夏の暑さが厳しくなる中、緑のカーテンは自然の力を利用したエコな暑さ対策として注目を集めています。しかし、ホームセンターで全ての材料を揃えようとすると、意外とコストがかかってしまうのが難点です。そこで提案したいのが、100均（ダイソーやセリアなど）のアイテムをフル活用した作り方です。
農業のプロや園芸愛好家の間でも、実は100円ショップの園芸コーナーは「宝の山」として知られています。耐久性のあるネットや、伸縮可能な支柱、そして強力な結束バンドなど、緑のカーテン作りに必要な資材のほとんどが100円（税抜）で手に入ります。特に、近年の100均園芸グッズはクオリティが向上しており、ワンシーズンだけでなく数年にわたって使用できるものも増えています。
この記事では、初心者でも絶対に失敗しない、コストパフォーマンス最強の緑のカーテンの作り方を深掘りしていきます。特にマンションやアパートといった賃貸物件のベランダでも実践できる、壁に穴を開けない固定テクニックは必見です。
緑のカーテンを成功させるための第一歩は、適切な資材選びから始まります。
ダイソーやセリアといった100均ショップは、店舗の規模にもよりますが、春先から夏にかけて特設コーナーが設けられるほど園芸用品が充実します。ここでは、必ず購入すべき「三種の神器」とも言える必須アイテムと、その選び方のコツを紹介します。
まず最も重要なのがネットです。100均では「園芸用ネット」や「つるものネット」という名称で販売されています。サイズは一般的に180cm×180cmや、ベランダの窓枠に合わせた90cm幅のものなど多岐にわたります。
緑のカーテンのネットは100均がおすすめである理由と、具体的なサイズ選びのポイントについて解説されています。
次に支柱です。100均の支柱は、太さや長さのバリエーションが豊富です。緑のカーテンには、高さが必要になるため、ジョイント式（継ぎ足しタイプ）や伸縮式の支柱を選ぶと持ち帰りが楽で、設置時の高さ調整も容易になります。風に煽られることを想定し、太さは最低でも11mm以上のものを選ぶと安定感が増します。
そして、構造を支える結束バンド。これは「耐候性」と書かれた黒いタイプを選んでください。白い結束バンドは紫外線に弱く、屋外で使用するとワンシーズン持たずにパキッと割れてしまうことがあります。黒色の耐候性タイプであれば、強い日差しの下でも強度を保つことができます。
| アイテム名 | 推奨スペック・選び方のコツ | 100均での入手性 |
|---|---|---|
| 園芸ネット | 網目は10cm角が標準。窓のサイズより一回り大きいものを選ぶと隙間なく覆えます。 | ◎（各サイズあり） |
| 園芸支柱 | 直径16mm以上が理想。210cm程度の長さが必要。伸縮式やジョイント式が便利。 | ◎（長物は200円商品の場合あり） |
| 結束バンド | 必ず「耐候性（屋外用）」を選ぶこと。 長さは20cm以上あると作業しやすい。 | ◎（DIYコーナーにあり） |
| プランター | 深型（30cm以上）推奨。土の量が入るほど根が張り、葉が茂ります。 | △（300〜500円商品が多い） |
これらの基本アイテムに加え、ネットの張り具合を調整するための予備の麻紐（あさひも）もカゴに入れておきましょう。100均の麻紐は植物への当たりが優しく、ゴミとして捨てる際も環境負荷が少ないため、プロの農家も愛用しています。
持ち家の庭とは異なり、賃貸のマンションやアパートのベランダでは、「壁に穴を開けられない」「金具を打ち込めない」という大きな制約があります。しかし、100均のフックやアイデアグッズを駆使すれば、建物を傷つけることなく強固な設置が可能です。
設置の基本構造は、「上部を吊るし、下部を重りで引く」ことです。
最も一般的なのは、窓のサッシ枠（アルミ部分）に取り付けるタイプの「すだれハンガー」や「オーニングフック」を使用する方法です。これらはダイソーやセリアの季節用品コーナーで入手可能で、ネジ式で挟み込むタイプや、強力マグネットタイプ（鉄製の扉や枠用）、熱で溶かして接着するタイプなどがあります。賃貸の場合は、跡が残らないネジ式（クランプ式）が最強です。
また、ベランダに物干し竿がある場合は、そこから結束バンドでネットを吊り下げるのが最も手軽で強度も高い方法です。
ネットをただ垂らすだけでは、風で煽られて植物が傷んでしまいます。ここで支柱の出番です。
ネットの下部は、プランター自体に結びつけるのが鉄則です。プランターに土を入れると相当な重量（15kg〜20kg）になります。この重さを利用して、ネットの下端をプランターの縁や、プランターに立てた支柱に結束バンドでガッチリと固定します。
マンションやベランダでも実践できる、支柱の立て方やネットの張り方が図解付きで詳しく解説されています。
⚠️ 注意点：
ベランダは共有部分であり、避難経路でもあります。隣家との隔て板（蹴破り戸）の前には物を置かない、避難ハッチの上には設置しないなど、消防法と管理規約を必ず守ってください。100均の「キャスター付きプランター台」を使って、緊急時にすぐに移動できるようにしておくのも、賢い設置のテクニックです。
ハードウェア（設備）が整ったら、次はソフトウェア（植物）の選定です。
緑のカーテンに適した植物は「つる性」であることが大前提ですが、園芸初心者にとって育てやすく、かつ100均グッズと相性が良いおすすめの品種を紹介します。
サントリーフラワーズによる、緑のカーテンに適した植物の選び方や、植え付けから完成までの期間逆算ガイドです。
植物を選ぶ際は、自分のライフスタイル（水やりに時間を割けるか、収穫を楽しみたいか）に合わせて選ぶのが失敗しないコツです。初心者は、まず苗から始めるのが無難ですが、コスト重視なら100均の種（2袋で100円など）から挑戦するのも良いでしょう。
ここでは、検索上位の一般的な記事ではあまり触れられていない、一歩踏み込んだ運用のコツを紹介します。特に日本の夏に避けられない「台風」と、旅行や帰省時の「水やり」問題です。これらも100均グッズで解決できます。
台風直撃時、緑のカーテンは巨大な帆となって強風を受け、最悪の場合、支柱ごと倒壊したり、ネットが飛んで窓ガラスを割ったりする危険があります。
対策：
夏場の旅行で2〜3日家を空ける際、プランターの水切れは致命的です。
対策：
ダイソーやセリアで販売されている「給水キャップ（自動水やり器）」を使用します。これはペットボトルの口に取り付け、土に逆さまに挿すだけで、ゆっくりと水が染み出すアイテムです。
さらに、防虫対策として、100均の「不織布（ふしょくふ）」や「排水溝ネット」を果実に被せておくと、虫害を防ぎながら綺麗な実を収穫できます。これらは本来の用途とは違いますが、園芸農家の知恵として活用されています。
最後に、苦労して緑のカーテンを作ることの効果について再確認しましょう。単なる自己満足ではなく、科学的にも証明された節電と涼しい住環境への貢献は計り知れません。
植物の葉は、直射日光を遮る「遮光効果」に加え、根から吸い上げた水分を葉から蒸散させる際に、周囲の熱を奪う「気化熱効果」を持っています。
環境省や自治体のデータによると、緑のカーテンを設置した窓辺は、設置していない場合に比べて表面温度が最大で10℃〜15℃も低くなるという結果が出ています。また、室温も2℃〜3℃低下すると言われており、これはエアコンの設定温度を2℃上げられることに相当します。
エアコンの設定温度を1℃上げると、電気代は約10%〜13%節約できるとされています。つまり、緑のカーテンがあるだけで、夏の電気代を20%以上削減できる可能性があるのです。
特にコンクリートジャングルのマンションでは、ベランダの床面（コンクリート）が蓄熱し、夜になっても熱を放射し続ける「ヒートアイランド現象」が起きますが、緑のカーテンがベランダに影を落とすことで、この蓄熱も防いでくれます。
100均グッズで作る緑のカーテンは、初期投資わずか数千円で、ひと夏でそのコスト以上の電気代削減効果を生み出す、最も賢い投資と言えるでしょう。今年の夏は、自分で作った緑のカーテンで、涼しく快適なエコライフを過ごしてみてはいかがでしょうか。
