瞳孔が極端に収縮し、針の穴のように小さくなる現象で、これに伴い視界が暗くなったり、視野が狭くなったりする感覚を覚えます。続いて、副交感神経の過剰な興奮により、全身の分泌腺が異常に活性化します。大量の発汗、止まらない流涙、鼻水、そして過剰な唾液分泌(流涎)が典型的な症状です。同時に、消化管の運動も異常に亢進するため、激しい吐き気、嘔吐、腹痛、下痢といった消化器症状が襲ってきます。さらに症状が進行すると、筋肉の不随意な収縮(線維性収縮)が始まり、まぶたや顔の筋肉がピクピクと痙攣し始めます。重症化すると、全身の痙攣、呼吸筋の麻痺による呼吸困難、意識消失、そして最悪の場合は呼吸不全により死に至ります。これらの症状は、散布中だけでなく、散布終了後数時間経ってから現れることもあります。特に夏場の高温多湿な環境下での作業は、皮膚の血流が増加し、発汗によって毛穴が開いているため、経皮吸収の速度が格段に速まります。合羽などの保護具を着用していても、袖口や襟元から侵入した薬液が汗と混じって皮膚に密着し続けることで、知らぬ間に大量の薬剤を吸収してしまうケースが後を絶ちません。作業中に「なんとなく気分が悪い」「目がチカチカする」と感じたら、それは熱中症ではなく農薬中毒の初期サインである可能性を疑うべきです。万が一、中毒症状が疑われる場合の対処法として、最も重要なのは「暴露の遮断」です。直ちに作業を中止し、風通しの良い場所へ移動します。皮膚に薬剤が付着している場合は、汚染された衣服をすべて脱ぎ去り、石鹸と大量の水で全身を徹底的に洗浄します。特に髪の毛や爪の間は薬剤が残りやすいため、念入りに洗う必要があります。目に薬剤が入った場合は、流水で15分以上洗眼します。そして、一刻も早く医療機関を受診することが不可欠です。受診の際は、必ず「アセフェート(オルトラン)を使用した」こと、そして「有機リン系殺虫剤である」ことを医師に伝えてください。有機リン中毒には、特異的な解毒剤として「硫酸アトロピン」や「PAM(パム)」が存在します。これらの解毒剤は、早期に投与されれば劇的な効果を発揮し、救命率を大幅に高めることができます。逆に、原因物質が特定できないまま時間が経過すると、治療が遅れ、重篤な後遺症を残すリスクが高まります。農薬のラベルや空袋(空ボトル)を持参することも、医師が適切な診断を下すための大きな助けとなります。現場には常に緊急連絡先と最寄りの医療機関の情報を掲示し、単独作業を避けるなどの安全管理体制を整えておくことが、農家の命を守る最後の砦となります。農薬中毒の具体的な症状と治療法に関する専門的なガイドラインはこちら農薬中毒の症状と治療法(農薬工業会)参考)https://www.j-poison-ic.jp/wordpress/wp-content/uploads/nouyaku18_200427.pdf​土壌環境でのアセフェート分解と微生物への影響最後に、あまり一般的には語られることの少ない視点として、土壌中におけるアセフェートの挙動と微生物への影響について解説します。農薬は作物に散布された後、その多くが土壌へと落下します。土壌に到達したアセフェートは、太陽光による光分解や、雨水による加水分解だけでなく、土壌中に生息する微生物たちの働きによって分解されていきます。この「生物分解」のプロセスは、環境中での残留期間を決定づける重要な要素です。研究によると、特定のアスペルギルス属の菌類やシュードモナス属の細菌などが、アセフェートを栄養源として利用し、分解する能力を持っていることが分かっています。これらの微生物は、アセフェートの分子構造を切断し、最終的には無機リンや二酸化炭素といった無害な物質へと変換してくれます。しかし、この分解プロセスの途中段階においても、やはり有害な「メタミドホス」が生成される経路が存在します。土壌の条件(pH、温度、水分量、有機物含量)によっては、アセフェートの分解が進まずに残留したり、あるいは分解途中のメタミドホスが土壌中に一時的に蓄積したりする現象が起こり得ます。特に注意が必要なのは、微生物活性が低い土壌環境です。有機物が少なく痩せた土壌や、過度な化学肥料の使用によって微生物相が貧弱になっている圃場では、農薬の分解能力そのものが低下している可能性があります。このような土壌では、想定よりも長くアセフェートやメタミドホスが残留し、後作の作物に吸収されたり、地下水へと流出したりするリスクが高まります。逆に、堆肥などを適切に投入し、豊かな微生物相を持つ土壌では、農薬の分解が無害化の方向へ速やかに進む傾向があります。土作りは、単に作物の生育を良くするだけでなく、環境汚染のリスクを低減するという意味でも極めて重要な役割を果たしています。また、アセフェート自体が土壌微生物の生態系に与える影響も無視できません。一部の研究では、高濃度のアセフェートが特定の有用微生物(窒素固定菌など)の活動を阻害し、土壌の肥沃度に関わる窒素循環に悪影響を及ぼす可能性が示唆されています。農薬は害虫を殺すためのものですが、土壌という微細な生命のネットワークに対しては、予期せぬ攪乱要因となり得ます。「土壌消毒」ではなく通常の地上散布であっても、ドリフトや落下によって土壌生態系に負荷をかけているという認識を持つことが、持続可能な農業を営む上での新たな視点として求められています。アセフェートの毒性は、目に見える害虫や人体への影響だけでなく、足元の土壌という見えない世界にも波及しています。アセフェートの環境中での分解プロセスに関する学術的な情報はこちらThe mechanisms and process of acephate degradation参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5816013/​住友化学園芸 殺虫殺菌剤 GFオルトランC 420ml エアゾール 速効 持続 バラ 虫 病気
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  • アブラムシに殺虫剤が効かない?抵抗性とローテーションの対策
    アブラムシに殺虫剤が効かない アブラムシ対策の重要ポイント 🔄 ローテーション防除 同じ系統の薬剤を連用せず、RACコードを確認して異なる作用機序の薬剤を順番に使用することで抵抗性の発達を防ぎます。 🛡️ 気門封鎖剤の活用 油やデンプンなどでアブラムシの呼吸口を物理的に塞ぐ薬剤は、抵抗性に関係なく効果を発揮するため、ローテーションの柱になります。 🌱 肥料管理と散布技術 窒素過多による発生助長を防ぎ、葉裏まで薬剤を届ける丁寧な散布を行うことが、薬剤の効果を最大限に引き出す鍵です。 アブラムシが死なない最大の原因は薬剤抵抗性アブラムシに対して殺虫剤を散布しても効果が感じられない場合、その最大の原因は「薬剤抵抗性」の発達にあります。アブラムシは繁殖サイクルが非常に短く、1シーズンに何度も世代交代を繰り返します。この驚異的な繁殖スピードの中で、薬剤に対する耐性を持つ個体が偶然生き残ると、その遺伝子を受け継いだ子孫が爆発的に増殖してしまうのです。参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10094857/​特に、同じ種類の殺虫剤や、同じ作用機序(殺虫メカニズム)を持つ薬剤を繰り返し使用し続けると、その薬剤が効かない「スーパーアブラムシ」とも呼べる抵抗性個体群が圃場(ほじょう)全体を占拠することになります。これを「薬剤抵抗性の発達」と呼びます。一度抵抗性がついてしまうと、規定倍率で散布しても死なないばかりか、天敵となる昆虫だけが死滅し、かえってアブラムシの密度が高まる「リサージェンス(湧き戻り)」現象を引き起こすリスクさえあります。参考)ローテーションでアブラムシ防除対策 ​従来の有機リン系や合成ピレスロイド系の殺虫剤は、長年の使用によって多くの地域で抵抗性が確認されています。また、比較的新しいネオニコチノイド系の薬剤であっても、連用すれば確実に効き目は落ちていきます。重要なのは、アブラムシが「なぜ死なないのか」を正しく理解し、単に薬の濃度を上げたり回数を増やしたりするのではなく、根本的な防除戦略を見直すことにあります。抵抗性は、特定の薬剤に対して鍵穴が合わなくなるようなもので、一度獲得されると簡単には消えません。繁殖スピードの速さ: 短期間で世代交代するため、抵抗性遺伝子が広まりやすい。薬剤の選抜圧: 薬剤散布により、弱い個体が死に、強い個体だけが生き残る選抜が繰り返される。複合抵抗性: 複数の異なる薬剤に対して同時に抵抗性を持つ厄介な個体も出現している。無農薬でアブラムシを駆除、防除する方法を徹底解説! - 抵抗性の問題背景と代替手段について詳述されています。アブラムシ防除の基本はRACコードでのローテーション薬剤抵抗性の発達を防ぎ、殺虫剤の効果を維持するために不可欠なのが「ローテーション防除」です。これは、異なる作用機序を持つ薬剤を順番に使う手法ですが、単に商品名を変えるだけでは意味がありません。多くの殺虫剤は、商品名が違っても有効成分が同じ系統(同じ殺虫メカニズム)である場合が多いからです。参考)https://www.fmc-japan.com/trendinfo/irac/02​ここで重要になるのが「RACコード(ラックコード)」です。RACコードとは、殺虫剤の作用機構分類を数字やアルファベットで示したもので、農薬のラベルや製品情報に記載されています。例えば、ネオニコチノイド系は「4A」、有機リン系は「1B」といった具合です。ローテーション防除を行う際は、このコードが重ならないように薬剤を組み合わせる必要があります。「4A」を使った次は、「28(ジアミド系)」や「9B(ピメトロジン)」を使うといった具合に、系統の異なる薬剤を回していくのです。参考)【抵抗性を付けさせない】RACコードでローテーション防除20…​さらに、高度な防除戦略として「世代間ローテーション」という考え方もあります。アブラムシの一世代(卵から成虫になり卵を産むまで)の間には同じ薬剤を使わず、世代が入れ替わるタイミングで薬剤の系統を切り替えることで、抵抗性遺伝子の定着をより確実に防ぐことができます。RACコード系統名代表的な有効成分特徴4Aネオニコチノイド系アセタミプリド、ジノテフラン浸透移行性が高く、長期間効果が持続するが抵抗性がつきやすい。1B有機リン系マラソン、アセフェート古くから使われており、速効性があるが抵抗性が顕著な地域も多い。28ジアミド系シアントラニリプロール筋肉の収縮を制御し、摂食活動を停止させる。比較的新しい系統。9Bピリジンアゾメチン誘導体ピメトロジン口針を麻痺させて吸汁を阻害する。即効性は低いが餓死させる。UN気門封鎖剤などデンプン、マシン油物理的に作用するため、RACコードによる抵抗性管理の対象外(自由に組み込める)。【抵抗性を付けさせない】RACコードでローテーション防除 - RACコードを用いた具体的なローテーション事例が紹介されています。アブラムシに効く気門封鎖剤という選択肢化学合成された殺虫成分に抵抗性を持ってしまったアブラムシに対して、絶大な効果を発揮するのが「気門封鎖剤(きもんふうさざい)」です。これは、デンプンや還元澱粉糖化物、植物油などを主成分とする薬剤で、虫の体表にある気門(呼吸をする穴)を物理的に塞いで窒息死させるという、極めてシンプルなメカニズムで作用します。参考)いちごアブラムシおすすめ農薬!気門封鎖型, 回数制限なし, …​気門封鎖剤の最大のメリットは、「抵抗性がつかない」ことです。化学的な神経毒ではなく、物理的に窒息させるため、アブラムシがどんなに遺伝子変異を起こしても、呼吸ができなければ死んでしまいます。そのため、ローテーションの回数制限にカウントされない(または制限が緩い)ことが多く、抵抗性対策の切り札として、あるいは収穫前日の防除としても非常に重宝します。​ただし、気門封鎖剤には使用上のコツがあります。それは「虫体に直接薬剤がかからないと効果がない」という点です。浸透移行性がないため、葉の裏に隠れているアブラムシに薬液が直撃しなければ、窒息させることはできません。そのため、散布の際は丁寧かつ十分な量を撒く必要があります。また、展着剤を含んでいるものや、展着剤不要のものなど製品によって特性が異なるため、仕様を確認することが大切です。エコピタ液剤: 還元澱粉糖化物が主成分。食品由来で安心感があり、物理的に固めて窒息させる。粘着くん液剤: デンプンが主成分。乾燥すると膜を張り、アブラムシを動けなくして窒息させる。マシン油乳剤: 油膜で気門を塞ぐ。冬場の越冬害虫防除によく使われるが、生育期に使えるものもある。アーリーセーフ: 脂肪酸グリセリドが主成分。うどんこ病などの病気にも同時に効果がある場合が多い。アブラムシを駆除する!化学合成農薬を使わない対策~天敵・気門封鎖剤~ - 気門封鎖剤の仕組みとメリットについて詳しく解説されています。アブラムシを逃さない葉裏への散布テクニックどれほど効果の高い殺虫剤を選んでも、アブラムシがいる場所に届かなければ意味がありません。アブラムシの多くは、天敵や直射日光、雨を避けるために「葉の裏」に密集しています。上から漫然とスプレーするだけでは、葉が傘の役割をしてしまい、肝心のアブラムシには一滴も薬がかかっていないというケースが非常に多いのです。これが「殺虫剤が効かない」と感じる隠れた大きな原因の一つです。参考)アブラムシの駆除方法とは?初心者でも簡単にできる5つの対策 ​プロの農家は、ノズルの向きを工夫して下から上へ向かって散布したり、葉をめくりながら丁寧に散布したりします。家庭菜園や小規模な栽培でも、ノズルの先端が可動式の噴霧器を使用し、ノズルを上に向けて葉の裏側にしっかり薬液が当たるように意識するだけで、防除効果は劇的に向上します。また、「展着剤(てんちゃくざい)」の併用も効果的です。アブラムシの体表はワックス状の物質で覆われており、水を弾く性質があります。展着剤を農薬に混ぜることで、薬液の表面張力が下がり、アブラムシの体に薬が馴染みやすくなります。特に気門封鎖剤を使用する場合や、ワックス層が厚いアブラムシ(ダイコンアブラムシなど)を防除する場合は、展着剤の機能が成否を分けることもあります。逆さ散布: スプレーやノズルを下から上に向けて、葉の裏側を狙い撃ちする。高圧散布: ある程度の勢いを持って噴霧することで、葉の隙間や密集部分に薬剤を到達させる。十分な液量: 葉からポタポタと滴り落ちるくらい(十分量)散布するのが基本。展着剤の活用: 虫体への付着性を高める機能を持つ展着剤(スカッシュなど)を選ぶ。ローテーションでアブラムシ防除対策 - 薬剤散布の際のポイントや浸透移行性の活用について触れられています。アブラムシを増やさないための窒素肥料の管理殺虫剤選びや散布方法と同じくらい重要なのが、そもそも「アブラムシが増えにくい環境を作る」ことです。ここで見落とされがちなのが「肥料(特に窒素分)」の管理です。実は、アブラムシは窒素肥料が過剰に効いている植物を好んで寄ってきます。参考)アブラムシが発生する原因とは?アブラムシの退治方法と予防方法…​植物は根から吸収した窒素を材料に、体内でアミノ酸を合成してタンパク質を作ります。窒素肥料を与えすぎると、植物体内で消費しきれないアミノ酸がだぶついた状態になります。アブラムシはこのアミノ酸が大好物なのです。つまり、良かれと思って肥料をたっぷり与えることは、アブラムシにとって「ご馳走」を用意して招待しているようなものです。「殺虫剤が効かない」と嘆く前に、葉の色が濃すぎないか、葉が大きく薄く徒長していないかを確認してください。これらは窒素過多のサインです。適正な施肥量を守り、植物を健康にがっしりと育てることは、細胞壁を強くし、アブラムシが口針を刺しにくい状態を作ることにもつながります。これは農薬に頼らない「耕種的防除」の基本であり、プロの農業現場でも重視されているテクニックです。即効性はありませんが、長期的には農薬の使用回数を減らし、抵抗性リスクを下げるための土台となります。アブラムシの駆除方法とは?初心者でも簡単にできる5つの対策 - 窒素過多とアブラムシ発生の関係性について解説されています。フマキラー カダン 花 野菜 ガーデニング 駆除 殺菌 スプレー カダンセーフ 250ml
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  • 有機リン系 殺虫剤の毒性と基準!抵抗性対策とスミチオンの謎
    有機リン系殺虫剤の基礎知識 有機リン系 殺虫剤の重要ポイント 💊 作用機序の基本 アセチルコリンエステラーゼを阻害し、神経伝達を攪乱させて殺虫します。 🔄 抵抗性とローテーション IRACコード1Bに分類され、1A(カーバメート系)との連用は避ける必要があります。 🌏 日本で使われる理由 高温多湿な日本の害虫事情に合わせ、厳格な基準下で有用性が認められています。 有機リン系 殺虫剤の作用機序とアセチルコリンエステラーゼの阻害農業の現場で長年愛用されている有機リン系殺虫剤ですが、その作用機序(虫が死ぬ仕組み)を正確に理解している人は意外と少ないかもしれません。有機リン系薬剤は、昆虫の神経系にある酵素「アセチルコリンエステラーゼ」の働きを阻害することで効果を発揮します。通常、昆虫(そして人間などの哺乳類も)の神経伝達には「アセチルコリン」という物質が使われます。神経の命令が次の神経に伝わった後、このアセチルコリンは速やかに分解されなければなりません。その分解役を担うのがアセチルコリンエステラーゼです。有機リン剤はこの酵素と強力に結びつき、その働きを止めてしまいます。結果として、分解されずに溜まったアセチルコリンが神経を過剰に刺激し続けます。これにより、害虫は異常な興奮状態に陥り、痙攣(けいれん)や麻痺を起こし、最終的に死に至ります。これが「神経毒」と呼ばれる所以です。この作用は即効性が高く、散布してすぐに虫がポトポトと落ちる「ノックダウン効果」が見込めるため、大発生した害虫を緊急で叩く際に非常に頼りになります。しかし、このメカニズムは人間も持っている共通のものです。そのため、人間が大量に吸い込んだり触れたりした場合も、同様に神経系の異常(縮瞳、発汗、吐き気など)を引き起こすリスクがあります。これが「有機リン系は毒性が強い」と言われる科学的な理由です。ただし、近年の製剤は人間などの哺乳類に対しては体内で速やかに分解・解毒されるよう改良が進んでおり、用法用量を守れば安全に使用できるよう設計されています。中毒110番・電話相談(日本中毒情報センター) - もしもの時のための連絡先と応急処置の知識代表的な剤型のスミチオンとマラソンの使い分けと浸透移行性ホームセンターや農協で必ず目にする「スミチオン」や「マラソン」。これらは全て有機リン系ですが、それぞれの特徴を理解して使い分けることで、防除効率は劇的に変わります。また、オルトランのように浸透移行性を持つかどうかも重要な選定基準です。主な有機リン系殺虫剤の特徴と使い分けを整理しました。薬剤名(成分名)特徴と使い分けのポイント浸透移行性マラソン乳剤(マラソン)【家庭菜園の王道】野菜から果樹まで登録作物が非常に広いのが特徴です。毒性が比較的低く、分解が早いため、収穫までの期間が短い作物にも使いやすいです。アブラムシやハダニなど広範囲の害虫に効きますが、残効性は短めです。ほぼ無し(接触・食毒)スミチオン乳剤(MEP)【プロ農家の定番】マラソンよりもさらに殺虫スペクトルが広く、カメムシ類やシンクイムシ類など、硬い虫や内部に入り込む虫にも効果が高いです。植物体組織への浸透力がややあり、葉の裏にいる虫にも効きやすいですが、アブラナ科や特定の果樹品種(高温時の散布など)で薬害が出やすい点に注意が必要です。わずかにあり(深達性)オルトラン(アセフェート)【手間いらずの持続型】最大の特徴は強力な浸透移行性です。根や葉から吸収された成分が植物全体に行き渡り、汁を吸った虫や葉を食べた虫を退治します。効果が長持ちするため、予防的な散布に適していますが、収穫直前の使用には制限が多い場合があります。あり(強力)DDVP(ジクロルボス)【ガス効果の即効型】気化しやすく、薬剤がガスとなって隙間に潜む害虫に届きます(蒸散作用)。ビニールハウス内での燻煙処理などで威力を発揮しますが、残効性は極めて短く、吸入毒性に特に注意が必要です。なし(蒸散・接触)このように、同じ有機リン系でも「今すぐ目の前の虫を殺したいならマラソンやDDVP」「作物を守り続けたいならオルトラン」といった使い分けが重要です。特にオルトラン粒剤などは定植時に撒くだけで初期防除ができるため、省力化に貢献します。一方で、スミチオンとマラソンを混用して「スミマラ」として販売されている製剤もあり、両者のメリット(即効性とスペクトルの広さ)を掛け合わせた使い方も一般的です。抵抗性発達のメカニズムとIRACコード1Bのローテーション「最近、スミチオンが効かなくなった気がする」…そう感じたことはありませんか?それは害虫が薬剤に対する抵抗性を獲得しているサインかもしれません。ここで農業従事者が絶対に知っておかなければならないのが、IRAC(アイラック:殺虫剤抵抗性対策委員会)の作用機構分類コードです。有機リン系殺虫剤は、IRACコードの「1B」に分類されます。抵抗性対策の基本は「異なるコードの薬剤をローテーション散布する」ことですが、ここで多くの人が陥る罠があります。それは「カーバメート系(コード1A)」との関係です。有機リン系(1B):アセチルコリンエステラーゼ阻害カーバメート系(1A):アセチルコリンエステラーゼ阻害ご覧の通り、有機リン系(1B)とカーバメート系(1A)は、実は「作用点が全く同じ」なのです。これを「交差抵抗性」と呼びます。つまり、有機リン系が効かなくなった害虫に対して、「種類を変えよう」と思ってカーバメート系(デナポンやランネートなど)を散布しても、効果が薄い可能性が高いのです。正しいローテーションの例:× 悪い例:スミチオン(1B) → デナポン(1A) → マラソン(1B)(すべて神経の同じ場所を攻撃しており、実質連用と同じ)○ 良い例:スミチオン(1B) → モスピラン(4A:ネオニコチノイド系) → アディオン(3A:ピレスロイド系)(作用機序が全く異なるため、抵抗性がつきにくい)特にアブラムシやハダニ、コナガといった世代交代が早い害虫は、同じ系統の薬剤を使い続けるとあっという間に生き残った強い個体だけで繁殖してしまいます。農薬のラベルやWebサイトで必ず「IRACコード」を確認し、数字が異なるものを選ぶ習慣をつけましょう。これが「薬が効かない」という悩みを解決する最短ルートです。農薬の作用機構分類表(JCPA農薬工業会) - IRACコードを確認してローテーション防除を実践EUで規制強化でも日本で重宝される基準と背景近年、「有機リン系は危険だから世界中で禁止されている」という情報をインターネットで見かけることがあります。確かにEU(欧州連合)では、予防原則の観点からクロルピリホスなどの有機リン系殺虫剤の多くが登録抹消や厳格な規制対象となっています。これには、子供の脳の発達への影響(発達神経毒性)に対する懸念が強く反映されています。では、なぜ日本では未だにホームセンターで普通に売られ、農業現場で重宝されているのでしょうか?「日本が農薬大国で、基準が甘いから」という単純な話ではありません。そこには、日本特有の気候と害虫事情、そしてリスク評価の考え方の違いがあります。高温多湿な気候と害虫の多様性日本はアジアモンスーン気候に属し、欧州に比べて圧倒的に害虫の種類と発生数が多い国です。特にカメムシ類やカイガラムシ類など、吸汁性害虫の被害は深刻です。これらを効果的に、かつ経済的に防除できる薬剤として、有機リン系は代えがたい地位にあります。もし有機リン系を全廃すれば、農作物の生産コストが跳ね上がり、安定供給が困難になるリスクがあります。リスク評価のアプローチの違いEUは「ハザードベース(危険性が少しでもあるなら疑わしきは排除)」という予防原則を強く採用する傾向があります。一方、日本やアメリカは「リスクベース(実際にどれくらいの量を摂取すると危険か、使用方法で暴露を減らせるか)」という科学的評価に基づいて基準を設定しています。日本の残留農薬基準は、一日摂取許容量(ADI)に基づき、毎日一生食べ続けても健康に影響がないレベルよりもさらに低く設定されており、適切に使用される限り安全性は担保されています。抵抗性管理の「駒」としての必要性前述の通り、特定の薬剤(例えばネオニコチノイド系だけ)に頼るとすぐに抵抗性がつきます。有機リン系という「強力な選択肢」を残しておくことは、IPM(総合的病害虫・雑草管理)の観点からも、薬剤の寿命を延ばすために必要なのです。もちろん、世界的な動向として、より毒性の低い薬剤へのシフトは進んでいます。しかし、「EUで禁止=日本でも即危険」と短絡的に結びつけるのではなく、日本の栽培環境において必要な資材を、適正な基準で管理して使うという視点が重要です。中毒症状と現場でできる混用注意・薬害対策有機リン系殺虫剤を使用する際、最も気を付けなければならないのが使用者自身の安全と、作物への薬害です。【中毒症状と対処】有機リン剤の中毒症状は特徴的です。もし散布中や散布後に以下のような異変を感じたら、直ちに作業を中止し、医師の診断を受けてください。縮瞳(しゅくどう):瞳孔が針の先のように小さくなる(鏡で見るとわかります)。過剰な分泌:よだれ、冷や汗、涙が止まらなくなる。その他:頭痛、めまい、吐き気、視野が暗くなる、筋肉のピクつき。病院へ行く際は、必ず「使用していた農薬のボトル(ラベル)」を持参してください。有機リン系中毒には「PAM(パム)」や「アトロピン」という特異的な解毒剤が存在します。医師が薬剤の種類を特定できれば、適切な処置で重症化を防ぐことができます。【混用における注意点】農作業の効率化のために、殺菌剤や液肥と混ぜて散布(混用)することはよくあります。しかし、有機リン系には「アルカリ性に弱い」という弱点があります。ボルドー液や石灰硫黄合剤などの「アルカリ性薬剤」と混ぜると、加水分解(化学反応)を起こし、殺虫成分が急速に分解されて効果がなくなってしまいます。近接散布(今日ボルドーを撒いて、明日スミチオンを撒くなど)でも影響が出ることがあるため、1週間程度の間隔を空けるのが無難です。【薬害の落とし穴】「登録があるから大丈夫」と過信は禁物です。有機リン系は特定の条件下で激しい薬害(葉焼けや変色)を起こします。高温時の散布:夏場の日中にスミチオンなどを散布すると、薬液が急激に乾燥・濃縮され、葉や果実が焼けることがあります。朝夕の涼しい時間帯に行いましょう。品種間差異:例えばリンゴの「ゴールデンデリシャス」系統や、アブラナ科の野菜(ハクサイ、キャベツなど)の幼苗期は、有機リン剤に対して敏感です。必ずラベルの「使用上の注意」の小さな文字まで読み込み、「○○には使用しない」という記載がないか確認してください。有機リン系殺虫剤は、安価で切れ味が鋭い「農家の刀」です。しかし、その刃は使い方を誤れば自分や作物を傷つける諸刃の剣でもあります。最新の知見と基本のルールを守り、賢く付き合っていくことが、持続可能な農業への第一歩です。ミッケル化学(Miccheal Chemical) トリプライザーVX 高性能床用ワックス 18kg 床 有機リン系化合物非含有 755041
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