コルテバ・アグリサイエンスの農薬と種子技術で拓く農業の未来

世界的な農業専業企業であるコルテバ・アグリサイエンス。その革新的な農薬や種子技術は、日本の農家の課題をどう解決するのでしょうか?最新の製品情報やサステナビリティへの取り組みについて知りたくはありませんか?

コルテバ・アグリサイエンスの概要と使命

コルテバ・アグリサイエンスの革新
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農業専業の強み

ダウ・デュポンの農業部門が統合し誕生。農業に特化した研究開発力で現場の課題を解決。

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画期的な新技術

リンズコアやイソクラストなど、新規有効成分を次々と開発し、抵抗性害虫や難防除雑草に対抗。

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持続可能な未来

2030年サステナビリティ目標を掲げ、バイオロジカル分野への参入や環境負荷低減を推進。

コルテバ・アグリサイエンス(Corteva Agriscience)は、世界中の農業従事者に向けたソリューションを提供する、完全独立型の農業専業企業です。この企業名は、「心」や「中心」を意味する"Cor"と、「自然」を意味する"Teva"を組み合わせた造語であり、農業の中心にあって人々の生活を豊かにするという強い意志が込められています。彼らの使命は単に農薬や種子を販売することに留まらず、「生産者の生活を豊かにし、消費者の生活を豊かにし、次世代へその豊かさをつなぐ」ことにあります。

 

日本の農業現場において、労働力不足や気候変動による病害虫の発生パターンの変化は深刻な問題となっています。コルテバは、こうした課題に対して、科学的根拠に基づいたアプローチで解決策を提示しています。特に、従来の薬剤に抵抗性を持ってしまった害虫や、防除が困難な雑草に対する新しい有効成分の開発において、業界をリードする存在です。

 

また、近年では化学農薬だけでなく、自然由来の素材を活用した「バイオロジカル(生物学的製剤)」分野への投資も加速させており、環境負荷を低減しながら収量を維持・向上させるための新しい選択肢を農家に提供し始めています。彼らの活動は、単なる資材メーカーの枠を超え、持続可能な食料システムの構築に不可欠なピースとなっています。

 

コルテバ・アグリサイエンス日本(企業情報)
(リンク先には、企業の成り立ち、パーパス、日本における活動内容の詳細が記載されており、企業の信頼性を確認するのに役立ちます。)

コルテバ・アグリサイエンスの歴史とダウ・デュポンからの独立

 

コルテバ・アグリサイエンスのルーツは、化学業界の巨人であるダウ・ケミカルとデュポンの農業部門にあります。これら二つの歴史ある企業の農業事業が統合され、その後2019年に独立した企業としてニューヨーク証券取引所に上場しました。この経緯は単なる企業の合併・分割以上の意味を持っています。なぜなら、巨大な化学コングロマリットの一部門としてではなく、100%農業に特化した「ピュアプレイ(専業)」企業として生まれ変わったことで、投資リソースのすべてを農業分野のイノベーションに集中できるようになったからです。

 

  • ダウ・アグロサイエンスの遺産:

    ダウ由来の技術は、除草剤や殺虫剤の分野で非常に強力なポートフォリオを持っていました。特に水稲分野における除草剤技術や、シロアリ防除などの特化技術は、現在もコルテバの製品群の重要な柱となっています。

     

  • デュポンの遺産:

    デュポン由来の技術は、植物防疫全般に加え、特に「パイオニア」ブランドを通じた種子事業において圧倒的な強みを持っていました。精密な育種技術や遺伝子解析技術は、現在のコルテバの種子開発力の源泉となっています。

     

  • 統合によるシナジー:

    これらが一つになることで、種子(遺伝学)と農薬(化学)を包括的に組み合わせた「統合的害虫管理(IPM)」や「作付計画の最適化」が可能になりました。例えば、特定の除草剤に耐性を持つ種子をセットで開発するなど、トータルソリューションの提供が加速しています。

     

日本法人であるコルテバ・アグリサイエンス日本株式会社も、このグローバルな知見を活かしつつ、日本の特殊な気候や栽培体系(特に水田稲作)に合わせた製品開発を行っています。日本の農業は小規模分散型であり、高温多湿な環境から病害虫の発生リスクが高いという特徴がありますが、コルテバは日本国内に試験場を持ち、日本の農家が使いやすい製剤(例えば、軽量で散布しやすい自己拡散型製剤など)へのローカライズを徹底しています。

 

マイナビ農業:コルテバ、ダウ・デュポンから経営分離 農業事業に特化
(リンク先には、独立時の経緯や、農業専業企業としての新たな戦略、当時の社長へのインタビューなどが詳しく掲載されています。)

コルテバ・アグリサイエンスが提供する革新的な農薬と防除技術

コルテバ・アグリサイエンスの最大の強みは、なんといってもその圧倒的な「創薬力」にあります。既存の薬剤の配合を変えるだけでなく、全く新しい作用機序(MOA)を持つ新規有効成分(AI)を継続的に市場に投入しています。これは、薬剤抵抗性の問題に悩む農家にとって救世主とも言える存在です。

 

主要な新規有効成分と代表的製品:

  1. リンズコア(Rinskor™ active) - 除草剤:
    • 特徴: 新規オーキシン様除草剤であり、極めて低薬量で効果を発揮します。
    • 対象: ノビエや広葉雑草、カヤツリグサ科雑草など幅広い雑草に有効です。特に、従来の除草剤(SU剤など)に抵抗性を持った雑草に対しても高い効果を示します。
    • 製品例: 「ウィードコア」シリーズや「ロイヤント」乳剤など。これらは水稲農家にとって、除草作業の省力化と確実な防除を両立させる切り札となっています。また、環境中での分解が速く、土壌への残留リスクが低いことも、「サステナビリティ」を重視する現代農業に適しています。
  2. イソクラスト(Isoclast™ active) - 殺虫剤:
    • 特徴: スルホキシイミン系の新規系統殺虫剤です。
    • 対象: アブラムシ類、コナジラミ類、カイガラムシ類などの吸汁性害虫に特効的です。これらの害虫は繁殖サイクルが速く薬剤抵抗性を持ちやすいですが、イソクラストは既存剤に抵抗性を持つ害虫にも安定した効果を発揮します。
    • 製品例: 「トランスフォーム」フロアブルなど。浸透移行性に優れ、葉の裏に隠れた害虫も防除できるため、野菜や果樹の品質維持に大きく貢献しています。
  3. スピネトラム(Spinetoram) - 殺虫剤:
    • 特徴: 土壌放線菌由来の殺虫成分を化学修飾して効果を高めた、マクロライド系の殺虫剤です。
    • 対象: アザミウマ類、ハモグリバエ類、チョウ目害虫など。
    • 製品例: 「エクシレル」SEや「ディアナ」SCなど。速効性と残効性を兼ね備えており、特に難防除害虫であるアザミウマに対して極めて高い効果を持つため、施設園芸農家からの信頼が厚い製品です。
  4. ゾーベック(Zorvec™ active) - 殺菌剤:
    • 特徴: べと病や疫病に対して、既存剤とは異なる作用点で作用する新規殺菌剤です。
    • メリット: 予防効果が非常に高く、また耐雨性にも優れているため、梅雨時期などの防除が難しいタイミングでも作物を病気から守ります。

これらの製品群に共通しているのは、「低薬量で効く」「環境負荷が低い」「抵抗性対策になる」という点です。コルテバは、単に虫や草を殺すだけでなく、散布回数の低減による「農家の労働時間短縮」や「燃料コストの削減」までを視野に入れた製品設計を行っています。

 

コルテバ・アグリサイエンス 製品一覧
(リンク先には、各製品の詳細な適用作物、希釈倍率、使用上の注意点などが網羅されており、現場での使用判断に直結する情報が得られます。)

コルテバ・アグリサイエンスの種子ブランドパイオニアとデジタル農業

農薬と並ぶコルテバのもう一つの柱が、種子事業です。「パイオニア(Pioneer®)」ブランドは、農業従事者であれば誰もが一度は耳にしたことがあるほどの知名度と歴史を誇ります。特にトウモロコシ(デントコーン)種子においては、世界的なシェアを持っています。

 

  • パイオニア種子の技術力:

    パイオニアの強みは、膨大な遺伝資源と、それを解析・選抜するデータサイエンスの融合にあります。現地の気候、土壌条件、病害虫の発生傾向に合わせて、最適な品種を開発・推奨する能力が極めて高いです。

     

    日本においては、主に畜産農家向けの飼料用トウモロコシ(サイレージ用)や、ソルガム、牧草種子などが展開されています。日本の高温多湿な夏でも倒伏しにくく、栄養価の高い(TDNが高い)品種や、病気に強い品種がラインナップされており、国産飼料の生産基盤を支えています。

     

  • 種子処理技術(LumiGEN™):

    コルテバは、種子そのものに殺虫剤や殺菌剤、あるいは成長を促進するバイオロジカル製剤をあらかじめコーティングする「種子処理技術」にも力を入れています。

     

    「ルミジェン(LumiGEN™)」というブランドで展開されるこの技術は、播種直後の最も脆弱な時期に、苗を病害虫から守ることができます。農家にとっては、発芽後の初期防除の手間を省けるだけでなく、散布農薬の総量を減らすことができるため、環境負荷低減にもつながります。例えば、水稲種子処理剤「ルミスパンス」などは、移植後の本田での初期害虫防除を種子処理だけで完了させることを可能にしています。

     

  • デジタル農業への取り組み:

    海外では「Granular」などの農場管理ソフトウェアを展開し、衛星データや土壌データを活用した精密農業を推進しています。日本においては、まだ海外ほど大規模な展開ではありませんが、ドローンを活用したセンシング技術や、病害虫予測モデルとの連携など、種子と農薬のパフォーマンスを最大化するためのデジタルツールの導入が進められています。

     

    例えば、トウモロコシの播種密度を圃場の肥沃度に合わせて可変させる技術などは、コルテバが持つ種子のポテンシャルを最大限に引き出すためのデジタルソリューションの一例です。

     

種子(遺伝学)という「植物の設計図」と、それを守る農薬(化学)、そして最適な育成環境を導き出すデジタル技術。これら三位一体の提案ができることが、コルテバの他社にはない競争優位性です。

 

パイオニア種子製品情報
(リンク先には、品種ごとの特性、適応地域、耐病性などの詳細なスペックデータが掲載されています。)

コルテバ・アグリサイエンスが目指すサステナビリティと2030年目標

現代の農業企業において、サステナビリティ(持続可能性)への取り組みは避けて通れないテーマです。しかし、コルテバの取り組みは単なるスローガンにとどまらず、数値化された具体的な目標として設定されています。彼らは「2030年に向けたサステナビリティ目標」を掲げており、これは農業生産者、土地、地域社会、そして自社の事業活動という4つの柱で構成されています。

 

  1. 生産者への貢献:
    • 2030年までに、世界中の2500万人の生産者に対し、土壌の健全性向上や水管理の最適化に関するトレーニングを提供することを目指しています。
    • また、5億人の小規模農家の生産性向上と所得向上を支援するという目標も掲げています。これは、大規模農家だけでなく、開発途上国や日本のような小規模経営が主体の地域の農家も視野に入れていることを示しています。
  2. 土壌の健全性(Soil Health):
    • 世界の3000万ヘクタールの農地において、土壌の健全性を改善することを目指しています。これには、不耕起栽培に適した除草剤の提供や、土壌微生物を活性化させるバイオスティミュラント製品の普及が含まれます。健全な土壌は、作物の収量を上げるだけでなく、炭素隔離(カーボン・セクエストレーション)の機能を高め、気候変動対策にも寄与します。
  3. 温室効果ガスの削減:
    • 農場での活動における温室効果ガス排出量を削減することにコミットしています。具体的には、窒素肥料の利用効率を高める製品(硝化抑制剤など)を通じて、温室効果の高い一酸化二窒素の発生を抑える技術開発を行っています。
    • 「ユートリシャN」のような、空気中の窒素を植物に取り込ませる生物学的製品は、化学肥料の使用量を減らし、製造・輸送・散布に伴うCO2排出を削減する切り札として期待されています。
  4. 製品の安全性と環境適合性:
    • 新製品開発において、すべての製品がサステナビリティ基準を満たすことを義務付けています。これは、単に「効く」だけでなく、「環境に残りにくい」「標的以外の生物(ハチや天敵など)への影響が少ない」ことが、開発の絶対条件になっていることを意味します。

日本の農家にとっても、環境保全型農業へのシフトは急務です。「みどりの食料システム戦略」などで化学農薬・化学肥料の低減が求められる中、コルテバの提供するソリューションは、生産性を落とさずに環境目標を達成するための現実的な手段となり得ます。

 

コルテバ・アグリサイエンス サステナビリティへの取り組み
(リンク先には、2030年目標の進捗状況や、具体的な活動レポートが公開されており、企業の環境に対する本気度を確認できます。)

コルテバ・アグリサイエンスのバイオロジカル市場への独自戦略と展望

ここが検索上位の一般的なまとめ記事にはあまり詳しく書かれていない、しかし非常に重要なポイントです。コルテバは近年、化学農薬と種子に続く第三の柱として「バイオロジカル(生物学的製剤)」分野へ猛烈な勢いで参入しています。これは、従来の「化学メーカー」という枠組みを自ら壊し、再構築しようとする野心的な戦略です。

 

なぜ今、バイオロジカルなのか?
世界的な環境規制の強化により、使用できる化学農薬の種類は年々減少しています。一方で、食料需要は増え続けています。このギャップを埋めるのが、微生物や天然抽出物を利用したバイオロジカル製品です。

 

戦略的買収による巨頭化:
コルテバは自社開発だけでなく、大型買収によって一気にこの分野のリーダーになろうとしています。

 

  • Stoller(ストーラ)の買収: 植物生理学とバイオスティミュラント(生物刺激資材)の世界的リーダーであるストーラ社を買収しました。これにより、作物のストレス耐性を高めたり、ホルモンバランスを整えて収量を上げたりするノウハウを獲得しました。
  • Symborg(シンボーグ)の買収: 微生物技術に強みを持つシンボーグ社を買収しました。ここから生まれたのが、先述した「ユートリシャN」などの画期的な製品です。

独自視点:日本市場における「ハイブリッド防除」の可能性
バイオロジカル製品は、「効果が不安定」「使い方が難しい」というイメージがまだ強いのが現状です。しかし、コルテバの強みは、「確実な効果を持つ化学農薬」と「環境に優しいバイオロジカル」の両方を持っている点にあります。

 

完全に化学農薬をゼロにするのではなく、「ベースの防除は化学農薬で確実に行い、植物の活力向上や仕上げの防除にはバイオロジカルを使う」といった、現実的かつ効果的なハイブリッドなプログラムを提案できるのがコルテバの真骨頂です。

 

例えば、これからの日本の農業では、以下のようなシナリオが想定されます。

 

  • 初期: 化学農薬の種子処理(ルミジェン)で苗を確実に守る。
  • 中期: バイオスティミュラントで作物の免疫力を高め、天候不順によるストレスを軽減する。
  • 後期: 残留基準の厳しい収穫前には、生物農薬を使用して安全性を確保する。

このように、コルテバは単に新しいボトルを売るのではなく、バイオロジカルを組み込んだ「新しい栽培体系」そのものを売ろうとしています。これは、減農薬を求められつつも、品質には妥協できない日本の高級果樹や施設野菜の生産者にとって、非常に相性の良い戦略と言えるでしょう。

 

JAcom:コルテバ・アグリサイエンス日本 インタビュー記事
(リンク先では、バイオロジカル戦略を含む今後の日本での事業展開について、経営層が具体的に語っています。)

 

 




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